アイマス・カラーパイ談義指南 コモン編
序文
アイマス・カラーパイ談義指南のコモン編へようこそ。本稿から始まるシリーズでは、トレーディングカードゲームであるMAGIC:the Gathering(以下、MtG)における重要な概念・カラーパイをアイマスアイドルに当てはめるにあたっての考え方や方法について解説していく。
ただしこのカラーパイ、一言二言で説明しきるにはあまりにも幅広く奥も深い。その分、カラーパイを通じてこそ見えてくるアイマスアイドル像も確実にあるのだが、そこに至れるまで必要となるカラーパイの知識も、簡単に身に着けられるとは言えないのが実情である。
そこで本シリーズでは、カラーパイの具体的な領域から抽象的な領域に、段階を追って解説していく形を取る。本稿はコモン編と称し、最も具体性の高い側面とそれをアイマスアイドルに当てはめる方法を紹介しよう。その後、アンコモン編、レア編、神話レア編の順により抽象度の高い話に切り込んでいく。順番通りに読んでいけば、きっとカラーパイの真髄とそれが見せてくれるアイマスアイドルの新たな顔が把握できるはずだ。
カラーパイ説明
そもそも、カラーパイとは何か? これについて説明するには、まずMtGにおける色の概念から始めなければならない。物凄く平たく言うとゲームにおける属性だ。
MtGでルール上の意味がある色は白、青、黒、赤、緑の5つ。そしてMtGのカードは、一部の例外を除き、これらいずれかの色を持つ。勿論、何の意味もなく色を割り振っているわけではない。色によって得意や不得意、特徴的なキーワードや頻用されるイメージなどが設定されている。数多あるカードはいずれも、その特徴に合った色を与えられたり、また逆に「この色に相応しい一枚を」という風にカードが作られたりしている。
また、色同士にも一定の関係性がある。色に課せられた特徴にもそれぞれ相性の良し悪しがあり、それがゲームにおける有利不利に結びつくことも多々ある。こういった、色に関するあらゆる性質をすべてひっくるめてカラーパイと呼ぶ。
……と、なるべく簡素に書いてはみたが、壮大すぎてまだよく分からないという人も多いだろうから、具体的な部分から紹介していこう。
色の役割
MtGのカード内で描かれる世界は、ものすごく平たく言えば剣と魔法のファンタジーである。そこには騎士がいたりドラゴンがいたり、魔法使いがいたりゴブリンがいたり、種々の魔法――炎、雷、神聖、闇などなど――があったりと、パブリックイメージのファンタジー世界と、そう大きな隔たりはない。つまり、ファイナルファンタジーやドラゴンクエスト、テイルズオブシリーズなどの数多あるファンタジー作品で馴染みあるファンタジーなキーワードの大部分が、MtGにも登場するのだ。
そしてそんなファンタジーなキーワードのほとんどが、MtGでは特定の色と深く関連したものとして扱われている。ゴブリンはほぼ全てが赤だし、エルフは緑の代表的な種族で、騎士といえばまず白が挙げられる。冷気の魔法は青のカードとして表現されるし、死者蘇生などの後ろ暗い魔法は黒の得意分野だ。
こういった色ごとの特徴を、色の役割と呼ぶ。
当てはめ方(コモン編ver)
さて、ここでアイマスアイドルに話を移そう。
あなたの担当アイドルを、ファンタジー世界に放り込んだら? 想像してみてほしい。勇敢な子なら戦士になるだろうし、理知的な子なら術者を志すだろう。人間でない種族になるのもいい。自然を愛するならエルフが適任だ。ゴブリンがお似合いなやんちゃっ子がいてもいい。使う魔法に焦点を当てるのもひとつの手だ。相手の思考を読む、ゾンビを生み出し操る、自分の体を魔法で強靱にする……アイドルの個性に合ったファンタジーなキーワードが、何かしらあるはずだ。まずはそれを見つけ出してほしい。
察しのいい人はそろそろ気づくかもしれないが、後はその「アイドルらしいファンタジーなキーワード」が、「MtGではどの色に割り振られているのか」を参照する。こうすることで、あなたのアイドルに似合う色を割り出す、これがコモン編でおすすめする色の当てはめ方だ。
ただし、アイドルに合うファンタジーなキーワードを見つける際にひとつ留意するべきポイントがひとつある。実際にゲームで実装されているファンタジーテーマのカードや楽曲のことは、いったん脇に置いてほしい。
アイドルが騎士や魔法使いを演じるテーマのガシャやイベントは、もはや数えるのが困難なほど多く開催されてきた。しかしそこでアイドルに与えられた役柄のすべてが、そのアイドル自身の個性や嗜好を反映したものだとは限らないのも実情である。無論、それは必ずしも悪いことではない。意外な、慮外な役を演じるからこそ見えてくる魅力もあるだろう。
しかし、このアイマス・カラーパイ談義では、その個性や嗜好と合致しないのは避けるべき事態である。なぜなら、ここでファンタジーなキーワードを当てはめるのはそれを通じてアイドルの個性や嗜好を見出しやすくするためだからだ。そこでは、個性や嗜好と関係ないファンタジー要素はだいたいにおいてノイズになってしまう。また同様の理由で「自分はこのアイドルにこういうファンタジーなキーワードを当てはめたい」という願望も控えていただきたい。
ついでに、この際だからアイマスカラーパイ談義で避けるべきことをもう一つ挙げておこう。アイドルのパーソナルカラーやイメージカラーなどは一旦忘れてほしい。
冒頭で述べた通り、MtGにおける色には、それぞれMtG特有の意味やイメージが込められている。アイマスにおけるアイドルのカラーの類いにも、それぞれに何かしらの意図や意味がある。それら二つは、必ずしも一致するとは限らない。具体的に言うと、秋月律子は緑をパーソナルカラーとしているが、色の役割に照らし合わせると青の方がより似合うのだ。
とはいえ、論考の末にパーソナルカラーとMtGの色が合致する例も少なくはない。「アイドルのパーソナルカラーとMtGの色は、一致することもあればしないこともある」「最初から合わせようとするのは避けるべきだが、結果的に合ったとしても修正・再考の必要はない」、この程度に留めておこう。
色の役割リスト
さて、では色の役割はどういうものがあるのか、リストアップしていこう。
魔術(効果)
設定上、MtGは魔術師同士の魔術合戦だ。そして魔法はカードで表現されている。方々から集めた魔法をぶつけ合って勝敗をつける。攻撃や回復などはもちろん、怪物や兵士や英雄などを呼び出し使役するのも召喚魔法ということになっている。
そしてその魔法の特徴が、ほぼそのまま色の役割を反映しているのだ
白
【回復・防御】
白は自分や召喚した者たちを癒やし、守るのが得意である。
【束縛・制限】
相手の自由を縛るのも白の役割の一部だ。
【全体強化】
守備だけでなく攻撃にも特徴がある。中でも、集団戦を有利に運ぶのに長けている。
【大量破壊】
一発で盤面を更地にするような物騒な魔法を使うことだってある。
青
【攪乱・妨害】
相手の魔法を打ち消したり、狙いを逸らしたりするのは青の十八番だ。
【知識拡充】
思考力を高めたり洞察を深めたりする、青はそのために魔法を使う。
【精神支配】
所謂マインドコントロールなどの高度かつ緻密な魔法にも長じている。
【時間操作】
時として法則そのものを弄ることすらある。時間を止めたり、早めたり。
黒
【弱体化、即死】
邪魔者を弱らせる、一息で殺す。そんな危険な魔法を、黒は好む。
【死者蘇生】
殺すだけでは飽き足らず、ゾンビとして蘇生させるのも厭わない。
【生命力吸収】
吸血鬼が血を啜るように、相手のライフポイントを奪うこともある。
【精神攻撃】
傷つけるのは肉体だけではない。恐怖で心を捻り潰すのも得意だ。
赤
【直接攻撃、破壊】
火の玉をぶつけるなどの乱暴な魔法といえば、赤が第一人者だ。
【自爆攻撃】
赤ならば我が身を顧みない攻撃を命じたりすることもできる。
【加速、瞬発】
素早さの追求にかけては赤に勝る色はない。
【予測不可能】
ギャンブル要素の高い魔法もある。悪い結果が出てもご愛敬だ。
緑
【リソース確保】
魔法を使うのに必要なリソースを、緑は潤沢に用意できる。
【強打・蹂躙】
緑が召喚できる怪物はいずれも力強く、邪魔者を容易く踏み潰す。
【成長・進化】
ただでさえ強大な召喚物を、もっともっと強化することさえできる。
【文明破壊】
相手が用いる道具や魔法などの小細工を強引に引き剥がすのも緑の得意技である。
職業
MtGでは怪物や英雄、兵士や動物などを召喚し使役することができ、これら全てをひっくるめてクリーチャーと呼んでいる。そのうち、人間および人型種族がどのような役職についているのか――いわゆる「ジョブ」「職業」に類するもの――について、各色ごとに見ていこう。
白
【兵士】
一人ひとりは小粒だが、そのぶん数を揃えやすいのが兵士である。
【騎士】
兵士よりいくらか強く、名誉や栄光を重んじる騎士も白に多い。
【聖職者】
要は僧侶や神官だ。多くの作品で回復魔法の使い手として描かれる。
【指導者】
白は軍勢の指揮官や貴族・王族など、人々を率いる者が目立つ。
青
【魔術師】
魔法を使うだけなら他の色でもできるが、青は特にその素養に優れている。
【機械技師】
カラクリ仕掛けを作ったり使ったりするとなれば、青の出番だ。
【盗賊】
相手の目を避ける、裏をかく。そんな狡賢い者も青にはいる。
【船乗り】
青は水と極めて関係が深い色なので、船乗りの類いが多く属する。
黒
【屍術師】
生命への冒涜を平然と行う、そんな闇の魔術師を黒は擁する。
【暗殺者】
盗賊と同様に影に生き、しかしより剣呑で血生臭い者も黒の職業だ。
【傭兵】
黒には忠義や信仰よりも、自分の利のためだけに戦う者も多々いる。
【ならず者】
職業と呼ぶのも憚られるような無法者がいるのも黒の特徴である。
赤
【狂戦士】
戦いを生業とする者のうち、殊更に凶暴な者たちが赤に属する。
【山賊】
赤には徒党を組んで狼藉を働くような乱暴者もしばしば見られる。
【シャーマン】
赤の使う魔術は、原始的宗教に基づいた呪術により近い。
【芸人】
曲芸士や芸術家などの芸事の専門家は主に赤の領分である。
緑
【戦士】
数ある戦士のうち、力自慢はだいたいにおいて緑に揃っている。
【ドルイド】
大自然と霊的に繋がり、力を借りる。これもまた緑の魔術である。
【獣使い】
動物を使役する者は他色にもあるが、緑の扱う獣は特に強大だ。
【狩人】
生活や自然の営みの一環として獣を狩る、そういう者も緑にいる。
他にも色の役割とされるものは大量にあり、その全てを列挙しているとそれだけで一苦労だ。以下、細かな解説は省くがいくつかテーマごとに色の役割を掲載しておこう。全てを見渡せば、それぞれの色にどのようなキーワードが割り当てられる傾向にあるのか、大まかにでも見えてくるのではあるまいか。
魔法(属性)
白:光、神聖、鋼
青:水・氷、幻影、風
黒:闇、毒、黒魔術
赤:火、雷、岩
緑:木、大地、霊感
クリーチャー(架空)
白:天使、ペガサス、グリフィン、ユニコーン
青:スフィンクス、クラーケン、フェアリー
黒:デーモン、ゾンビ、スケルトン、吸血鬼
赤:ドラゴン、ミノタウルス、ゴブリン
緑:ハイドラ、ビースト、エルフ、ケンタウルス
クリーチャー(実在)
白:鳥、猫、牛
青:魚介類
黒:コウモリ、ネズミ、サソリ
赤:犬、ジャッカル
緑:昆虫、蜘蛛、象
土地・地形
白:平地、平原
青:島、水辺
黒:沼、洞窟
赤:山岳、火山
緑:森林、樹海
挙げていくとキリがないし、本稿投稿後に新しく思いついて追加することもあるかもしれないので、色の役割リストをスプレッドシートにして公開しておこう。
カラーパイ談義用スプレッドシート
アイマスアイドルへの当てはめ
さて、ファンタジー系のキーワードをここまで集めれば、あなたの担当アイドルに似合いそうなものの一つか二つは見つかるだろう。そのものズバリはなくても、アイドルに合うキーワードがどの色に属するのか、なんとなくでも見えてくるのではあるまいか。
西洋剣術に造詣のある子なら騎士がとても似合うし、医療の心得が多少なりともあるなら回復魔法の使い手が映えるだろう。
錬金術も魔術の一種と考えれば化学教師が魔術師に扮するのもアリだろう。趣味が諜報活動という、盗人役にうってつけな子もいる。
ゾンビ好きを公言してやまない子にゾンビ使いやゾンビそのものが似合わない道理はない。孤高な気質のある子なら、お尋ね者やはぐれ者が板につきそうだ。
足を速くする魔法がある、と聞いたら飛びつかずにはいられない健脚アイドルだっている。ゴブリンになっても違和感のない悪戯っ子も。
普段から動物たちと接している子は獣使いが相応しい。大自然との触れ合いを好む者は、エルフの役を演じるのも一興だろうか。
読者諸氏の中には、先に挙げたスプレッドシート内のキーワード以外にも「このジョブはどの色に該当する?」「こんな魔法を使うのはどの色か?」などいろいろ疑問も出てくるかもしれない。その中にはもしかしたら私が答えを示せるかもしれない。私のマシュマロを連絡先として置いておく。寄せられた質問のすべてに答えることは叶わないかもしれないが、解答を用意できるものは私のツイッターアカウントで公開しよう。その際、 #アイマスカラーパイ談義 のハッシュタグを使って頂けると個人的に楽しい。もとい、ありがたい。
問い合わせ:https://marshmallow-qa.com/silver_shalog
返答: https://twitter.com/Silver_Shalog
ちなみにTwitterアカウントの方は基本的に相互フォロー外からの通知を切っているので、こちらに直接リプライを送られても気づけない可能性が高い。どうかご了承されたし。
アンコモン編へ
今回のまとめ:
①アイマスカラーパイ談義はMtGの色をアイマスアイドルに当てはめる遊びである!
②MtGの色にはそれぞれファンタジーなキーワードが割り振られている!
③そのキーワードが似合うアイドル=キーワードが割り振られた色、という当てはめ方がある!
④キーワードはたくさんある! そりゃもうたくさんある! アイドルに合うキーワードは見つかる、たぶん!
以上でアイマス・カラーパイ指南のコモン編を終了とする。現時点ではまだお遊びに近いが、それでも一番肝心な部分の練習にはなっている。そう、「アイドルの個性や嗜好に注目する」という部分に。
次回以降、カラーパイについていくらか抽象的で理解が少し難しい話も少しずつ出していこう。今回のコモン編のやり方では色を上手く当てはめられないアイドルも、次回以降に紹介する方法ならば何かしら見つかる。また、今回はいずれかの色ひとつだけを当てはめることに的を絞ったが(そのためにある程度カラーパイの心得のある人にはもどかしく感じられる箇所もあったかもしれない)、次回以降、おそらくレア編あたりから同一キャラクターが複数の色を持つ場合はどうなるのかについても順次触れていく。少しずつ複雑な話になっていくが、その分、理解できた時はより多角的な論考ができるようになるはずだ……と、いったところで一旦筆を置くこととする。
また次回、アンコモン編でお会いしよう。その日まで、あなたの見る世界が色鮮やかでありますように。