Turn Over[3話]

「さあ、善と悪!全人類が二分化された世界の始まりだ。どちらが、本物の正義か…」


全人類が二分化され、世界は大きく揺れ始める
一人一人が信じてきた物が崩れ始める
人間関係、仕事、家族、お金、
守りたい人を守る為には、お金も時には必要だし、時には愛と呼ばれる物が必要だったりする。
お金が無ければ、もちろん働き稼ぐのが筋だ
しかし、どうだ?1日働き稼げる金額なんて、たかだか知れてるはず…。
平和とは理想が見せる幻想に過ぎないのさ

ここにも、全てを捨て誰かを救おうとする人が



「お願いします!なんとか、2千万かしてください。
娘の命を助けたいんです。
手術を受けさせてあげたいんです」

でこが擦り切りれるくらいに、地面に頭を擦り付ける男
娘の為に、プライドも捨てただ一心に娘の為だけに…

「お願いします。お、お金を…」

「ムリだ。お前もわかってるだろ?この二分化された世界。オレは既に、融合し、悪の魂で生きてる…」

「う…別の人の所へ行くか」

「お願いします!!」

「うちは10日で5割。初回は30万までだ」


「はぁ…ムリか。どうしたら良いんだ…どうしたら、どうしたら、娘を救えるんだ。僕のこの命なんて、どうなったって良い!!だれか、誰か、助けてくれる人…」


(本当にお前の命をかけれるか?)

「だ、誰だ?」

(俺なら、娘を救ってやれる)

「!?本当ですか??是非お願いします!!
なんでもしますから!
貴方が誰でも良いからお願いします…」


「良いだろ…その代わり、お前の命俺がもらう。
俺はもう1人お前。お前は善人の部分だ。
俺は悪人…。さっきも出会ったろ?
別々に、生きていく事も、もちろん出来る。
だけど大抵の人は融合する」

「わかった。俺の命はお前にやるさ!娘は本当に助けてくれるのか?あくまでも、もう1人のオレ。
そんな力がある様に悔しいが、思えない…」

「やはり、お前は忘れている様だな。
人類は二分化された。そうすると、頭の中の記憶も全て二分化されるらしいな。どっちでも記憶は互いに都合の良いように残るらしいがな。 
まあ、そんな事は良いか。お前の両親が交通事故で1年前に亡くなり、残した遺産5千万。
お前は家族には1千万と嘘を付き、隠し持ってた。
娘が産まれてから、嫁とうまく行かなくなり、いつか離婚するかもと思い隠した金だ。悪の魂だが、その善人の娘が死ねば、悪人の娘も死んでしまうからな。
ほらよ。」


目の前に置かれる2千万の現生。

「ありがとう…ございます。
最後に娘にお会いしてもよろしいでしょうか!?」

「ああ、好きにしろ。
しかし、それで助かったとしても、娘も悪人と融合しても、俺は知らないからな。あくまでも、本人達のやりとりで、いくら家族でもそこは左右出来ない…
1時間後に、家の近くの公園に待ち合わせだ」

「わ、わかりました」

残された時間は1時間。全速力で娘の待つ病院へ、
向かう。


「ガラガラ…バンっ!!!」
力強く扉を開ける

「先生。お金です…これで娘をなんとか助けてやってください!よろしくお願い致します…。
あまり、時間が無いので細かい話は妻に…」

「かしこまりました。…あなたはヒーローですね」

「先生も、正義で居てくださいね。娘の顔だけ見て、僕は行きます」

娘のが寝ている、病室に行き顔を眺める。
手をギュッと握り締める
涙、一滴流す事なく顔を上げる。
「産まれてきてくれて、ありがとうね」

「ガラガラ」
静かに娘の病室の扉を閉める。

〜1時間経過〜

「お待たせしました。娘にも会って、もう思い残す事はありません。約束通り、貴方と融合します」

「そりゃ良かったな。では、始める」

2人の体は再び1つの身体に戻る。悪の魂として…


誰かを救たくても、救えない
愛さえあっても、金さえあっても…






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