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NHKよるドラ「ここは今から倫理です」第5話(その①)

NHKよるドラは、なんで毎回、こんなにも秀作ばかりなのでしょう。

今期の、山田裕貴主演「ここは今から倫理です」も、毎回良い意味で心をザワつかせます。

第5話は、宗教にのめりこむ母親を持ち、リストカットを行う女子高生【ゆり】 と、心を病んだ母親に暴力を振るわれている保健室登校の男子高生【滝川】を主軸に話が展開する。

二人の生徒はそれぞれの苦しみや課題を抱えているのだけど、主人公の倫理教師【高柳】(山田裕貴)も彼らとの関わりの中で、自らの課題に直面する。

滝川は言動が女性的で、【高柳】と話しながら腕を組んできたり、何かとひっつこうとする。【高柳】は、なぜ滝川君に触れられるのを避けるのかと問う養護教諭に対し、

「滝川君が女子生徒だったらあんなにくっつかれたら、私がセクハラにみられてもおかしくないですよね。男同志だからと言ってセクハラでないという確証はないですよね。・・・男子なら救える、女子では救えない。対象が変わったら通用しなくなる救いなんて、、正しくない。目の前の愛に飛びついて、救いたい側だけが満足する。救いたい側のエゴなのでは」と話す。

それに対し、養護教諭は、

「体に触れることが心を癒すこともある。高柳先生は、目の前の生徒の“救われたい”、“何かにすがりたい”という気持ちよりも、自分の中にある正しさを優先している。それこそ、エゴなんじゃないの」

この二人の言い合いを聞いていた【滝川】はパニックになり学校を飛び出す。追う【高柳】に対し、【滝川】は「来るな!俺みたいなクソ人間、もうほっといてくれ!」と叫ぶ。 

【高柳】は「クソじゃない!なんてこというんですか。私は、あなたの心を救いたい」と説く。そこで【滝川】は、【高柳】に両手を差し伸べて、「ぎゅってして」と請うが、【高柳】は躊躇するだけで応えられず。【滝川】は「ゴメンね、先生」と走り去ってしまう。

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回想の中で【高柳】は恩師に「この世において何が善なのか・・・、僕にはわかりません」と言う。

恩師は「我々教師は、生徒全員を公平に扱わねばならない。抱く人間と抱かない人間という不公平があると、これはとてもにまずい。こんな様々な制約の中、お前は人を救えるか」と尋ねる。

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ここで思ったのが、まず「公平である」ということ。

今回は「抱く(触れる)」「抱かない(触れない)」ということで公平性が語られていたが、私はこの「公平論」には、やや反対である。

作中で養護教諭が言うように、それが救いになる生徒もいる。

全員に触れるか触れないかの公平性ではなく、この場合、目の前の人間の救いに必要な手立てをするか、しないかの公平性が重要なのではないのだろうか。

・・・とは言え、確かに相手が異性の生徒ならば、【高柳】の懸念することがないとは言えないのだが…。でも、本当に救いを求めている相手の求めていることをして、訴えられることはあるのかしら。

相手が何を求めているか、を確かに掴むためには、無私で相手のことを考えなければできないのかもしれない。そうでなければ、やはり【高柳】が言うように、「救いたい側のエゴ」になるんだろう。その見極めは、難しいところです。


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