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探検と納豆

『謎のアジア納豆ーそして帰ってきた〈日本納豆〉ー』という本をご存知だろうか。ノンフィクション作家・高野秀行氏の著書である。

高野氏の著書は多数あり、『幻獣ムベンベを追え』『ワセダ三畳青春記』『アヘン王国潜入記』など数えきれないが、その中でも本著は異色だ。特定の目的のある探検の記録というのが、探検モノの一般的なスタイルだが、本著は異なる様相を呈している。本の中では高野氏の豊富な探検人生の折々に体験した各地の納豆文化との出会い、そして奥深いアジアと日本の納豆への探究心が綴られている。さながら〈納豆沼〉に落ちてしまった1人の男の運命が克明に描き出されているようだ。

以下に目次を転載してみた。文字をなぞるだけでも濃厚な芳香が漂う。

プロローグ 日本は納豆後進国なのか?
第一章  納豆は外国のソウルフードだった!? チェンマイ/タイ
第二章  納豆とは何か
第三章  山のニューヨークの味噌納豆 チェントゥン/ミャンマー
第四章  火花を散らす納豆ナショナリズム タウンジー/ミャンマー
第五章  幻の竹納豆を追え! ミッチーナ/ミャンマー
第六章  アジア納豆は日本の納豆と同じなのか、ちがうのか
第七章  日本で『アジア納豆』はできるのか 長野県飯田市
第八章  女王陛下の納豆護衛隊 パッタリ/ネパール
第九章  日本納豆の起源を探る 秋田県南部
第十章  元・首狩り族の納豆汁 ナガ山地/ミャンマー
第十一章 味噌民族vs.納豆民族 中国湖南省
第十二章 謎の雪納豆 岩手県西和賀町
第十三章 納豆の起源
エピローグ 手前納豆を超えて

 元々、角幡唯介氏の『空白の五マイル』を読んで以来、探検モノの本は好んで読んでいた。そんななか、同じ棚でみかけた『アヘン王国滞在記』というあまりに強烈なタイトルに惹かれ、その後高野氏の著書を貪るように読んでいた。徹底した現地取材に基づき、普通では考えられない刺激的な体験を淡々とした筆致で描き出す、高野氏の文章にすっかり魅了されたのだ。そんな時新刊として発売されたのが『謎のアジア納豆ーそして帰ってきた〈日本納豆〉ー』だった。

 新刊発売直後、早速この本を手に入れた。一気に読み進んだあと、面白さを自分の中で抱えきれず、誰彼構わず話した。家族や友人や、ランチタイムには会社の同僚にまで。少し変なやつだと思われたかもしれない。しかし、納豆の凄さとこの本の面白さを、誰かに伝えなければという思いが溢れて止まらなかった。それくらいのインパクトが、この本にはあったのだ。

本の紹介ブームが終わったあと、ふと「自分で作ってみよう」と思った。むしろこの本を読んで納豆をつくることは、とても自然な行為に感じられた。

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