インドの交通事情と映画「ザ・ホワイトタイガー」
インドの交通事情、と一口に言いましても地域により千差万別ではありますが、日本をはるかに上回る車社会であるということはほぼ間違いなかろうと思われます。都市部では電車、メトロが走ってる区間もありますし、都市間を結ぶ高速鉄道も徐々に開通し始めていますが、あの広大なインドの土地に鉄道網を張り巡らすということは土台無理な話で、やはり長距離移動のメインは飛行機ということになりますし、メトロの区間も限定的ですのでローカル移動はやはり車ということになります。ちなみに自転車は道路の補整が行き届いていないためあまり役に立ちません。頑張って乗ってる人は見かけますが。
インドで暮らす、あるいは出張等で訪れる日本人にとっても、現地での足のメインは車ということになりますが、アメリカなどと違ってレンタカーを借りて自分で運転するという選択肢は最初から捨てている場合が多いのではないでしょうか。インドでの運転は非常にハードルが高いのです。白線や道路標識、信号などが疎らな道路に右から左から時には真正面から車が突っ込んできては身動きが取れなくなり、人や牛やヤギが道を横切ることもしばしば、車線変更や路上駐車のルールなどもよくわかりませんし、何車線の道路なのか判別できる方が稀、という交通事情ですので、日本のドライバーには運転が相当難しく、そうなるとプロの運転手にお世話になるのが自然な流れとなります。
インドには運転手を生業とする人々がかなりの数います。オートリクシャーの運転手、昨今ますます盛んなUberやGrabのドライバーなども含めますと、検証してませんが(多分)世界一職業ドライバーが多い国なのではないでしょうか。
私もインド在住時は専属のドライバーにお世話になりましたし、現在も出張時はあらかじめ車&ドライバーを予約しておくことがあります。
そんな職業ドライバーが主人公の映画が「ザ・ホワイトタイガー」です。
主人公は貧しい地方の村出身で、生計を立てるべく大地主に運転手として雇われることに成功するも、そこには越えられない圧倒的な階級差別があり・・・というお話で。
私などは日本人ということでインドにおける苛烈な階級社会のどこか枠外にいるという自認をしてしまっていたようなところがありますが、この映画においてはやはり車の後部座席に座っている側に自分を重ね合わせるほかなく、なかなか居心地が悪くなりつつもハッとさせられる映画でありました。
インド映画はRRRのような娯楽大作から本作のような社会派まで非常に幅広く名作ぞろいです。世界一映画が作られている国なので当然と言えば当然ですが。インドを知る映画として、おすすめの一本です。