はじめに

はじめに
サンノゼ国際空港に着陸態勢に入った飛行機の窓からは、思ったより大きなビルはなく、住宅地が見えていた。広々とした平地が広がって、遠くには低い丘が見える。
天気は晴天。機長のアナウンスによると気温24℃らしい。滑らかに飛行機が着陸する。毎日の発着便数に対して小さめな空港では、駐機スポットがいっぱいで、めずらしくタラップが飛行機のドアに付けられた。自分の番が来て外へ出る。
突然、今まで経験したことがない空の色に体全体が包まれた。自分の長い人生でも知らない青色。そして緩く吹く心地よい風。
すべてがここから始まるんだ。未知の世界に飛び込む興奮を感じながら、しっかりとタラップを降りた。何かがこれから始まるのか、それがいいことなのか、苦しいことなのか分からないけど、とにかく自分が納得するまでやってみよう。
アメリカに来たのは、よくある理由からである。公務員をしていた自分は、人事部には、公務員個人に対する線表というものがあって、この年になったら転勤させよう、ここにきたら昇進させようという予定表のようなものがあると聞いた。それは公務員に限らず、組織にとっては当たり前のことなのかもしれないが、自分はショックを受けた。
「自分の人生は決まっているんだ。定年には自分がどうなるかわかっているんだ」
「なんかつまらないなぁ」
「せっかくの人生なんだから、自分がやりたいことやってみたい」
これがアメリカに来た理由である。自分の好きなコンピュータ関係の仕事がしたい、ということは、シリコンバレーが最先端。
「よし、シリコンバレーに行こう！」
その時はまさかせっかく就職した会社が４社も倒産し、自分が就職する会社はつぶれるというジンクスがあると、友人に言われるようになるとは思いもしなかった。

「成功」するといっても、人それぞれ違う意味を持つだろう。お金持ちになって、シリコンバレーの一等地に、プール付きの家を建てる、会社で出世する、自己評価があがるなどがある。自分のイメージする成功がかなうよう、この本には自分を含めた様々な日本人が経験から学んだ、シリコンバレーのソフトウェア会社で成功するためのノウハウが書いてある。どこからでも読める構成になっているので、自分に当てはまるまたは興味がある個所から読んでいただきたい