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最初の一週間

     言えば当たり前なのだが、就職して最初の一週間は一度しか来ない。この一週間の重要性を認識していない人が多すぎる。この一週間で、あなたは直属の上司に、いい人を雇ったと認めさせねばならないのだ。
     あなたが就職した会社が大きな会社なら、オリエンテーションがあり、Mentor (メンター) と呼ばれる、いわゆるあなたが仕事に慣れるのを手伝ってくれる相棒を得るだろう。就職した会社が小さな会社なら、上司があなたを皆に紹介し、コンピュータを用意し、何かやることを教えてくれるだろう。
右も左もわからない最初の一週間で何ができるって思われるかもしれないが、出来ることはたくさんあるのである。
     まず、上司はあなたが Self-Starter (自分で積極的に行動する) エンジニアであることを期待している。例えばあなたが QA Engineer (品質管理エンジニア) として雇われたのなら、次のことができる。
     メモを取る。
    言われたこと、大事な情報、するべきことをしっかりメモしよう。それだけではなく、じぶんがこの一週間にやったことは、すべてメモを取るべきである。それが週の終わりに役に立つのだから。
会社が扱う製品を知ること。あなたがデバッグする製品を知ることが大事である。すでに製品がインストールされていたり、用意されていたりするならば、それを使って機能を勉強しよう。できれば、自分でインストールするところから始めたいところである。疑問点やインストール時に気を付けることは、しっかりメモを取っておこう。
     QA に関する Wiki ページを読み込む。
    ほとんどの会社では各部門や課によって、Wiki ページが作られているはずである。もしも Wiki がない場合は、メンターや同僚、上司に、「テストプランとテストケースがみたい」と伝えよう。そこは情報の宝庫であるはずである。よく読込み、疑問点などがあったらしっかりメモをとろう。
バグデータベースを読む。これまでどのようなバグが出ているか知るには、バグデータベースにアクセスして読むしかない。これもメンターや上司に、「バグデータベースが見たい」と言い、アクセスできるようにしてもらおう。
     一週間でこれだけの仕事をすませるには、もちろん残業しなければならないだろう。ソフトウェア会社で五時ぴったりに帰るひとは、小さな子供がいる人か、用事がある人くらいだろう。一週間目は上司や同僚が何時に来て、だいたい何時ごろ退社するか把握しておくのも大事である。
これだけのことをすれば、一週間で認められるのか? 上司の目にはもちろんなかなかの Self-Starter と思われていると思うが、一週間の最後に上司に週間レポートを書いて、メールで送ろう。週間レポートとは、例えば次のことを明確にしたレポートのことである。
     一 今週やったことのリスト
     二 今週終わったことのリスト
     三 来週やることの予定
例えば、次のように簡潔に書くと、忙しい上司もうんざりしないだろう。
 一 今週やったこと
     コンピュータの設定とバグデータベースへのアクセスの獲得
     開発中の製品のインストールと主な機能の勉強
     テストプランの熟読とテストケースの構成の把握
     Open のバグの熟読
二 今週おわったこと
     コンピュータの設定とバグデータベースへのアクセスの獲得
三 来週やること
     開発中の製品のインストールと主な機能の勉強
     テストプランの熟読とテストケースの構成の把握
     Open のバグの熟読
     担当する機能のテストケースの実施
その他 (質問など)
     QA ラボラトリーへまだアクセスできません。アクセス権をください。

     実に簡単である。上司はこの週間レポートをみると、あなたが立派なそして信頼できる Self-Starter であることを認めるだろう。
この週間レポートは続けることに意義がある。上司からもういらないと言われない限り、続けるのをお勧めする。
     自分の友人が4名のQA エンジニアのチーフだった時である。彼女は各エンジニアにこの簡単な週間レポートを書くことを、要求した。そして実に簡単に、一引く二=三の法則が破られていることに驚いた。エンジニアはやりたくないこと、出来ないことをいとも簡単に二と三のリストから消していたのだ。
     確かにやりたくない仕事はある。よくわからない仕事もある。すると、自分に与えられた仕事を見事に消してしまうのだ。この週間レポートを書いてもらうと、それができなくなる。「この仕事、リストから消えているけどどうして?」と上司に言われてしまう。
     しかし上司は勝手にエンジニアがリストから仕事を消したことを、責めないで、なぜできないのか、どうすればできるのかをエンジニアと一緒に考え、エンジニアを助けなければならない。週間レポートは、部下の落ち度を見つけるものではなく、苦手にしているものを見つけ、手を差し伸べるツールなのである。
     だから最初の一週間で、どんなにやったことがなかったとしても、やったことが少なかったにしても、上司に必ず出すようにするべきである。
あなたはそうすることによって、上司にいいエンジニアを雇ったと思われると同時に、上司にあなたには何が必要かという情報を伝えているのである。
     ただこれは一例で、他に自分に合ったやり方を見つけることをお勧めする。目標はとにかくあなたの上司に、あなたが信頼できる Self-starter であることを認めさせること。あなたを雇ってよかったと思ってもらうこと。
     最初の一週間は、仕事に慣れるためのゆったり期間ではなく、あなたを強く印象付ける勝負の時である。

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