ブルベの見学 & 阿仁-角館207km
9月上旬のある日
職場のコンビニに行ったところ、AUCCのS君に会った。
S君「こんにちは! 最近乗ってますか?」
私「それが、あんまり乗れてないんだよねぇ。
天気が悪かったり、用事があったりで」
「今度の土曜日にブルベがあるから朝それを見に行って、
その後で200kmほど走るつもり」
このときはこんな会話をしたのだが、
その後すぐにS君からメールが来た。
「自分も行きたいので、ご一緒させてもらえませんか」
とのこと。
二つ返事でOKし、二人で走ることになった。
今回のコースは秋田→上小阿仁→阿仁→大覚野峠→角館→秋田の207km
上図のコースを時計回りに走ります。
朝4時30分にS君と待ち合わせ、まずはブルベのある秋田港に向った。
そうなのだ!
秋田でブルベが開催されるのだ!!
ブルベ不毛の地、
" 秋田にこの夏、ブルベがやってくる "
との情報を得たのは、今年の春
BRM907群馬600 秋田→新潟One wayが開催されるのだ!
私も参加したかったのですが、ゴール後の都合がつかずに断念。
代わりにこれと似たコースを7月に一人で走ってきました。
(そのときのレポートはこちら)
参加は叶いませんでしたが、滅多にない機会なので、
スタートの様子だけでも…
と、S君と見学に行ったのでした。
朝5時
秋田港に到着
着岸したばかりの敦賀発ー苫小牧行きの新日本海フェリー
いいですね!
旅に出たくなるなぁ
このフェリーには1度だけ乗ったことがある
今回のブルベは、このフェリーに合わせて設定されたようだ。
新潟に荷物を置いて船に乗って秋田で降り、ブルベでゴールの新潟まで戻るという計画が組めるのです。
カーフェリーのランプを、一列になってロードバイクを押して歩く人たちが見えました。全員反射ベストをつけているので、ブルベの参加者とすぐに分かりました。
我々もスタート地点の道の駅 あきた港に移動します。
ところが、道の駅まで行ってみたものの誰もおらず…
向かいのコンビニにいる人が多かったので、そちらに移動
参加者が続々とコンビニに集まってきます。
ブルベの出発前というのは、参加者同士で雑談でもしながら和気藹々とした雰囲気なのかと想像していたのですが、互いに話をする人は誰もおらず、各自が "自分の世界" に入っている様子。
「これから600kmを走るのだ」という緊張感が伝わってきました。
出走は5時30分〜6時30分です。
まだ時間があったので、今回のブルベを開催するAJ群馬の方に
「秋田へようこそ! 見学に来ました」
と挨拶をして、しばらく雑談
集合場所は、直前になって道の駅からコンビニに変えたそうです。
出走予定は29名で、すでに4名ほどDNSの連絡があったとのこと。
5時30になり、車検が始まりました。
600kmに参加する方々は、既に他のブルベも完走済みの方が多いのでしょうね。みなさん手慣れた感じでブルベカードを出し、順番に車検を受けていました。
ロードバイクはディスクロードとリムブレーキロードが半々位
車検の後はブリーフィーングがあるはず、と思っていたのですが、そのまま次々とスタートしていきます。
ブリーフィングしてからの出走は集団走行になりやすいので、ブリーフィング無しで、車検後にひとりずつスタートする形式にしている、とのことでした。
6時になると、あらかた出発をしてしまって、担当の方もヒマになります。
しかし出走時刻のリミットである6時半までは、まだ来る人がいるかもしれないので、雑談をしながら待ちました。
今回のブルベを担当するAJ群馬の渡辺氏
さすがに開催担当者なので、全国各地のブルベを完走しているベテランです。今回のコースも当然試走済みで、個人的にも秋田には何度も来ているそうです。
私もロングライドが好きなので(ただしブルベに出たことはないのだが、笑)、楽しくお話しを伺うことができました。
いくつか聞き取ったことをまとめます。
< 今回のコースの見どころと特徴 >
渡辺氏「見どころはズバリ最初の男鹿半島!
ただ、景色は良いのだが、意外にアップダウンが多くて驚く方が多いかも。男鹿が終われば、あとは退屈なコースです(笑)。
日が暮れてからになる大曲-湯沢間は迷いやすいところがある。
湯沢あたりで宿泊ができるように設定している。
国道13号の主寝坂トンネルとその周辺は夜は幽霊が出そうで怖い」
< 秋田からの参加者について >
今回は地元からの参加は1名のみ、
他のブルベイベントでも、宮城、山形からの参加はそこそこあるが、秋田、岩手からの参加者は少なく、珍しい。秋田をサイクリングしていても、他のサイクリストに出会わずビックリする… とのこと
(ハイ、私も常々それを感じております。秋田、岩手、青森の全人口を合計しても横浜市と同程度ですから、仕方ないですね)
< 秋田でのブルベ開催の可能性 >
私「秋田発着のブルベ、ぜひ企画をお願いします!」
渡辺氏「あー、来年度のコース申請はつい先日8月31日が締め切りだったんだよね。確か来年はAJ全体でも "秋田" は無かったかな」
ナント! 残念
< 運営側の苦労 >
渡辺氏の今後の予定:
ローソン八郎潟大道店まで自転車で移動してPC1の対応
その後、電車で秋田駅まで移動し、お土産を買ってから、特急で新潟に移動。ゴール地点で待機。
600kmは、早い人だと24時間以内に完走してしまう一方、タイムリミットは40時間だから、ゴール地点で16時間待機する必要がある。
これがヒマでヒマで仕方ないらしい(そりゃそうだ、笑)
< ブルベ中の事故について >
3月に別団体開催のブルベ中に死亡事故が発生しているが、AJの運営側には詳しい情報が来ておらず、いまだに原因不明らしい。
ブルベ中に発生する事故の典型例としては、疲労が溜まった状態の夜間走行中、路面の凸凹にハンドルを取られて転倒し、骨折などをするケースが多いとのことであった。
6時15分
DNS以外のブルベの参加者はあらかた出発したようなので、
我々も出発をすることにした。
S君と先頭交代しながら、国道285号線を北上する。
気温は20℃前後で、とても走りやすい
S君は20代前半
中学生の頃から乗っているそうでロードバイク歴は長い
AUCCのレーサーで、FTPは約270W
私の現在のFTPは、ちゃんと測ったことはないが、多分170Wくらい
脚力の差は歴然である(泣)
長い登り坂では先に行ってもらい、頂上で待ってもらう感じで進む。
9時10分、80km地点、ファミリーマート 阿仁前田店にて休憩
< 本日のバイク紹介 >
私が乗って来たのはLOOK595 ProTeam
コンポはカンパ・レコード
このバイク、アニメ弱虫ペダルの "真波山岳(箱根学園)モデル" だそうです。
箱根といえば、私の高校時代のトレーニングのホームコース
真波クン、アニメの中のレースシーンよりもむしろ、箱根の旧道をどのようにダウンヒルしているのかの方に、個人的には興味がある(笑)
タイヤはVittoria CORSA CX チューブラー
久しぶりに乗ったが、高圧(8bar)でもタイヤがモチモチして楽しい。
私が所有する3台のバイクの中では乗り心地がもっとも良い
ところが、このバイク
実はひとつだけ重大な欠点があります。ポジションのことです。
購入時のベストポジションでコラムカットしてしまったせいでハンドル高をあげられず、今となっては前傾がキツイのです。
買った時には、ライダーの経年変化のことまでは考えなかったからね(笑)
S君のバイクはKUOTA KRAYON
コンポはULTEGRA R8000
タイヤはVittoria CORSA Control チューブラー
このS君
相当なパーツオタクである。
このバイクも彼が自分でパーツ選定をして組んだもの
AUCCのメカ二シャンも担当しており、スラムのコンポや油圧Diskブレーキの整備はもちろん、ホイールの手組みも余裕でこなす。
しかも、最新技術だけでなく、昔の規格やビンテージパーツのことについても詳しく、驚かされる。
ところが彼は、知識は豊富なものの、最新バイク(ディスク・電動・チューブレスの3点セット)を買うつもりは無いそうである。
価格が高すぎるのもあるが、どんどん新製品が出るので流行り廃りが激しい、ホイールもパーツも用品類も何もかも種類が多すぎ、情報量が多すぎて、もはや吟味できない… 等
ある意味、ロードパーツに対して彼なりに「達観」してしまったらしい。
私も似たようなところがあるので、たいへん共感できる(笑)
コンビニ出発後、国道105号線を追い風にのって快調に進む。
2週間後の9月22日にこのルートで「角館ー鷹巣間の100kmマラソン」が開催される。S君はこの道をロードバイクで走るのは初めてだが、昨年は100kmマラソンに出場して完走したらしい。
今年も出場予定とのことで、ロードバイクで走りながら、ルートの様子を再確認しておきたかったようだ。
10時30分、102km地点、道の駅あに 到着
阿仁地区はマタギの里として知られる熊狩猟の本拠地
道の駅の売店で熊肉が売られていたが、熊の出没数が増えているからといって安いわけではなく、ネット通販の価格と変わらないようであった。
売店でオニギリでも買おうかと思ったのだけれども、
お土産ばかりで、食べ物は無し
この後、大覚野峠へのヒルクライムがあり、その後のコンビニも遠いので、ここで補給をしておく必要がある。
レストランが開店する11時まで、外のベンチで待つことにした。
レストラン開店と同時に入店し、ラーメンを注文。
食べながら、S君に今取り組んでいる研究の話を聞かせてもらう。
来週、はじめて国際会議で発表をするそうだ。
腹ごしらえをして再出発
結局、道の駅で1時間も休憩をしてしまった。
峠まで8.8kmのヒルクライム
前半は100Wほどで、話をしながらのんびりと走る。
その後も140-170Wくらいのゆっくりペース。
S君が私にペースを合わせてくれた。申し訳ない。
12時20分、112km地点、標高518mの大覚野(だいがくの)峠に到着
ここから先はダウンヒルをして角館を目指す。
路面の痛んでいるところが多く、凸凹を避けながら走る。
向かい風の中、S君に引いてもらう。
次のコンビニで補給をしようということになり、
13時40分、148km地点、ローソン西木西明寺店で休憩
店の前に座って、S君とロードパーツの話をする。
AUCCでメカニシャンが育っておらず、自分が卒業したらメンテや修理のできる部員がいなくなってしまう…とのこと
最近はほとんどの部員がロードバイクそれ自体にはあまり興味がなく、ULTEGRAと105の違い、105とTiagraの違いにコダワルような、マニア的な部員は少ないそうだ。
さて、そろそろ出発をしようかと思ったころ、
クロスバイクに乗ったお爺さんがやってきて
「こんにちは、どこまで走るの?」と声をかけられた。
このお爺さん
自宅から数十キロ圏内を、ときどき気ままにサイクリングしているらしい。
お歳は83歳。
このお年でスポーツ車に乗れるのはすごい!
話を聞いてみると、昔からのサイクリスト&アスリートで、さまざまなことにチャレンジしてきたらしい。
聞き取った話をまとめると次の通り:
神奈川県茅ヶ崎のご出身。学生時代は陸上選手だった。
若い頃パチンコでボロ勝ちしたので、それで当時の高級サイクリング車を買い、昭和40年に5日間かけて野宿をしながら房総半島を一周した。 (ちなみに、日本でのサイクリングブームとランドナーの普及は昭和45年頃からだから、それ以前の話だ)。
同じ頃、自転車で箱根を登ったりもした。正月の箱根駅伝の日は国道1号線が事前に通行規制されるので、ランナーが来る前に空いた道を自転車で登った。箱根駅伝は当時も今と同じくらいの人気イベントだった。 (これは今でもロードバイクでやっている人がいる。相当歴史があるらしい、笑)
その後は、登山、マラソン、山岳マラソンなどで、あちこちの大会に出場してきた。
S君が角館ー鷹巣の100kmマラソンの話題を振ると、
このお爺さんは、同じコースを2泊3日かけて歩くことを、つい最近までしていたらしい(自主的なチャレンジとして。しかも1度だけでなく何度も)
私:「いま、一番してみたいことって何ですか?」
お爺さん:「四国遍路が楽しかったから、今度はあのコースを自転車で回ってみたいね」
私:「そのチャレンジ精神の原動力はどこから生まれるのでしょうか?」
お爺さん:「なんだろうねぇ。でも、若い頃から厳しい環境に身を置いて、挑戦をするのが好きだったんだよね」
私:「お歳を重ねても、そこまで動ける秘訣はなんでしょうか? 」
お爺さん:「続けることだろうね。今もこうして動けるのは、若い頃からずっと、体を使い続けてきたからだよ」
そりゃ、そうですよね
コンビニに着いてから、既に1時間以上が経過していた。
お爺さんにお礼を言って、再出発した。
角館を通過し、国道46号線に入る。
私が先頭で走るものの急に力が出なくなり、途中で小休止
最後の1個のミニアンパンを食べる。
20分ほど休憩したのち出発
その後は時速30km前後のペースで国道46号線を快走する。
17時8分、180km地点、協和の交差点を通過
もう、だいぶ日が暮れてきた。
最後にもう一回補給をする必要がありそうなので、S君にこの先のローソンで休憩することを提案する。
私は、単に腹が減ったから補給したくなっただけなのだが、
S君は、メーターを見ながら
「いま3000キロカロリーを超えたところなので、
摂取量があと500キロカロリー足りないみたいです。
なので、僕も補給がしたいと思っていたところでした!」
と、極めて理詰めに考えていることにビックリしてしまった(笑)
S君と駐車場でコンビニ飯を食べながら、
クラブランでの安全対策やパーツの話などをする。
それにしても、ロードパーツは未だによくわからないことが多い
例えば、
「タイヤは何故フロントよりもリアの方がパンクをしやすいのか?」
という、簡単なようで実は難しい昔からの問題がある。
このことについて、自説をS君に述べてみたのだが、
「それは違うと思いますよ。だって〇〇が××で□□だから〜」
と軽く論破される私なのであった (つд∩)ウエーン
コンビニにいるうちに、完全に日が暮れてしまった。
ここからはヘッドライトをつけて再出発
その後も、順調なペースで走って、
秋田の市街地まで戻ってきた。
19時8分、S君と別れて自宅に到着
走行距離 207km
所要時間 14時間38分
走行時間 7時間58分
グロス平均速度 14.1km/h,ネット平均速度 26.0km/h
前回同じコースを走った時は10時間以内に帰って来れたのだが、今日は大幅に時間がかかってしまった。
なにしろ、パーツオタク同士なので、一旦休憩をするとつい話しが長くなってしまい、なかなかスタートできないのである(笑)
でも、AJ群馬 渡辺氏からブルベのお話を伺い、S君と楽しいライドをし、コンビ二でアスリートのお爺さんの体験談を聞くことができ、
とても充実したサイクリングをすることができた1日でした。
(終わり)
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