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リアル80年代のロードレーサー

こんにちは
自転車が大好きなsilicate meltと申します。

このたび、80年代のロードレーサーを入手しました。
このnoteはその購入記です。


1. 再びロードレーサーに乗りたくなった理由


2月にGarminのパワーメーターを購入して以来、ロードバイクの性能評価を行ってきた。

タイヤの転がり抵抗にはどの程度の違いがあるのか?
軽いホイールやバイクは本当に速いのか? 
フォームや路面状態によって速度はどの程度変わるのか?

昔からそうしたことを知りたいと思っていた。
自分が速く走る為ではなく、純粋にロードパーツとしての興味からである。
それらを簡単な実験や物理計算で推算しているサイトはあるけれども、自分自身で確かめてみたかったのだ。
それらのうちの一部はnoteで報告してきた。


その後も様々なテストを行なっていて、興味深いデータが得られている。
そのうち時間ができたら、結果をまとめてこのnoteで報告をしようと思っている。

さて、そうしたテストをするうちに昔のスチールのロードレーサーを試して見たくなった。
カーボンとスチールには、どれほどの違いがあるのか?
ワタクシの個人的な経験としては、18年前にスチール(Rossin)からカーボン(LOOK)に乗り換えた時に、加速性能、巡航性能、振動吸収特性のすべてにおいて性能が大幅に向上したことを実感した。
だから、Rossinはもう所有している意味がないと感じて、ヤフオクで二束三文で売ってしまったのだ(実はいま、そのことを少し後悔している)。

スチールの性能を、現代のパワーメーターを用いて、もう一度実験的に確かめて見たくなったのだ。



… というのは冗談で、本当の理由はもっと単純


今乗っている2台のLOOKはとても快適で、まったく不満はないのだけれども、乗り味の異なる他のバイクでもサイクリングをしてみたくなったということ。
第一希望はDi2なんかを搭載した最新のエアロロードバイクなのだが、
もはやLOOKの新車は100万円以上もするから買える訳がない

そこで第二希望の80年代のビンテージで考えることにした。
vogue_rider氏のEROICAチャレンジに大いに刺激を受けたのも理由のひとつで、80年代のロードレーサーが懐かしくなって、もう一度乗ってみたくなった。本当はこれが理由なのデス(てへぺろ☆(・ω<))


2. 80年代の中学生のロードパーツ事情


さて、今回のビンテージロード購入計画で想定している予算は5万円である。だから、ビンテージとは言ってもRossin GHIBLIとかLOOKのKG96とかは買えない。
僕がサイクルスポーツをはじめたのは1986年、中学2年生の時だ。
そのころに憧れたロードレーサーを5万円以内で手に入れたい。

僕が最初に憧れたのは、セキネのカナディアンロードとブリジストンのGrand-Velo 500(どちらも一番安いモデル)であった。
なぜセキネとBSなのかというと、単に家の近くの自転車屋が取扱店で、そこにカタログが置いてあったからである。
当時は予算オーバーのため、ルック車のロードマンになってしまったのだが、カタログで見たそれらのロードレーサーにとても憧れたのであった。

上:セキネ カナディアンロード(69,800円)
下:ブリジストン Grand-Velo 500 (78,000円)
こうしてみると、この二台は驚くほどソックリだ(笑)


ロードマンでサイクリングをし始めた頃、図書館で読んだサイスポの広告から、近所に「サイクルセンターナガノ」という専門店があることを知った。
ナガノに展示されていたカンパ仕様のレーサーと店頭でもらったシマノのパーツカタログにより、僕はパーツ沼の世界にどっぷりとハマることになった。

当時のカンパとシマノのロードコンポの価格帯(グレード)はこんな感じだった。

<神>:カンパ Super Record、C Record
<特上>:シマノ DURA-ACE、カンパ Victory  >  Triomphe
<上>:シマノ 600EX
<並>:シマノ 105

カンパのレコードは崇拝の対象で拝むもの
デュラは中学生には高級すぎて分不相応
シマノ派がお小遣いで買うには105が適当なのだが、ちょっと奮発して600EXにするかどうかで迷うのであった(笑)。
(当時は、今のようなTiagraやSORAグレードが無く、105がそれらに相当する入門コンポであった)。


上の写真は僕が14歳の時に買った600EXのWレバー(6速SIS)である。
当時、中古で買ったAdamas AX仕様のスポルティーフに乗っていたのだが、最初にこのWレバーを買って、その後、他のパーツを少しずつ105に交換した。変速性能を左右するWレバーのみ600EXにグレードを上げた豪華仕様にしていたのであった。

昔使っていた80年代の105は、その後資源ゴミとして捨ててしまった。
600EXや初代アルテグラのパーツもたくさん持っていて、それらは捨てずに取っておいたけれども、20年ほど前にヤフオクが出来たときに、ほとんど売ってしまった。
実はそのとき、この600EXのWレバーもヤフオクに出品していたのだけれども、これだけ売れ残ってしまったのだ。
今では、よくぞ売れ残ってくれた! と感謝している。
なにしろ、お小遣いで一番最初に買ったシマノのパーツだし、もはや当時の思い出のパーツはこれしか残っていないからだ。



3. シマノ600EXについて


上に書いたように、シマノ600EXはちょっと背伸びをしたいお年頃の中学生の憧れのパーツであった。
ここでシマノ600シリーズと600EXについて簡単に解説をしておきたい。

初代のシマノ600は鍛造技術、プレス加工、表面の研磨、アルマイト処理や樹脂メッキの最適化など、シマノが得意としていた先端技術の粋を集めたコンポとして1975年に誕生した。デュラエースと同等の機能を有しながら、廉価に抑えたミドルグレードコンポで、レーシング用とツーリング用の2モデルがあった。その後、
1978年にアラベスク(唐草模様)デザインが施された600EX
1980年にエアロデザインの600AX
と進化した。
ところがこのAXシリーズが互換性の点で多くの問題点を抱えてしまい、商業的には大失敗したのであった。
シマノの解説によると、
「AXシリーズの反省を生かし、基本機能に忠実に、そして感性の時代にふさわしいデザインの仕上がりにもこだわった高級感のあるコンポーネントパーツ」として誕生したのが、1983年の NEW 600EX である。
(なお、NEW 600EXは "NEW" を省略して単に「600EX」と呼ばれることが多いので、ここでもそのように呼ぶことにする)
その後600シリーズは1988年に(初代)600ULTEGRAとなり、現在のアルテグラシリーズへと続くことになる。

NEW SHIMANO 600 EX (1983年)
NEW SHIMANO 600 EX マイナーチェンジ後 (1986年)
このブランド表記の無い白いロードレーサーが
パーツを引き立てていてカッコ良かった(笑)

80年代のNew 600EXには2種類のものがあった。
基本形は1983年発表のモデルなのだが、その後、1986年に
(1) SISシフト(6速)、(2) エアロブレーキレバー、(3) 改良されたキャリパーブレーキとなったマイナーチェンジ版が発表された。
これは比較的大きなモデルチェンジだったのだが、新しい名称は付けられなかった。なお、クランク、ペダル、ハブ、フリーなどは新旧で共通である。


4. ヤフオクで理想のロードレーサーを探す


今回のビンテージ車購入計画では、まずは手元にある600EXのWレバーを再利用することが大前提となる。
そのため、600EXベースの完成車で探すことになった。

フレームの色は白
最初に憧れたカナディアンロードもGRAND-VELOも白いモデルで、上に掲載した600EXのカタログモデルも白い車体だった。
だから白いロードレーサーには特別な思いがあった。
僕がいま2台の白いLOOKに乗っているのは、実はそれが理由である。

フレームのブランドにはそれほどこだわりはない
基本的にRossinとLOOKが好きで、他にはそれほど興味がないので、5万円以内で買えればなんでも良いのだが、
正確に言うと、「こだわりがない」ということに "こだわりたい" という厄介なコダワリがあるのであった。

シマノのカタログモデルのような、ブランド表記の無い、何にも属さない、80年代のロードレーサーとしか説明のしようがない「匿名のレーサー」に乗りたい。
僕が堪能したいのはフレームではなくてシマノ600EXなので、フレームには自己主張をしてほしくないのだ(笑)。

まとめると:
(1)80年代中期のシマノ600EXベースであること。
(2)ブランド表記の無い白いフレームであること。
(3)サイズは520-550mm
(4)送料込みで5万円以内

こんな条件を満たすロードレーサーなどヤフオクにあるのだろうか??


だが、それは意外と簡単に見つかった。

ヤフオクの写真から次のことが読み取れた:
・ フレームはTANGE No.1チューブ、ブランド表記は無し。
・ コンポは基本的にNEW 600EXだが、チェンホイールのみ1978年の600EXに見える。
・  集合シートステイ
・  リムはMAVIC Speciale Sport
・  サイズは550くらいに見える
・  車体は綺麗でほとんど乗られていなかったように見える

自分の条件にすべて合致していたため、入札し、19,000円で落札をすることができた。


5. 匿名ロードレーサーの正体


落札から数日後、匿名レーサーが自宅に届いた。

この梱包、素人じゃないね(笑)

「素人の個人出品」とあったが、自転車のことをよくわかっている人の梱包の仕方だ。

早速、組み立ててみる。
中学生の頃に憧れた「シマノ600EXで組まれた匿名レーサー」だ
ワクワクする。

段ボール箱を片付けようとしたところ、
中に封筒が入っていることに気づいた。

なんだろう?

ああ、そういえば 防犯登録解除証明書 を
発行してくれるって書いてあったな。

へー、前の所有者はやっぱり自転車屋さんなんだ
どうりで手際がいい訳だ(笑)

ふむふむ、「抹消済み タンゲ ロード」

確かに匿名レーサーだから「タンゲ ロード」としか書きようがないよね
それしかラベル貼ってないんだから(笑)

 「メーカー名 ナショナル」


なにィ、 ナショナルだと!


BB裏を確認したところ、確かにNationalの刻印があった。

というわけで、匿名レーサーは組み立てから10分で
匿名解除になったのであった(笑)

そうか、ナショナルのフレームなのか
ナショナルといえば、パナモリ(Panasonicのクロモリフレーム)の祖先だ
好きな人は好きなんだろうけど、複雑な気持ちだ
本当は正体不明の「匿名のレーサー」に乗りたかったから

でも、これも何かの縁だ
このナショナルフレームのロードレーサーを大事に乗ることにしよう!

メーカーがナショナルであるとわかると、このフレームの素性をもっと詳しく知りたくなってきた。

メーカー名の入っていない、白いナショナルフレーム
どこかで見たことがあるなぁ
何だったかなぁ? メーカーの広告だったかなぁ?
昔の資料をあさりながら調べるが、どうしても見つからない
でも、何度も繰り返し見た覚えがあるのだ…

30分ほど探してようやく見つかった。

サイクルスポーツ臨時増刊 実用カタログ '87

コレだ!

でも、見かけはカタログ掲載の「ナショナル NR-2050」とソックリなのだが、僕の手元にあるのは、丹下 No.1の集合シートステイのフレームで、同じものは載っていなかった。



6. リアル80年代のロードレーサー

さて、今回入手した80年代のナショナルロードレーサーを紹介しよう。
なお入手時のままで、まだクリーニングもメンテもしていない状態である。

まずは全体図から

チューブはTANGE No.1
珍しい集合シートステイであることも考えると、
それなりに上等なフレームであるようだ

BB下にNationalの刻印


ステムはDURA-ACE AX、ハンドルは日東 55、
ブレーキレバーは600EX(BL-6208)


ブレーキは600EX(BR-6207)
ブレーキシューは未使用に近く、ほとんどすり減っていなかった

Wレバーは600EX(SL-6207)
カチカチすらしないフリクションレバー(笑)


リヤディレーラーは600EX(RD-6207)
キズがなく新品に近い
このデザインが斬新でカッコよかった

ハブは600EX(HB-6207)
クイックレバーも新品同様でピカピカ

チェンホイールは初代DURA-ACE
1978年の600EXかと思っていたのだが、実際にはデュラだった。
ペダルは三ヶ島 シルバンロード
フロントディレーラーは600EX(FD-6207)

ギヤ比は80年代のスタンダード
フロント52-42、リヤ13-21の6速、男前ギヤ
これをガシガシ踏みながら、峠で泣いてみたい(笑)
(昔はこんなのでヤビツも箱根も登ってたよね)


チェーンステーのメッキがすごく綺麗で、ほとんど錆びていない


サドルはセライタリア RS
シートピラーはサカエ CT-P5ラブラード


リムはMAVIC Speciale Sport
僕が最初に買った中古のチューブラーホイールも
このラベルのやつだった(笑)

タイヤは多分WOLBERじゃないかな?
劣化しているけど、トレッドはすり減っていない。
なお、タイヤは前後ともパンクはしていなかった。


このロードレーサーは何だったのだろうか?
お店のことを調べてみて分かったが、出品者はシティーサイクルとバイクを扱う、老舗の街の自転車屋さんのようだ。
もともとロードバイクは扱っておらず、他に似たような出品もない。
買い取った中古車を販売したわけでもなさそうだ。

昔のナショナルはフレームの単品売りはしておらず、ショップが独自の完成車として売るのが基本だったようだ(だからサイスポのカタログにも価格が掲載されていない)。いろいろと調べてみると、ナショナルフレームにショップブランドのデカールを貼って、「ショップのオリジナルロード」と称して販売していたケースが多いこともわかった。

僕は、もともとこのロードはこの自転車屋さんがフレームを購入して組んだもので、たまに試乗程度で乗る人はいたけれども、基本的にはお店の展示車として使われており、専門店ではないので買う人もおらず、その後、長いこと倉庫保管されていたものではないかと予想している。

出典:ワタクシの妄想


このナショナルロードは、もちろんこのまま乗ることはできない。
全面的なオーバーホールをしたのち、Wレバーのほか、いくつかのパーツを交換して、理想の600EXロードに仕上げていくつもりだ。

(次回に続く)


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