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ロードバイク: チューブラータイヤとクリンチャータイヤを乗り比べてみた話

 ロードバイク歴37年,これまでチューブラータイヤ一筋でクリンチャーには一度も乗ったことがないです.
 私みたいなロード乗りは今時珍しいかもしれませんね.
 クリンチャー 乗りがチューブラー に乗ったレビューはありますが,その逆はなかなか見かけません.
 というわけで,これはそういうレビューです.

1.私の自転車遍歴

 まず私の自転車遍歴から.
 ロードに乗り始めたのは中学生の頃,チューブラータイヤの全盛期です.リサイクルショップで中古のスポルティーフとチューブラーホイールを購入し,それを組み合わせたものが私の最初のロードバイクでした.
以後,6台のロードバイクを乗り継いできましたが,はじめから自作組み立て派で完成車は買ったことがありません.
 当時はクレメンとビットリアがチューブラータイヤの双璧で,ロード乗りはクレメン派とビットリア派に分かれていました.私は元々クレメン派だったのですが,90年代にクレメン社が突然倒産してしまったことからビットリア派に転向し,以後CORSA CXを20年以上に渡って愛用してきました.
 昔はロードレースに出たり長距離耐久ラン(ブルベを個人でやるやつ, そもそも昔はブルベのようなイベントが無かった)を楽しんでいましたが,今は週末に数十キロのツーリングをする程度です.

2.  クリンチャー タイヤを試してみた理由

 第一の理由はコストパフォーマンス
 15年くらい前まではCORSA CXは店頭特価で1本4000円くらい,StradaやRallyクラスの練習用タイヤだと1500円くらいで買えたのですが,今は3倍以上も値上がりをしてしまいました.
 それでも,乗り味が劣る練習用タイヤに戻る気になれず,仕方なくこれまで,高くなってしまったCORSA CX (15,000円/1本) を無理して購入してきましたが,このままでは流石に厳しい.クリンチャータイヤであれば約半額で済みます.

 第二の理由はクリンチャータイヤに対して興味が湧いたから.
 世の中,クリンチャー タイヤ全盛.カンパのカタログからもチューブラーホイールは消えてしまいました.まさかこんな時代が来るとは...
しかし,それは技術の進歩でクリンチャー が劇的に進化し,チューブラーを凌駕するようになったからではないのか?
 チューブラー の定番,CORSA CXに長年乗ってきた身としては,CORSAのクリンチャーモデルはどんな乗り味なのだろうか? という興味が出てきたわけです.実はコスパよりもこちらの方がメインの理由かもしれません.

3. 比較対象

チューブラー : ホイールはカンパ Nucleon,タイヤはVittoria CORSA CX
クリンチャー : ホイールはカンパ Electron,タイヤはVittoria CORSA G2 700x23C + Vittoriaのラテックスチューブ
空気圧はどちらも8barとし,ホイールを交換しながら250kmほど走行してみました.
タイヤはどちらもVittoriaのフラッグシップモデルです.
CORSA CX チューブラーについては,下記にレビューがあります.

なお,CORSA CXは数年前に販売終了し,現在はチューブラー版のCORSA G2にモデルチェンジしています.

 試した2つのホイールは同等グレード,リムがチューブラーかクリンチャーの違いだけで,それ以外の構造は完全に同じなので,単純にタイヤの違いを比較できたと思います.
 比較に用いた車体は LOOK595 + カンパレコード(10S) です.

奥がこれまで使用してきたVittoria CORSA CX (チューブラー),手前が今回比較したVittoria CORSA G2 (クリンチャー )

4. サイズと重量の比較

カタログスペックですが,
チューブラーホイール+タイヤで前後1880g
クリンチャーホイール+タイヤ+チューブで前後2186g
クリンチャーの方が約300gほど重いです.
手に取ってみてもクリンチャーの方がやや重いことが感じ取れます.
タイヤ幅はCORSA G2クリンチャーが実測24.2mm,CORSA CXチューブラーが21.2mmでした.クリンチャー の第一印象は「タイヤ太っ」です.

5. 軽快感

 CORSA CXの方が踏み出しが少し軽いです.
 300gの差はわずかに思えますが,同じ巡航速度で走っている時はCORSA CXの方が疲れ難いように感じました.
 タイヤやホイールは少し重い方が慣性力が作用するから疲れないなどと言う人がいますけど,間違っていますね.
速度が維持されるようにホイールを回し続けるためにはエネルギーを供給しつづけなければならないわけで,ホイールとタイヤは軽いに越したことはないです.

6. 振動吸収性

 これは分かりやすかったです.
 舗装したてのきれいな路面ではチューブラー とクリンチャー の差は感じませんでした.しかし,痛んだ路面では明確にCORSA CXの方が振動吸収性が良かったです.
特にダウンヒルでは大きな違いを感じました.
ダウンヒルでは路面の状況が目まぐるしく変わります.CORSA CXは振動吸収性が高いので,路面の状態変化はあまり気にならず,ライン取りに集中できます.一方,クリンチャー のCORSA G2は振動が増えたり,減ったりの変化が大きく,すこしびっくりしました.

7. ダウンヒルでのコーナリング

 細身のチューブラーでも問題ないことはわかっているけど,CORSA G2の方がタイヤが太いのでコーナリングで安心感があり,コントロールもしやすかったです.

8. 見た目

 まあ,慣れの問題なんだろうけど,21mmのチューブラーに慣れてしまった私には,走行中,CORSA G2はとにかくその太さが気になって仕方なかった.最近は25Cの方が転がり抵抗が少ないということでメインになっているらしいが,23Cでさえこれだから,私には25Cは無理だと思った.
 個人的にはデザイン面でスキンサイドが好きなのですが,今ではチューブラーそれ自体があまり使われていないため,CORSA チューブラー のスキンサイドは特価品やオークションではなかなか出てきません(Rallyならスキンサイドだが,今更Rallyに乗る気は無い).クリンチャーのいいところは,もともと数が出ているのでスキンサイドが入手しやすいことです.

9. 耐パンク性能

 CORSA G2は短距離しか乗っていないけれど,CORSA G2とCORSA CXで大きな差はないと思っています.これまで20年間 CORSA CX チューブラー に乗っていて,摩耗と経年劣化以外ではパンクしたことがありません.昔,クレメンからビットリアに乗り換えたときに,ビットリア製タイヤの耐パンク性能の高さを明確に実感しました.
 自分ではよくわからないが,パンクしにくい走り方が習慣になっているからなのだろうけど,私の場合パンクをしないのでタイヤが完全に摩耗するまで使えてしまうのです.
 念の為にスペアタイヤは携行するけど,シーラントなんて重くなるだけで,意味が無いものと個人的には思っています.
 Vittoria社のチューブラーで培った耐パンク性能の技術がクリンチャー にも反映されているはずなので,個人的には今時のタイヤにはパンクはまったく心配していません.
 その昔,まだ裏ヤビツや道志みちが未舗装だったころも(80年代ですね),細身のチューブラータイヤで普通に走っていました.パンクするかしないかはタイヤの種類よりも走り方の違いによる影響の方が大きいというのが,私の理解です.

10. 走行音

 CORSA G2はCORSA CXよりも走行音が静かでした.
 CORSA CXは30km/h以上で巡航していると「サーッ」という乾いた音がしますが,CORSA G2はスポークの風切り音だけで,タイヤそのものは音が比較的静かだった.トレッドパターンの違いによるものと思うが,個人的にはCORSA CXの音の方が好みです.

11. メンテナンス性

 CORSA G2とCORSA CXで空気の減りの速さは変わりませんでした.3日で8気圧→6気圧くらいまで減ります.まあ,ラテックスチューブですからそんなもんでしょう.
 装着のしやすさの比較.CORSA G2はチューブを噛まないようにタイヤをはめるのに時間が掛かった.慣れの問題だろうけど,リムセメントを塗る手間を考慮してもチューブラーの方が簡単でした.

 そういえば,最近のチューブラーホイールに関するblog等を見ていて,気になることがあります.チューブラーに対して余計な手間をかけすぎなのです.剥がすのに難儀する強力なリムテープなど使う必要ないし,リムについたセメントを落とす必要もありません.
 セメントは上塗りを繰り返すことで接着力が増します.そもそも昔のロードのマニュアル本にはリムを新品で買ったらヤスリをかけろと書いてありました.少し凹凸があるくらいの方が,セメントの乗りがよくなるからです.
私はパナセメントの上塗り派で,セメントの除去やクリーニングなどは一切しません.パナセメントは接着すれば強力で走行中に外れることなどないですが,剥がそうとすると簡単に剥がれるという不思議な特性があります.

12. 総合評価

 走りの軽快さと振動吸収性の高さの点で,CORSA G2(クリンチャー)よりもCORSA CX(チューブラー )の方がよいと思いました.
いまどきのクリンチャータイヤはチューブラーを凌駕するのかも? という淡い期待もあったのですが...
プロロードレーサーは一時期クリンチャータイヤにシフトする動きがありましたが,結局今ではまたチューブラーに戻ったようです.
今回,比較をしてみて「そりゃそうだ」と納得した.

 長距離ツーリングやブルベなどでは,パンク対策を考えてクリンチャータイヤにする人が多いです.しかし,走行距離が長くなるほどクリンチャーとチューブラーの差が体に効いてくるので,むしろ長距離走行であるほどチューブラーの方が向いているのではないかと思います.
チューブラータイヤの良質な走行感(メリット)は起こるかどうか分からない(多分起こらない)パンクのリスク対策を上回るというのが,私の結論です.

 逆に,短距離ツーリングであればクリンチャーとチューブラーの差が出にくいので,クリンチャーでも十分であると思いました.
クリンチャータイヤとチューブラー タイヤ,両方のホイールを所有して行き先によって乗り換えることで高価なチューブラータイヤを延命させることができます.クリンチャータイヤのビギナーとしては,当面そのような使い方をしていきたいと思います.

この記事は下記に続きます.


「チューブラータイヤ」と「チューブレスタイヤ」の比較記事はこちら↓


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