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<#フォロワーからきた架空のタイトルの新書の感想を書く>を思いついた順から書いてみた(1)

Twitterで振られたネタに解答しようとしたら、思いのほか広がったのでnoteに一部をまとめました。稚拙ですが、ご容赦ください。

『〈皇国〉憲兵隊の暗闘』

 いかなる国の軍隊においても憲兵は存在する。軍隊という官僚であり武力を司る組織であるため、組織内の規律違反や違法行為を取り締まり「秩序」を維持するために憲兵隊は存在した。それはあの帝国にも存在しており、皇国においても同様であった。
 その秩序維持のため軍隊内部から半ば独立した位置にあるべきはずの憲兵も五将家が皇国の実権を握る間は、その干渉を受け続けてきたことは容易に想像ができ、本著の随所にその痕跡を読み取ることができる。その表現からも憲兵隊が軍隊内部の権力闘争において、どのように立ち回り「暗闘」してきたかを知ることができる貴重な歴史書である。一方で本著の一番の欠点は、新城直衛について全く触れられていない点であり、そのことが時の権力者に公然と対抗できなかった組織としての弱さを我々に示している。


『現地食糧調達奮闘記 主計はつらいよ』

 南極大陸においては、22世紀を迎えた現在もなお「南極条約」の効力が継続しているため、各国の領土的発言は封印されている。21世紀の半ばに眠りから覚めた古獅子が声高に叫ぼうと暗闘したが、国連の場で太平洋の小国にまで失笑され、その発言を受けた国際市場での株価大暴落以降、どの国も最後の大陸について触れようとしていない。
 しかし、研究目的として各国は観測施設の保持は続いている。新興国は新規に基地を建設する費用と維持費、政治的発言力の増大した環境団体からの圧力を緩和するために、日本などと共同研究を実施している。かつて、米と味噌と醤油さえ最低限準備できれば対応できた天国のような時代はとうの昔となり、多種多様な人種と宗教観と慣習にどう折り合いをつけながら食事を準備するかが長い基地生活の一番の命題となっている。本著では、食事を準備する側を取り上げるにあたり、料理人ではなく食料調達係である日本人主計官の孤軍奮闘に着目している点が慧眼に感服する。VRチャットとAI自動翻訳により外国人とのコミュニケーションが日常レベルで誰でも行える現在においても、「食」に関する人間の業は深いと改めて思い知らされた次第である。

『第四次大戦後の世界情勢』

北米大陸が廃墟と化すことで終結した第四次世界大戦は、栄光と繁栄が約束されたはずであった新大陸が政治的機能をほぼ消滅させたために、世界の主導権が旧大陸とアジアに回帰したことは周知の事実である。今回の特集では、ユナイテッド・キングダムの復活とドイツの急激な政治的大転換、そして日英独の急速な接近を俯瞰して記述されている。惜しむらくは、経済崩壊とクーデターを繰り返す南米諸州や独立を果たした中央ヨーロッパ諸国の動向についても戦後の政治体制に少なからず影響を与えていたことは、当時を生きたものならば必ず知っているはずであるので、字数の関係から記述の欄外に置かれたのは誠に残念である。


『大逆転!北の暴風作戦』

 ゲームデザイナー・佐藤氏がFH(Fictitious History)ジャンルにおいて、史実と異なり北米艦隊がアイスランド島への突入に成功したことをリアルに描いた小説である。独仏合同艦隊を捕捉し、殲滅したとばかり思いこんだ枢軸国側の裏をかき、すべての兵力が払底した海上を北米艦隊が突き進むという展開には誰もが驚愕し、筆者自身も頁が進むたびに稲妻に打たれたかのような衝撃を受けた一人である。近年、復刊を望む声がたびたび電脳世界上で話題になるが、作者自身がそれを望んでいないため叶っていないことは、まことに残念である。


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