羽生と私が推す史上最高の将棋
■羽生も感動
将棋の世界には伝説の妙手がいくつかある。
升田や谷川、藤井の将棋にはそういった手が多く、気がつくと姿が消え、相手の胴体が真っ二つになっているような鮮やかさがある。
そういったザ・妙手も好きなのだが、私が最も感動した手はまた違うものであり、奇しくも羽生名人と意見が一致している↓
指した人はもちろんこの方、大山康晴十五世名人。
巨人、魔人、鉄人、超人、不死鳥、妖怪と敬意なんだか悪口なんだかわからない形容をされてきた大名人も、65を超えてから順位戦で苦戦が増えてきた。
かねてより陥落したら引退と公言していたが、大山から将棋がなくなることは、死に等しいと思っていただいて構わない。
■死を覚悟する将棋
そんな中、67歳の時に青野と負けたほうが落ちるという将棋を指した。負けたら死という背水の陣で、大山は序盤に大悪手を指す。野球に例えるなら一回表に8失点で、並の棋士なら投げてしまうところを不屈のド根性で一点ずつ返し、ついに9回に追いつく。が、後続が倒れツーアウトランナーなしまで追い込まれてしまう。
■人間は必ず間違える
そこで指した一手が、椅子から転げ落ちるような一手なのだ。命がかかった将棋で、なんと大山はバットを上下逆に持って打席に入る。それを見た青野は精神失調を起こし、ついには押し出しをしてしまうのである。
大山はヤケになったわけではない。こうすれば必ず青野は間違えるという確信があった。生まれ落ちて70年余り、こうやって勝ってきたし、大山将棋こそが至高、最強なのだ、こんなところで死ぬわけにはいかない、そんな凄まじい執念が溢れ出ている。以下に名文を載せるので、是非見ていただきたい。
■終わりに
いかがだっただろうか。私はこの将棋が好きすぎて、関連記事をあと1000個くらい知っているが割愛した。
今でもこの手を見ると涙が出そうなほどの感動を覚える。声なき声を発し、見るものの魂をこれほど揺さぶる将棋はないだろう。
大山将棋にヒットはいらない、緊張しているルーキーのところに、わざとボテボテのゴロを打つ、それこそが最強であり、それができたのはこの大山ただ一人である