【棋王戦】あっぱれ羽生善治

羽生が棋王戦で伊藤匠に勝った。
私は藤井が佐藤天彦に、伊藤が羽生に勝ち、新世代頂上決戦になると見ていたが、とんだ見当違いであった。

羽生はここで勝てたことで、棋士寿命を大きく伸ばせたのではないかと思う。
理由は2つあり、一つは相手が伊藤だということだ。
将棋指しは下の世代に抜かれたらもう抜き返すことはできない。
伊藤は藤井より若いくらいなので、ここで羽生が負けたら完全に世代交代するところであった。

二つ目は、勝ち方である。
苦しい将棋を妖しい手でミスを誘い、逆転勝ちした。
終始優勢な圧勝であれば、伊藤も自分の作戦がまずすぎたと割り切って、ダメージが残らない。
序盤でリードしていた将棋をひっくり返されたからこそ、悔いが残るし、次回もまた羽生に騙されるのではないかとコンプレックスが植え付けられる。

まさに大山流の、人間の弱さを徹底的に浮き彫りにする勝ち方であり、羽生の真骨頂が戻ってきた。
10代の羽生は連戦連勝だったが、いつも序盤に不利になり、終盤でひっくり返していた。
終盤が正確無比というのもあるが、相手を間違えさせる大山、米長型の天賦の才があったのだ。
相手を間違えさせれば何年経っても勝ち続けられるので、伊藤という若武者にこの勝ち方ができるなら、ほぼ誰にでも通用するだろう。

敗者復活戦からあの五冠王さえ戻ってこなければ、羽生の棋王戦挑戦は固そうである。

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