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実用的な青い保湿ハンドバウムを作る。
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こんちゃこんちゃ、正月ですね。
青の魔術師ことエフゲニーマエダでお送りいたします。
さて、毎年この時期に冬の肌荒れや乾燥肌を抑えるために数点の材料でつくれる簡単なスキンケアアイテムをセルフメイドしてるんですが、、、
昨年作ったワセリンベースver.01をやっっっと使い切れました!
30mLサイズ!やっと使い切れた!ようやく次いける!!
この人ドケチすぎて塗布の仕方がものすごい薄かったらしく、消費速度がとてつもなく遅かったんですよね。
(とはいっても早秋頃に余ったのを継ぎ足したりもしてはいたんですが…)
で、去る11月ごろに男友達から
「そのハンドクリーム花臭すぎて俺は好きじゃないわー!」
とコメントをいただけて、次なるver.02の反省点をいただけたのです!ありがたいことです。
アキレア精油独特の香りを紛らわせるために香り強いイランイランとラベンダーで賦香してましたからね…。
だもんで、次なるver.02のテーマは香りを極力抑えて実用性を増した?レシピにアレンジメントすることにしたのでーす!
ワセリンを母材・基材とすることのアレコレ
香りの評価はさておいて、ver.01実際の使用感はワセリンベースなので肌温度ですぐに馴染んでくれるのでとても扱いやすいのです。
ここはワセリンを母材としている何よりの恩恵でしょう。
アキレア精油の人体実験(n=1ェ-…)も兼ねてやってたのですが、このところも目立った反応はなし。かゆみを抑えられてるかどうかも対照実験を行ってないので「かゆみはない」としか言えない状況なのです…笑
しかし、ダラダラネットサーフィンをしていたところ、市販薬局で買えるこの「白色ワセリン」もスキンケア素材としては万能ではないことを、ついこないだ学びました。
『 ワセリン 』は病院でもよく使う” 万 能 保 湿 剤 "
— なみ🍆ナース (@namins_27) November 26, 2024
特にこれからの季節は大活躍間違いなし。原料が石油だから「 危ないんじゃない? 」って声も聞くけど、" 天然由来 "の成分で不純物を取り除いているから赤ちゃんからお年寄りまで使えて安心なんだけど、看護師15年目の私が気をつけて欲しい事は pic.twitter.com/1Nd63JDssn
水仕事によるアレルギー疑惑患部へピンポイント使用してしまっているので、各精油の効能をみるためにもワセリンの感作リスクは極力落としておきたい…なので次からはプロペトorサンホワイトをチョイスしてみることにします。
キャリアオイル:スクワランについてのアレコレ
精油を溶かし込むキャリアオイルについても考えてみたのですが、鼻が冴えてる人だと、いくら化粧用のキャリアオイルといえどごくわずかに植物油の香りをキャッチしてしまう難点があったりします。
これと精油の素晴らしい芳香とが混ざっちゃうと…もう、なんだかねぇ。
それに、植物油独特の匂いを発している原因は主に油の酸化。
ローズヒップやスイートアーモンドなど数多くの植物油は酸化によって気になる匂いを発してしまうようになるんですが、さらに難癖なのがキャリアオイルの酸化した高分子は芳香精油に比べて、より長時間皮膚上に残って匂いを発し続けるという化学的特性が。(植物精油は低分子なのですぐに香りが飛散する)
これは分子サイズゆえの問題でもあったり…
植物油の美容成分を取るか、実用性を取るかは個人の采配次第にはなってしまいますが。
話戻すと、キャリアオイル/植物油によっては、北海道のごく低温環境で固化してしまう難点もあったりしまして。
ちゅーことで、今回は思い切ってキャリアオイルを肌なじみよく抗酸化力も強いスクワランに変えてみることにしたのです!(グリセリンも選択肢にあった)
実際のところ、植物油キャリアオイルに比べて使用感が圧倒的にサラサラで、この点高く個人評価しています。
しっかしスクワラン(スクワレンは水素添加前・製品加工前の状態/物質名)
サラサラしていて肌馴染みのよい保湿油このスクワランも細かく種類があるのです。
すごい大雑把に説明すると、オリーブやサトウキビから精製した植物性由来スクワランと、サメ肝油から精製した動物性由来スクワランの2種が存在しているようなのです。
個人的に何が気になったかというと、やはりワセリンと同じく肌への感作性。
植物から抽出精製したスクワランに比べ、相手は魚類いえど人間と同じ動物から抽出したスクワランの方が感作性は低いら・し・い・のです。
とかいって、今回は余ってる応急保湿用に作り変えた無印の植物オリーブスクワランをキャリアオイル役として投入します。
●今作の材料たち!
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全体的にはこんな感じです!(ワセリンだけもう加温態勢に入っていたので仲間入りできず…)
シアバターなど植物バターは今回使っていません!
サラサラな使用感と保湿力重視でいきたいのでこのような打線になってます。
全容量:ケース容量は30mL分です。
グラムにすると材料次第で重さ変わっちゃうからね…あくまで容積では30ml表記です。頑張って早く使い切ろ…
母材/ベース材はそのへんの薬局で買える白色ワセリン。
ごくわずかなので使い切りたくもありました!
北海道は寒いのでやはり使用時肌温度でやわらかくなってくれて、植物バターや植物油のようにベタつかず肌馴染みがよい保湿素材としても優先的にワセリンをチョイスしています。
しかし低温度でも液質なキャリアオイル(スクワラン)や精油をワセリンに混ぜると、その分ユルくなってしまうので、融ける温度をわずかに上げるためにも精製ミツロウを使いました。
あくまでバウムとして形を保たせる目的で、あとは水洗いでもそう簡単に落ちないタフな保湿剤(閉鎖材)としての役割もあります。
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キャリアオイルに関しては入れる意味あるの?とか思ってたりもしますが、すごいサラサラで急ぎの時や風呂上がりに使い勝手の良かったスクワランを用いています。(精油成分を効率的に肌に通すらしい…?)
もうすでに青いじゃねぇか!
すいません、先月ごろいよいよ残り20ml程度になったところでアキレア精油を2滴ほどぶち込んでしまい、こんな色合いになってしまっています。
次はさらなる肌馴染みのためにサメ肝油スクワランを買います。
実験の主役、化粧品着色剤ことアキレア精油。
これはおいらが北海道で生産している、まさに国産・北海道産のセイヨウノコギリソウ精油ですね。いわゆるヤロウブルー精油。
今年はVarsion up?していて、カマズレン:青色の濃度が上がっています!
ということは今までのようなツヨン的癖ある香りが薄くなっている、ということも意味しています。
(いままでは比較的青色が薄くてハーバルな香りが強かったんですよね…)
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賦香用の精油!
ゲラニオールの塊ことパルマロザ精油と、リナロールの塊ことローズウッド精油の2本でっす!
香り強度的にはパロマロザの方が強い(わずかにシトラールを含んでいるため)ですが、ほぼリナロールであるローズウッド精油は弱香ながらもウッディと取れるまろやかな香りと若干のフローラルアロマも兼ね備えているので、この2者をバランスよく組んでいきます。
期待できる薬効としては、肌トラブルに聞くと名高いゲラニオール/パルマロザ油をまず選定。
これ販売者によって香りがシトラス刺激臭キツかったりするのですが、香りが穏やかでレモンティーを思わせる芳香のあるeaseアロマのを使いました!(ロットによって全然変わるかも)
ローズウッドのリナロールに関しては、完全にリラックスアロマ重視で打線に加えました!
リナロールのおもしろい効果として、単体では香りは薄く効果も低いんですが、他の香りとブレンドして吸入することによって副交感神経が効率的に励起されるんだそうなhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/52/2/52_112/_pdf
●作り方はごく簡単!
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この時期限定ですが、事前にストーブ熱でワセリンを液化しておきます。
スプーンやバターナイフでこそぎとると後処理がめんどいから…という理由です。
40℃手前くらいで溶けてくれるのであまり高温にしないように気をつけましょう。
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今回使用する精製ミツロウはこのくらい!
完成後のテスト使用であまりに形崩れ起こしやすかったらミツロウを足してあげてもよいかもしれません。
ミツロウにはトコフェロルなどが入っていない透明な精製ミツロウと、ミツバチの巣から採ったままで黄色いミツロウの2タイプが存在します。
大きな違いは美容成分であるポリフェノールや抗酸化成分の有無。
特にトコフェロールことビタミンEの恩恵が大きいと言われていますね。
で、ストーブ熱で液体に戻しておいたワセリンをケースに流し込み、ミツロウを混ぜて溶かします。
ミツロウは70℃あたりで溶けるのでやや時間がかかりますが、根気よく加温しつつ混ぜます。
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おんで次に香り材料であるキャリアオイル役のスクワランと精油たち。
肌馴染みを考えてスクワラン→7,8滴ほど
パルマロザ精油→1滴(物足りなければ後に追加)
ローズウッド精油→13滴
としました。
精油らを加えると部分的に冷えて母材が一気に固化してしまうので、加温しながらの添加と攪拌をオススメします。
おまけに熱で精油の強い香り(刺激部分)も若干飛ばせるのでオススメです。
トップノート性質で美しい香りを持っているラベンダーや柑橘類精油はこのパターンはオススメしません、香りを損ねる可能性が高いです。
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さてさてラストにお待ちかねの北海道産アキレア精油を投入。いわゆるのヤロウ精油。
皆さんはAEAJ(日本アロマ環境協会)の適合精油を使いましょう、高いけど。
今作は控えめに4滴ですが、すんごい着色能だ…!
過去作では青色の濃度が低かったために、色味を上げるために結構な量を投入していたのですが、かえってアキレア精油のクセある香りを強くしてしまう反面も。。。
しかし2024年度の蒸留抽出において涙ぐましい努力のおかげでアキレア精油の青色濃度を上げることに成功。なのでそこまで賦香精油の香りを害するものではなくなったハズです…!
蒸留技術のためにラテン語派:フランス語の勉強のありがたみを思い知る…!!(nouvelle technique de distillee)
▶︎1.使用感!
非常に軽やかでネガティブな感触はいまのところないです!
調整なしの初回ではやや柔すぎか?ミツロウ足す?とも改善の余地がみられたり。このままのレシピだと気温の上がる夏間が心配だなぁ…とも。
▶︎2.見た目!
上の写真では冷えて固化する前に撮ったものなのですが、固まっても群青色?を保っているようです。
ヘタにカマズレン濃度の薄いジャーマンカモミール精油などを用いてグレーグリーン色に変色してたりなどのリスクはなさそうです。さすがはアキレア精油…!!
▶︎3.調香評価!
なんかアキレアとパルマロザのグリーンノートな香りが妙に混ざり合ってますね。
10滴あまり投入したローズウッド精油はやはり個性を主張しきらない、縁の下の香り支えに回っているようでした!
ローズウッドの香りやはり押し負けてしまったか…
Add. アズレン配合青い薬用塗り薬はアズレンの消費想定期間内に変色を起こし、回収されている件。
カマズレンとは抽出対象が異なる結晶質プロアズレンの一つグアイアズレンから作られる水溶性アズレンを0.033%配合したアズノールという青い薬局処方塗り薬をご存知でしょうか?
これ国内でのアズレン利用例だと知っていろいろ情報を追っていたのですが、ちょうど調べはじめた去年ごろから回収騒ぎが起こりはじめたのです。
アズノール軟膏が長期安定性試験で回収になった件、なぜ私が腑に落ちないのかというと「2年目に定量値が規格値を下回ることぐらい予想できただろ」ということですね
— すん@製薬工場勤務 (@shin_gmp) October 11, 2023
以下少し専門的な解説です… https://t.co/eNRst4XKhv pic.twitter.com/EUdKgceruD
詳細はよくわかってないのですが、1つの懸念としてアズレンの紫外線劣化があるのかなぁ?と。アルミ容器に閉ざされたチューブ製品はマシで、光を透過しそうなプラボトル入りのだけ回収されてる模様。
ごく最近、カマズレン関連でこんな応用的論文もみっけてるのですよ。
光、とくに紫外線の照射を受けると光合成反応が起こってカマズレン分子が形を変え、青色をしていた製品の外見色も変わってしまうという問題が発生するのですね。
実はセルフ実験でもこの陽光劣化検証をやってました。
上記論文はその詳しいデータ分析を行い、さらに一般的な抗酸化成分と共存を測るとどう変化するか?と調べたもの。ごく半年前に発表された最新のカマズレン研究ですね。(おいらのはただ太陽光に当てただけ)
植物の1有用成分をとって調べてみると、まだまだわかっていない領域が広大に広がってるんだなぁ〜と人生の楽しさを味わえる場面でした!
(急に素人感)
〜関連記事リンク〜
ローズウッド油の90%を構成するリナロールについて。
パルマロザ油の7~80%を構成するゲラニオールについて。
分子単体では国内文献はないが、特にカマズレンの情報について参照されたい。
セイヨウノコギリソウエキスもとい植物抽出エキスの課題点が、同じ植物でもエキスを構成する化学成分が産地や個体レベルによって大差が出てしまう点。なので原材料の安全性によらず、成分ひとつひとつの薬理作用を把握することが現状求められるようです。
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