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山登りしたエフゲニーマエダの視点。⑧

前回のイワオ登山からおーよそ1ヶ月経ったほどでしょうか?
ちゃんと1月おきには登山してるおいら偉いですね。
そんな高頻度で登ってると、徐々に近郊山の未知エリア冒険感が薄れてきてるのが否めない昨今でっす。(正直者)

この頃、人の登山誘い1本目を拒否ってしかいないなぁ…と申し訳程度に懺悔するエフゲニーマエダ。
11月末に恵庭岳に誘われたのを拒否って塩谷丸山(小樽・余市寄り)に。
そして今回羊蹄山に誘われたのを拒否って銭函天狗(小樽・手稲寄り)に。

何か強力な安全装置(心理的な)が働いてると思うんですよ。笑
いや、いきなり何の前触れもなくメンタル的に"整い"が必要な山に登ろう!って前日に誘ってくる人間もどうかと思うのですよ。笑

人による山岳性の違いはさておいて…


今回、銭函天狗山(536m)は植物要素多めで!

今回は植物観察メイン・プラントハンティング要素強めでいきます!

というのも、、、

銭函天狗山の山容をGoogle Earthで。

こんなミドリミドリした、火山でもないジャングル山(個人的蔑称)だと、ほぼ常に緑の中森の中なので、もはや植物くらいしか見るものがないんですよ。。。

最近まとめたこのエフゲニーマエダと山シリーズを読まれた方ならおそらく気づくと思うんですが、コイツ火山ばかり登ってるんですよね。
だって①異世界だし②植物少なめで観察しやすいし③風通り良くて楽なんだもん!
普通のミドリミドリした山はあまりそそられないんですよね…。

”ジャングル山”は植物種もかなり多く全て紹介するのは面倒なので、この時期エフゲニーマエダ的に気になったものを数種ピックする感じで、銭函天狗山の植生特色として語っていこうかと思います。

中世の植物学者たちよろしく、植物と見つめ合いながらの登山いって参りましょう。。。

■気になった植物たち。- Symbolic botanicals-

キク科シオン属ノコンギク

おそらくノコンギク(Aster microcephalus var. ovatus)

登山口すぐそばでアスター(シオン属)発見!
アスターという呼び方はおそらく園芸業界特有の広義なシオン属植物の呼び方ですね。植物分類の世界だと、おそらくキク科全体を指すニュアンスになると思います。(詳しく後述)

こういった紫色の花が咲き始めると秋が始まった感がいよいよ否めなくなる昨今。
野山の植物を5年追いかけてきた身からすると、時期によって白花(初夏)→黄花(夏)→紫花(秋)といったシーズンごとの主として咲く花色の変化が感じられるようになりました。
ちなみにすぐそばにシロバナコンギク(Aster microcephalus)も居たよってこと記しときます。

余談なんですが、キク科植物のことをラテン語でアステラセアエと呼びます。アスターとはそのまんま星・スターを意味していて、星が輝いているような多数の花弁が特徴的な植物科だからなんすよね。
ちなみにアステラス製薬は何かキク科の植物成分研究とかしてるのかと思いきや全然関係ありませんでした。残念!

Name meaning Familia 'Asteraceae'

キク科アキノキリンソウ

花の構造はセイタカアワダチソウと瓜二つ
こじんまりとした1本枝のセイタカアワダチソウといったイメージ。小柄。

都市・平野部の外来種として有名な北米原産外来種のセイタカアワダチソウと同じアキノキリンソウ属の仲間。
この子が日本・東アジア固有種のアキノキリンソウ。
属名がそのまま種名になっている。細かく分類しなければ。

外来種のセイタカアワダチソウを小ぶりにしたような外見的にかなり近しい姿をしていて、この時期都合よく銭函天狗山の1合目あたりにセイタカがいてくれたので比較写真をお届けできる。
前回のイワオヌプリでもいくらかアキノキリンソウがいたのだけれど開花が進んではいなかったので撮っていなかった。

林内の小ぶりなセイタカアワダチソウ
房のように花が付くセイタカアワダチソウの花穂

まずこちらが山登りしない人にとっては見慣れているだろう北米外来種の方のアキノキリンソウ属セイタカアワダチソウ。
さすが大陸育ちの植物!といったところで、花穂が大きく、背も高い。
大陸で生き残るための進化戦略だろう。葉っぱはヤナギ葉のように細長い。

アキノキリンソウ全体像
葉っぱメイン

でこちらがアジア固有のアキノキリンソウ。
ほぼみんな草丈50cm以下くらいで背が低く、セイタカに比べて葉っぱが太め。どちらかというとヒマワリ属キクイモの葉に似るイメージ。
で花穂はラベンダーのように主茎1本にたくさんつく。
セイタカは花穂がめちゃめちゃ分枝しまくっているのでもはや房のようになっている。

低地・平野部のアキノキリンソウ属植物は俄然セイタカアワダチソウしか見られないんだけれど、野山に分け入るとやや暗く涼しい環境が都合良いのかアキノキリンソウが見られるようになる。山の中ではセイタカアワダチソウはほぼ生えない。
銭函天狗山では2合目あたりから8合目あたりまでの薄暗い林内でアキノキリンソウが見られた。

シソ科カワミドリ

葉っぱにはソレっぽい芳香、シソ科ミントっぽさを醸すラベンダーのような花穂。

9合目の岩山下でコイツと邂逅した時は武者震いがした。もしや野生のエゾハッカとついにご対面か…!?と。
まさしくシソ科と言わんばかりのピンクパープルな花色ラベンダーのような集合花序、これはもう匂いを嗅ぐしかない…と。シソ科の見立てはアタリだった。

フラワートップ
茎はしっかり四角柱状
花冠と全体像

しかし正解はシソ科カワミドリ属カワミドリであった。
葉っぱを揉んでの匂いもメントール感はさほど強くなく、歯磨き粉的な甘い香りと美味しく澄んだ香りだった。
花はさらに妙な不快臭がして葉っぱの方がマシな香り。

西洋圏においての通称"アニスヒソップ"はこのカワミドリがもつ香りや姿に準じて付けられてる俗称だけれど、分類学的に当のヒソップはヤナギハッカ属に分類されているので比較的遠い植物。
カワミドリ属のこの1種だけ東アジアにカワミドリとして生育する。
他種はみんな北米にいるらしく、アリューシャン列島経由での氷河残留種なのだろう。

銭函天狗山での個体数的には珍しい植物の部類らしく、登山道沿いでも9合目の一箇所でしか見られなかった。
エフゲニーマエダはラベンダーオタクなので、この日見た植物の好感度ランキングでいえば堂々の1位がこのカワミドリ!

調べてみると、当のニホンハッカ、エゾハッカは花の付く位置が主茎の葉柄わきであたかも脇芽のように付くのであり、ラベンダーなどのように立派な穂状花序を付けるのは別植物ということになる。

野生のハッカとほかシソ科植物との見分けについて

キキョウ科ツリガネニンジン

合わさった花弁の先端が星のようにキレイに反り返る

先月中ついにThe和の花!にふさわしいキキョウ苗を買ってしまっただけにキキョウの花の構造にはやや見慣れている昨今。
なのでこの淡く可憐でうつむいた花も見るやキキョウの何かしらだろうと見当つけて撮っておいた。

で調べてみるとキキョウ科はアタリでツリガネニンジン属ツリガネニンジン(Adenophora triphylla var. japonica)。
名前の通り、釣鐘のようにどの花も基本的にうつむいている。

9合目以上、山頂岩塊の風通しの良いトップらへんにちょこちょこ生えていた。割と高山植物的な生態を持つキキョウの仲間なんだろうと思う。


キンポウゲ科エゾノトリカブト

主に山頂付近(sea level 500m)に多かった
ヨモギの葉にソックリだが、個人的にはどちらかというとゼラニウム葉に似てる印象。

出ました!人殺せちゃうやつです。
いっつも思うんですが、登山の最中に万一ズッコケて「あ〜〜〜」とか言いつつ口の中にパクッと入っちゃったら普通に死ぬよねって登山中見るたびに思います。
それぐらいザラに生えてるんですよ。(7合目〜山頂までに分布)

エフゲニーマエダ的に似ている!と思う植物種の葉っぱは
・ゼラニウム・オオヨモギ・野いちごが挙がる。
が、慣れればそれぞれ見分けは簡単で、まず園芸種ゼラニウムが野山に咲くことは無い。在来種のゼラニウム属ゲンノショウコは山には生えないし、野いちごは這性で成長してイチゴみたいな小さい果実がなる。
問題はヨモギとの見分けで、春の若いうちは背丈ともに似てるんだけれど、時期が進むとヨモギは主茎がまっすぐ上に伸びていく。
トリカブトはキク科ではないのでそこまで太く丈夫な主茎にはならず、ミツバっぽいような育ち方をしていく。秋に花が付けば確実、だろう!

トリカブトとの見分けについて

トネリコ属アオダモ

中心の新芽が赤黒い包で覆われているのがアオダモの特徴①。
美しく可愛らしい葉っぱが羽状奇数・5枚ないし7枚で出るのがアオダモの特徴②。
さらに10枚12枚となるとヤチダモ、ナナカマド、栗、ニワウルシなどと同定されていく。

林業経験者目線でコイツが小樽の山の中に居たことにはすっっっげえ驚いた!
というのも、アオダモはその成長の遅さから作り出される堅く粘りのある木材の高級さはもちろんのこと、道東や道南の日高・安平などの小雪地域かつ火山灰土でしかろくに育たないと思っていた。
けどそれなりに雪が降り積もる地域である小樽の山の中でこれでもかといわんばかりにわんさかアオダモ稚樹が繁茂していたのにはかなり驚かされた!

樹皮に着生する藻類で独特なシマシマ模様が出るのがアオダモの特徴③

稚樹がいればすぐまわりに親木がいるハズということで見回してみるといたいた、特徴的な樹皮のアオダモが!
ここまで特徴的な着生藻の描くシマシマ班模様な樹木はそうそう居らず、ヤマモミジ(Acer palmatum.)かホオノキ(Magnolia obovata)くらい。

アオダモの成長速度はかーなり遅いらしく、ここまでの太さに成長するのにも40年くらいはかかっているのだとか。

急傾斜面での根株に溜まる砂利土にモサモサと群落を作っている

銭函天狗山でのアオダモの分布は登山道初頭(2合目)〜中盤の沢地くらいかと思いきや、馬の背道はもちろん山頂付近の小高い岩山の手前付近(9合目)までと山体に広く分布生育していた。
一方でアオダモの大木は登山道沿いではそこまで見かけず、下層植生の木本類でかなり多く見られることから、なかなか高密度なアオダモ山へと変貌を遂げている変遷の最中といった植物学的見立てをした!

上の写真でもなんだけれど、エフゲニーマエダの植物常識でアオダモは道東や道南などの水はけのいい火山灰土壌で、なおかつ小雪であるほど真っ直ぐ堅く締まって良質なアオダモ材を産すると学んでいる。(野球のバットで最高グレードの材質らしい)
意外性の話、小樽らへんは特段火山地帯ではないものの地質年代が比較的古いのかヒビ入りまくりでボロボロ崩れやすい岩石質。
なので7,8合目あたりの急斜面では砂利道となっていて、そこでアオダモの稚樹がたくさん生えてたんですよ。(上記写真)
なのでよほどアオダモにとって都合のいい土壌を作り出してるんだなぁーと思った次第でした!

■変わったシダ

イワガネソウ?(Coniogramme japonica?)

見た感フツーの草本か羽状奇数の稚樹の葉っぱなのだが…

シダ植物は未踏領域なだけにすげー頑張って調べてみた結果、ホウライシダ科イワガネゼンマイ属のイワガネソウか?というところまで辿り着いた!
もう一つ怪しいのがイワガネソウと雑種を作ることができる近縁種のイワガネゼンマイ(Coniogramme intermedia Hieron.)

まったくギザギザに裂けることなく全縁鋸歯でこんなにバカでかい葉っぱのシダは正直はじめて見た。。。
というかここまで花を咲かせ実をつける普通の草本植物に見た目ソックリなシダなんて存在しているのかよっていう驚きがまず大きい…。

茶色に染まっている幾本もの線がシダ植物の証である胞子嚢

見た目は普通のそこらへんにいるササとか稚樹に見えるけど葉っぱを裏返すとほら!シダの証拠である胞子嚢が並んでいた!
…とはいっても普通のシダのようにわかりやすくボタンのように固まってるのではなくめちゃ緻密に葉脈に沿って並んでいるものだから、これが泥汚れだったりしたらもう見分けがつかない。
(どうやらこの胞子嚢のつき方がイワガネゼンマイ属の特徴らしい)

一般人が思う、普通のシダたち

シダって普通この写真のように、被子植物にはなく規則正しく生えるジュラシックな印象と、ワラビとかノコギリソウみたいにすげー細かくギザギザしているものだというのが常識だったので…
まぁ植物はウン億年の進化史があるのだから動物以上に様々なパターンがあるのもまぁ当然かーと思いつつ。。。

枝?葉?がところによって対生だったり互生だったり…

めちゃくちゃ互生に枝分かれしていてどこからが1枚の葉っぱなのかがわからない、、、
シダって基本シンメトリーに規則正しいデザインをしているイメージ。

根元のようす。輪生している様子はみられない。

シダって6本とか複数本がキレイな円・サークルを描くように地面から生えてるイメージなんですが、このシダは本当に普通の被子植物に擬態するのが上手いと思う。
輪生している様子がなく、それぞれ1本で独立して地面から生えてるように見える。胞子嚢がなかったらもうただの被子植物じゃん…

イワガネソウの見分け参考サイト
http://pteris.la.coocan.jp/study/23/iwaganezenmai.html
https://matsue-hana.com/sida/sidaha.html

主にここ使ったよ

コタニワタリ?(Asplenium scolopendrium L.?)

わりと規則正しく弓状に生育している

またバナナの葉っぱみたいな変わったシダをみっけた。
おそらくのチャセンシダ科チャセンシダ属コタニワタリかな?と思うシダ。

ぱっと見、上のイワガネソウと同じに見えるけど今度のは茎の根元(葉柄?)に茶色の毛が生えている。そして、、、

歯を裏返すとシダ植物のいわば印籠である胞子嚢がはっきりと並んでいる。
シダ植物は恐らく①葉っぱの形②胞子嚢のつき方を見れば大抵は見分けることが可能だと思う。花が咲かない分大変だけど…

■景色とか。

約9合目からの景色

「死座」と銘打った写真なんですが、9号目付近になると左っ側がえげつない崖のフチを歩く道になります。((ヒョエ!
ずっこけて左に倒れたらマジで100,200mくらいは落っこちていくような崖なんですよ。

そして写真ド真正面に見える白っぽい岩塊の小高い山が山頂方向。
小樽積丹エリアの山って古い火山岩質なので、山の突端が基本的にガリガリと劣化した岩塊になってるんですよね。
おまけに岩のヒビ入る、割れる方向も揃うんですよ。ふっしぎぃ〜。

個人的に好きな1枚。
スレートのような割れ方をした岩が多数。火山岩の証。堆積岩でもあるのだけれど…
どの岩を見ても四角く割れる性質のある岩石質

さらに歩みを進めると、スレートのような劈開(割れ方の法則性)を持った岩がゴロゴロしてるエリアに到着。
このあたりでやっと地質学者の気質を持つおいら的には山を楽しめるようになってくる…。

最後のパートとして岩山がドスッと現れる

(見えにくいですが)そして50mくらいはあろうかという崖・岩塊が出現。この上に山頂がある。山がそう言っている…
岩登りは降りる時のこと思うと好きじゃないんだけどなぁーとか思いつつ。

実際はクライミングなんかせずこの裏面に回り、ゆるく登っていく感じです。ご安心を!

山頂(536m)付近での一枚

石狩平野と空の青が美しかったのでパシャり。
というのも、ジャングル山なので9合目〜山頂エリアでしか見晴らしがよくないんですよねぇ…
標高は低めなんですけど、目の前の景色がほぼ海抜10~20m以下の平野部なので高く見えちゃう不思議。
もうちょっとオーシャンビューが欲しかったところだけど、どちらかというとプレーンビュー(石狩平野を存分に味わえるw)

山頂は札幌よりもむしろ手稲山(1023m)がよく見える

とりあえず山頂をパシャり。ここらへんは岩塊のトップといったようなエリアで、平らで山の上ランチなどできる場所が少なかった。
手稲山が目の前に見える眺望なのだけれど、こちらは約500mであちらはその2倍1000mの頂。
アンテナがたくさん生えてる山頂まではスキー場となっていて、昨冬シーズンはいろんな人とめっちゃ遊んできた。楽しかった。
俺らは¥4400/日払って標高1000mで疲れる事なく一日中遊んでたのかと思うと何か感慨深い…

毎度のお楽しみ、山の上コーヒー!

今回も抜かりなく山の上コーヒーを楽しんできました!
豆はグアテマラの何らかしらの中深煎りですね。

グラムをやや少なめ(18gほど)にしてペーパーで早め抽出するとフローラルな、フラワー感ある香りが楽しめるようになったおいらです。笑
最近アロマオイルの官能評価ばっかやってるからかなぁ。


総評!(登山好きの人はとりまここ見て!笑)

銭函天狗山の歩行的レビューをなかなか書くタイミングがなかったので特設的にここでまとめちゃうんですが、、、
登山口〜5合目までは鬱蒼とした林内〜沢駆け上がりといった形で、5〜7合目までは山の稜線を伝う感じ。
で、7、8合目がまさかの砂利道&ロープ出現レベルの急登。笑
ここでかなり体力を持っていかれた知らなかった。
あとは9合目から所々見晴らしのよい山頂丘ともいえるような緩傾斜道が山頂まで続く感じ。あと道の横が高い崖。笑

友人の登山好きお姉さんからも先に話を聞いていたけど、休日の空いた午前or午後でお手軽に1時間弱で登れるようなお山だという評価。
しかし若者連中からしたら急登で一気に体力振り絞ってのそのタイムなのかもしれない説(笑)

今回海が見えるからと誘われて渋々応じた山だったので、海が見えなきゃご褒美には見合ってなかったと思う登山でした!笑
もう一度言いますが、植物観察マニアからしたら努力を要する急登ポイントは4合目沢の上辺7,8合目の砂利道急登!

ということでアディオス!


若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。