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ラベンダーたちの現地名と分類名。

いやはや、2024年新年早々に北陸地方では大変なことになっていて
全く落ち着けない年始となってしまってる元旦本日。。。
最大震度7(倒壊と火災被害)と津波も合わせて
令和6年能登半島地震と命名されるまでの震災に拡大してしまっています。
被災地域みなさまの無事と、一刻も早い事態の収束を祈ります。

農作業・庭作業、蒸留などなど…自然仕事に生活の重きを置いているためか、12/31〜1/1が新年!心機一転!
というよりかは、農業計画を見直して新たに進めて行く4/1の方がニューイヤー!なイメージが強いエフゲニーマエダです。

さて本日は久々にラベンダー文化にまつわる思いつきを記事にしてみます、みました。

分類学名が設けられる前の時代は固有名称を探す。

そもそも学問の発展の歴史を見ていくと、「植物種」をアカデミーの世界で研究しやすく分類整理を行い、ほぼ現在の動植物図鑑のような体系を大成させたのは1700年代カール・フォン・リンネによるとされます。

いわゆる動植物はHomo sapiensLavandula angustifoliaなど、それぞれ生物種ごとにラテン語の苗字と名前(属名と種名)を持たされるようになったのです。

二名法ルール 〜 属名+固有の特徴をラテン語表記。
例.Lavandula(ラベンダー属の) +latifolia(広い葉っぱ)
Lavandula +angustifolia(狭い葉っぱ)
Lavandula +dentata(歯形)
Lavandula +canariensis(カナリア諸島の)

リンネ式命名法をラベンダー属植物で解説

しかし、リンネの二名法以前の文献などで特定の植物などを探すとなると、そう簡単にはいかなくなります。
確かに1700年代以降の動植物は種名が体系的に整理され、誰しもが目的の生物種について調べやすくなりました。 おかげで博物学や生物学、化学や医学の発展が早まったといっても過言ではないハズです。

しかしリンネ氏による分類以前の時期にも当然同一の生物種は存在しているのですが、和名と英名のように個々の植物名称が地域、文化圏、民族レベルで異なる状況となるのです。

“ラベンダー”では何を指すかアバウトすぎる問題。

そもそもの属名であるラベンダー:Lavenderは、ラベンダー植物の利用文化が始まったローマ時代に設けられたLavare(洗うの意味)から由来していることは有名ですよね。

少なくともローマ時代にはストエカスとヒロハがラベンダーの仲間で括られ、エジプトのクレオパトラ妃によるカエサルの誘惑で使われたラベンダー香材〜恐らくのデンタータラベンダーかレースラベンダーが仲間に含められました。

そして現代ではアロマや香水などフレグランス産業で最も利用されるコモンラベンダー(L. angustifolia)ですが、文化史としてはかなり後の時代に利用が始まったラベンダー種であり、現在ではラベンダー属を象徴する植物種となるなど、大きな変遷がありました。

という事あって、ラベンダー属植物の歴史と文化を誰でも深掘りしやすくするために有名どころのラベンダーをサクッと調べてみました!

●ストエカスラベンダー

花穂頂端の苞葉が大きく発達し偽花となっているのが特徴であり
仏語名の由来であるストエカスラベンダーの花穂(北海道札幌市の公園温室内にて撮影)

日本の園芸市場では関東以南エリアにおいて、もはやこのストエカスラベンダーこそがコモンラベンダーの名にふさわしいのでは?とすら思うばかりの、園芸=ラベンダーのイメージを年々強めているラベンダーの一種になります。

そもそもの現・ラベンダー属植物の利用文化史としては、おそらくヒロハラベンダーとともに最古の文献に登場するラベンダー属植物になります。
最古の薬学書ともいわれる、西暦50年ごろに書かれたDe Materia Medica(ディオコリデス著)にしっかりと”СТОИХАС”(ギリシャ語)の名で登場しているのが確かめられます。

フランス現地での名前は”La lavande papillon”。
直訳すると蝶々ラベンダー。

“papillon”はパピロンではなく小型犬の犬種にもあるパピヨン(フランス語)。
犬種パピヨンと同じ「蝶々」の意味と特徴を持っているのでストエカスラベンダーはフランス現地ではこう呼ばれているようです。
日本ではストエカス、フランスではパピヨンとなります。


●ヒロハラベンダー/スパイクラベンダー

このヒロハラベンダーも最古の薬学書De Materia Medicaに記載されているとされているラベンダー植物です。

フランス現地での名前は”La lavande aspic”

このAspicという名前については1ヶ月ほど前にヒロハラベンダーの花言葉という記事で触れたのですが、アスプクサリヘビという南ヨーロッパに生息する毒蛇がこのヒロハラベンダーの株下を棲処としていたことが由来となっているようです。
(故にラベンダーの花言葉に「不信」が与えられるきっかけとなった)


●コモンラベンダー/イングリッシュラベンダー

1950年代に野生個体群より品種選抜されたとされるフランス品種'Maillette'

現代ではラベンダー属植物の象徴的な本種Lavandula angustifoliaですが、ラベンダー植物が記載さている最古の薬学書De Materia Medicaには登場していないとされています。
考えられる理由としては、コモンラベンダーは高山植物の類であり生育地が平均1000m以上の高山であったことから生育地が文明地から遠くあまり人目につかなかった事が予想できるのです。
また、開花期も他のラベンダーに比べて7月からの半月ほどしかない短さなので、植物の特徴的な部位である花がなかなか人目につかない状況であったためと思われるのです。

コモンラベンダーの現地名についてはあまり一般的な名前ではないので探すのにやや苦労しましたが、コモンラベンダーにもしっかりフランス現地での固有名称が存在していました。

フランス書籍の自然図鑑”CUISINER LES PLANTES DE MONTAGNE”ラベンダーページより引用。
仏語書籍ではしっかりVRAIE表記で記載されている。
エフゲニーマエダは本著にて初めてVraieの語を知った。

フランス現地での名前は”La lavande vraie”

vraieはヴレと発音するようで、vraieは「本当の、真実の」というフランス語であり英語のtrueと同義になります。
コモンラベンダーのかつての学名(synonym)であるlavender vera(ラテン語)から転じた名前と予想されます。
フランス・現地資料において”lavande vraie”と探索するとコモンラベンダー/L. angustifolia と指定して詳細に調べる事ができそうです。

【誤解されそうな語まとめ】
Lavande Fine 〜フィーヌと呼び、高標高地で育ったより香りの良い栽培種・野生種双方をこう呼ぶため「生物種L.angustifolia」を指す語ではない。
Lavande sauvage 〜ソヴァージュは野生種にあてられる語だが、これだけでは「生物種L.angustifolia」だけを指す語にはならない。

●デンタータラベンダー

デンタータラベンダーの園芸品種’モネ’(自宅庭にて)

このデンタータラベンダーはやや特殊な扱いを受けているラベンダー種だと思っています。

フランスの論文よりラベンダー属の分類状況(部分掲載)

21世紀現在での分類では、デンタータ節としてラバンデュラ節やストエカス節より独立分類されています。現在ではデンタータ節には2種登録されており、古くはストエカスの一種とされていました。
しかしながらラヴァンデュラ節ヒロハラベンダーと交雑してL. x heterophylla種を産することができ、遺伝的にはストエカスラベンダーよりもラヴァンデュラ節に近いようなのです。
(※ストエカス種はストエカス節内の種としか交雑できない)

ラベンダー各種の原生地を示した地図
(フランス論文より引用)

しかしながら、原生地は現在のフランス国内には生育しておらず、スペイン南部アフリカ北部、はてはヨルダン中央部エチオピア地域などサハラ砂漠帯に近いエリアに生育するラベンダー種のようです。

フランス国内ではデンタータラベンダーは見られないため、フランス国内におけるデンタータラベンダーの利用文化史と、まつわる古い固有名称は存在しないラベンダー種となっています。

現代において、デンタータラベンダーの仏語名称はLa lavande dentéeまたはLa lavande frangéeと呼ばれているようです。
dentéeはdentalのラテン語dent(歯)がそのままフランス語に転じた単語がわかりやすく当てられており、固有の現地文化を示す名称などではないようです。
frangéeもフリンジ(飾り)のままです。
園芸品種として多数出回っていることにより園芸ラベンダーとして認知されているようです。

若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。