見出し画像

電話ができる iPod と、巨大化する嗜好品の話

以下の記事にて、スマホのスクリーンタイムを削減した話と、スマホそれ自体のコンパクト化を目指すに至るまでの過程を書いた。

第1編

第2編



本編はその続編だ。


iPhone SE 第1世代 (2016年)

早速 $30 の中古の iPhone SE 第1世代 (以下 "SE1") が届いた。めちゃくちゃ小さくて軽い。早速30分ほど充電し、初期設定を済ませるべくいじってみる。

しかし、初めての iOS に大苦戦。外付けHDDを直接繋いでファイルのやり取りができなかったりと、使い勝手も悪く閉口。

「電話以外は全部オマケ」と割り切って、標準装備のアプリも含めてガンガン削除し、通知も電話とメッセージ以外は全てオフ、メールの自動同期もオフと、シンプルさ優先で設定してみた。

2016年の端末で 2021年の iOS 15 を動かしている以上、スペック面の余力はあまり無さそうだ。そのため、できるだけ標準アプリで乗り切るべくトライする。

電話とメッセージはもちろん問題無し。マップは使いにくいが無いよりマシだ。カレンダーとメールは、個人と仕事の 2 アカウントを同期でき、機能はイマイチだが及第点。Safari というブラウザで Uber、Google Drive、Google Keep、Feedly、Chat GPT が使えた。

なんと、標準アプリだけで Pixel 6a の「オフライン登山地図」以外の全用途をカバーできてしまった。動作は意外なほどサクサクだ。

これには正直驚いた。

9年前の Android スマホなんて試すまでもなくポンコツだ。スマホは盛大に型落ちすると iPhone の独擅場になるという、新しい知見を得た。


電話ができる iPod

実は私はこれまで iPhone を所有したことは無かった。

しかし、この SE1 は「電話ができる iPod」として iPhone が生み出された当時の空気感を纏っていて、かなり好きなデザインだ。

前編のアテンションエコノミーの話も絡めて穿った見方をすれば、実用品として生まれたスマホは、どこかのタイミングで嗜好品として進化すべく方向転換したのだろう。

大きな画面、大容量バッテリー、鮮やかな描画力、瞬時に解除できる画面ロック、速い通信速度、柔軟なコネクティビティ…

全てはより多く注意を向けてもらい、より長く使ってもらい、より多くの広告に晒されてもらうため。

店頭に並ぶ大きくて美しいスマホたちは、異性の気を引くべく鮮やかな色の羽をまとい、より魅惑的な声で鳴くようになった鳥のようで、商品開発の世界における生存競争の過酷さを考えずにはいられない。

そして、実用品が嗜好品になると巨大化するというのも、また世の常なのだろうか。

昔、移動するための車は小さくて窓が大きく運転しやすかった。今は実用品の軽自動車と嗜好品の普通車に2極化し、普通車の方は年々大きくなっている。近年は道路の限界サイズに達し、車高を上げ始めた。ポケットの限界サイズに達し、ベゼルを削り始めたスマホと似ている。

時間を知るための腕時計は小さかった。今はケースサイズ 42mm以上が当たり前だ。嗜好品だから目立つ必要がある。もとい、最近は腕時計も通知を受信し始め、アテンションエコノミーのへと取り込まれているが。

こうやって、実用品として生まれたものが時を経て当初の目的を変化させてゆく過程に対し、昔からふわっとした嫌悪感がある。

理由はよくわからないが、価値観の奥深くに根ざした感情に違いない。


iPhone SE1, 即死する

そんなことを考えながら SE1 を日常生活に実戦投入したところ、ハプニングが起きた (笑)

今回買った中古端末は出品者の説明通り、バッテリーがかなり劣化している。電圧がとにかく不安定だ。

朝に車に乗り、カーナビ機能を使い始めて 5分でシャットダウン。その後もバッテリーは 40% と表示されているも、メッセージ入力中に突然シャットダウン。典型的な寿命が尽きたバッテリーの挙動だ。

気温がマイナス 10℃ と低めだったのも要因だろうが、冬の朝はだいたいこんな感じだ。これをメイン端末として使うには確実にバッテリー交換が必要。

しかし、今からこれに $30 を追加投入してバッテリーを買い、1時間かけてDIYで交換する気がおきない…。


iPhone SE 第3世代 (2022年) へ

手持ちの Pixel 6a と iPhone SE 第3世代 (以下 'SE3') のサポート期限を比べると、両者のOSアップデートの期限は 2027-2028年と大差ない。しかし、歴史的にApple製品は追加で2-3年間セキュリティアップデートを配信してきた。

発売から10年経った SE1 が (バッテリー交換さえすれば) 現在でも (最低限の用途なら) 快適に使えることを考えると、SE3 は途中1-2回バッテリーを交換すれば 2029年でも快適に、セキュリティ面も万全な状態で使えそうだ。

つまり追加の出費無しにスマホが小さくなるばかりか、次の買い替えのタイミングを大幅に先延ばしできるのだ。

というわけで、しばらくは SE1 で遊ぶつもりだったが、早々に SE3 へ乗り換え、Pixel 6a を売却することにした。


次回へ続く…。