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推しVTuber:天開司 #2

 VTuberを推していると、ちらほら見かける文言のひとつが「凸配信」。
 ご存じない方向けに説明すると、凸=突撃、つまり、アポなしでの突撃通話のことを指します。
 逆凸という文言もよく見ますが、これはそのままアポなしで相手から突撃通話がかかってくるかを待つ配信となります。

 凸配信も逆凸配信も(裏で実際にどういう打ち合わせになっているかは別として)、基本的には配信として成立するかという点でリスキーな内容となります。
 何故なら誰も電話に出てくれなかったら/誰からも電話がかかって来なかったら、その時点でコンテンツとしては終了だからです。
 そのVTuberさんの人脈を良くも悪くも可視化するものとも言えます。

 しかし、これらは通常、そのVTuberさん自身の通話先を知っている、つまり普段から交流のある友人間で行われます。
 もう少し広く範囲を取れば、同業者間で行われるのが通常なのです。
 それはそう。例えばリスナー凸配信などやれば、本当に誰から電話がかかってきてどんな話になるかが読めません。
 ハイリスク、しかもコンテンツとして成り立つかが分からない以上ローリターンの可能性大。

 私はそんなハイリスクローリターンになりかねない「リスナー逆凸配信」を過去に行った推しを2人知っています。
 その内のひとりが天開司さんでした。

 この記事ではそのリスナー逆凸配信、通称「つかサンタ」についてご紹介していきます!


つかサンタとは

 サンタ、と名打つだけあり、この配信は12月25日に行われたものです。
 概要としては「リスナーの不幸話を通話で聞いて、それを笑いに変えていく」というもの。

推しと通話で話すということ

 昨今のVTuber事情を鑑みれば、これは本当に異例の企画でした。
 何故なら最近は1on1という、チケット代を払って推しとお話しできるというイベントサービスが主流となっているからです。
 概要としては、イベントに出演している推しの時間帯のチケットを取れれば、3000円で1分間、推しと2人でお話ができるというもの。

 私個人はまず「推しに認知されたくない」という思考があり、次に「1分で3000円は高い!(相場としては1時間~1時間半の配信ライブチケット相当)」という思いもあって、こういったイベントに参加したことはありません。
 もちろん推しに直接伝えたいことがあって、イベントに参加されるファンの方もたくさんいると思います。
 イベントの良し悪しの話ではなく、あくまでも現在VTuber界隈で主流になっている形態と相場のお話です。

 この「つかサンタ」は、サービスを介して司さんに電話をかけ、取ってもらえれば用意した自分の不幸話ができるというもの。
 サービスを介することで司さんのプライバシーを担保しているのみで、リスナー側の費用はゼロ。
 しかも通話時間は平均5分。

 企画が行われたのが「2020年」「2021年」「2022年」の全3回なのですが、色々な要因が重なって成功に終わっている、本当に稀有な企画でした。

実際の配信

第1回:2020年

 第1回がこちら。2020年12月25日に配信されたものです。
 当時の司さんは「Mildom」という新しくできたプラットフォームの仕事も受けており、そちらでも同時配信を行っていました。

 全2時間の配信の中で、出演(?)した保証人(天開司のファン名称)の人数はなんと17人!
 しかも何故か異様に喋りが上手い!訓練され過ぎじゃないか?保証人たち……!

 コメント欄に簡易まとめでタイムテーブルを作成してくれているリスナーの方がいるので、参考までにそちらもどうぞ。

第2回:2021年

 第2回がこちら。2021年12月25日に配信されたものです。
 概要欄を見る限り、この年は他のプラットフォームで同時配信は行っていない模様。
 しかしこちらも同様のサービスを介してリスナー逆凸の形式で、たっぷり2時間配信されました。

 こちらに出演(?)した保証人の総数は14人!
 またまたリスナーの方がタイムテーブルを作成してくれているので、気になるものをつまみ食いしてもいいかもしれません。

第3回:2022年

 第3回がこちら。この年のみ2022年12月24日、クリスマスイブに配信が行われました。
 配信はなんと3時間、例年通り濃い内容の不幸話が集合しました。

 この年に出演(?)した保証人は全18人!
 こちらもタイムテーブルを作成してくれているリスナーの方がいます。何回でも言うけど訓練され過ぎじゃないか?

 2022年といえば、天開司主催私設リーグ「神域リーグ」が初開催された記念すべき年でした。
 つまり、クラファンをやった年も、ライブをやった年も、神域リーグの1回目が終わった年もつかサンタをやっていたことになります。
 これは本当に異例なことでした。

天開司の真髄

 とはいえ、つかサンタの内容やリスクとリターン、昨今の界隈の相場などを並べても、いまいち実感がわかない方もいると思います。
 私の実感に基づいて語っていることなので「他のVTuberだってやろうと思えばできるんじゃない?」と考える方だっていると思います。それはそう。

 ここからは私なりに、司さんだからできたことなのではないかということを振り返ってみます。

キャラクター「親戚の兄ちゃん」

 その強面な外見とは裏腹に、司さんのことを知っている人であればあるほど「誠実で真面目」そして「実に面倒見がいい」ということをよく知っているでしょう。
 この人、とにかく気のいい人です。
 配信中に叫ぶし台パンもするけど、それは決して特定の誰かを貶めるものではなく「こんなの理不尽だろぉ……!」という哀愁の表れなので。

 ポジションとしては「親戚の兄ちゃんにこういう人がいたら、帰省した時にめっちゃ遊びたい」。
 あとは人に教えることに非常に長けているので、先生にいたらなあと考えたことがあるオタクもいるかもしれません。
 分かるぞ。私もそうだ。

 そんな親しみやすいキャラクターが周知されていたことがまず大きな強みだったでしょう。

 どう頑張っても、女性に対して匿名でピンク電話をかける人間というものは存在します。
 性的な話題を振って、相手の反応を楽しむ。まあ酷い話、それをオカズにする輩もいます。
 男性であること、また気さくな人柄であることは、匿名通話という条件に対して有利に働いたと思ってもいいのではないでしょうか。

テーマ設定「不幸話」

 次に功を奏したのが、このテーマ設定。
 フリートークにしてしまえば収拾がつかなくなっただろうというのは大前提として、このテーマ設定によって一気に参加者に絞り込みがかけられました。

 不幸話として披露できる持ちネタがないと、自信を持って参加ができないのです。
 同接数を鑑みても、下手に意気揚々と乗り込んで見当違いのことを話して滑るというのは誰でも避けたいものではないでしょうか。
 諸々に対する抑止力になるテーマが設定されていました。

 そして既に司さん側で「不幸話を笑いに変える」という、トークの流れをセットしていたことも事故防止として非常に優秀だったと思います。
 リスナーはとにかく不幸話を持ってきて話す。それを司さんが絶妙にツッコミを入れつつ労い笑いに消化する。
 この構造が非常に強固でした。

 クリスマスというのも肝でした。
 「つかサンタと通話できる」「不幸話を笑いに昇華してもらえる」というのは保証人にとっては特大級のクリスマスプレゼントだったでしょう。
 そして「クリスマスに配信を見ている層」へのアプローチもよかったのではないでしょうか。
 (みんながみんなクリぼっちで配信を見ていたわけではないにしても)悲しい気持ちになることなく、見ていてとても楽しい配信でした。

 また、不幸話をテーマにしたことで、リスナー側にも一体感が生まれました。
 つかサンタと一緒になって話を聞いて、チャット欄でコメントをすることによって応える。
 通話こそ叶わなかった保証人はたくさんいるでしょう。でも、形が違うだけで全員が「聞き役」として参加できたのです。

稀有な才能「オールストライクゾーン」

 そして最後に、これが最も語りたかったことです。
 司さんがこの「つかサンタ」を成立させられた最も大きな要因、それがオールストライクゾーンのキャッチャーであるという点です。

 こちらは天開司公式ファンブック「おはクズ・・・・!」内にある対談のひとつ、MonsterZ MATEのコーサカさんとアンジョーさんとの対談内でも取り上げられている話題です。
 対談内で、コーサカさんは司さんのことを「キャッチャー」と比喩しました。

 会話はよく、キャッチボールとして例えられます。
 話すことはボールを投げること、聴くことはボールを取ること。
 人と会話をするというのは当たり前のようで結構高度なことをしています。
 なにせその場で相手のストライクゾーンに投げ、相手からのボールをキャッチするの繰り返し。
 たまには暴投したって確率的には当然です。人間誰しも失敗するもの。

 そんな中で司さんは「どんな球でもいいから投げてみな!」と言って、とにかくキャッチャーに徹せるという稀有な才能が有ります。
 つかサンタも、リスナー側に不幸話の内容は一任してとにかく投げさせる。それを全部キャッチし、今度は相手が取りやすい球を緩く投げ返す。
 こんな芸当ができる推し、他にいないです。

 ここまで言うと過言と思われるかもしれませんが、オールストライクゾーンだと感じました。
 本当にどこに何を投げてもキャッチしてくれる。
 誰もが安心して参加できる環境を、司さん自身の稀有な才能で成立させたわけです。

さいごに

 リスナー側から話題を募って雑談配信を行うことも、もはや珍しいものではなくなりました。
 よく見かけるのが、「マシュマロのようにやさしいメッセージを送り合おう」という、通称マシュマロというサービスを用いた匿名メッセージ募集。

 しかし、これらは良くも悪くもリスナー本位に使われ、配信コンテンツとして取り上げられない内容が来ることも多々あります。
 結局リスナー参加型の配信が基本的にハイリスクであることは変わらないのです。内容が読めないから。

 マシュマロをうまく捌けていない推しもいっぱい見てきました。本人は上手く捌いているつもりの推しもいっぱい見てきました。
 知る限り、ハイリスクなマシュマロを本当の意味で上手く捌けているのは因幡はねるその人だけです。そしてねるちゃんもまた、リスナー逆凸配信を実行したもう1人の推しです。
 このお話もいずれ記事にして備忘録として残せたらと思っています。

 そんな中で、色々な要素が組み合わさって成功を収めることのできた貴重なリスナー逆凸配信3本を振り返ってみました。
 ほどよいボリュームで謎にみんなトークの上手い保証人とつかサンタが繰り広げるキャッチボールをぜひご視聴ください!

 それにしても本当に凄いよ、司さん。
 この人の何が凄いって、例えばメンバーシップ登録者限定とかでやるでもなく、完全公開でこれをやってのけるんだから。
 尋常じゃない胆力と懐の深さ、当時から今まで本当に尊敬しています。

ありがとう、つかサンタ!

 いつも「どんなコンテンツが求められているか」「どんなコンテンツなら
提供する自分自身も楽しいか」を追求し続けている司さん。
 これからも、どんな企画を行ってもそれがまず司さん自身にとって楽しいものであることを陰ながら願っています。

 ここまでご覧いただき、ありがとうございました。

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