分科会活動報告#05 VC分科会〜VCがインパクト投資に取り組みやすい環境をつくる
インパクト志向金融宣言分科会の活動報告、第5回はベンチャーキャピタル分科会(以下、VC分科会)をご紹介します。2022年3月時点で22社が参加、月1回の定例会に加えてランチ会を開催するなど、アクティブな活動を展開している分科会です。GLIN Impact Capital 代表パートナーの秦雅弘氏と、DGインキュベーション・堤 世良氏が共同で座長を務めています。
VC分科会のTOCを策定。VCの共通課題を洗い出し、指針を整理し発信する
秦 インパクト志向金融宣言全体でもTheory of Change(TOC)をつくっていますが、VC分科会も、会としてのTOCを掲げました。私たちの究極の目標、ビジョンは「VC業界においてインパクト志向の資金を増やし、環境・社会課題を自律的に解決しうる資金循環を生み出す」ことです。
そのための第一のアクションは、インパクト投資に興味がある、ないしは実践したいというVCが、第一歩を踏み出せる環境をつくること。今はまだ、そのための事例蓄積や指針整理が十分とは言えず、インパクト投資を実践するハードルが高い状況です。VC分科会は、実践に必要な知見を共に学ぶ場としての役割を、まず果たしたい。
その次の段階は、インパクト投資を実践する過程で生じた悩みや課題を共有し、議論することです。議論を通じて、VCがインパクト投資を行う際の共通課題の洗い出しや実務の指針が整理できるのではないでしょうか。
一方で、さらに大きな課題として、そもそもインパクト投資に興味がないVC、インパクト投資に懐疑的なVCが少なくないという実状があります。私たちが蓄積した事例や知見を発信することで、関心を呼び起こし、理解を深めていただく努力が必要です。
以上のアクションによって、より多くの資金や人材がインパクト投資に流入し、社会課題解決を意図するスタートアップを十分に支援できるようなエコシステムを構築したいと考えています。
ピアラーニングを基本に、リアルとオンラインで定例会を開催
堤 VC分科会はピアラーニングを基本に活動しています。テーマを設定して座談会形式で知見を出し合うほか、IMM分科会に協力を仰いでレクチャーを行ったりもしました。
月例会は、リアルとオンラインのハイブリッドで実施しています。特に日程調整は行わず、予め曜日を決めてメンバーのスケジューラーに送っているので、人によってはなかなかタイミングが合わないこともあるようです。そのため、録画をアーカイブして、いつでも見られるようにしています。
ピアラーニングを行う一方で、メンバーのVCの中には競合に当たる企業もあるので、それぞれのノウハウや情報をどこまで開示するかは難しい側面があります。そこで、あまり堅苦しくない環境で自由に意見を言える場をつくろうと、2ヶ月に1回のペースでランチ会を開いています。そういう場だと、たまたま隣に座った人同士で気軽に話せますし、会の活性化に役立っています。
インパクト創出の主体であるスタートアップとの連携方法を検討
秦 このコミュニティは、インパクト志向金融宣言のVC分科会というクローズドな場ではありますが、みんなで議論してまとめたTOCは、結果として公益的な性格を持つものになりました。ここに集まったメンバーがごく自然に「社会課題の解決に貢献したい」という想いを共有していることの現れだと思います。
去年暮れの定例会で活動の振り返りを行ったときも、時間内でまとめきれないほどたくさんの意見が出て、メンバーの参加意欲の高さに感銘を受けました。今年2月には堤さんがトピックを設定して具体的な実務に関する議論の場を設けたのですが、メンバーが知見を積極的に共有して下さり、ピアラーニングの手応えを感じる機会になりました。
堤 まだトライアルの段階ですが、皆さんが活発に意見を出してくださるので、私たち座長にとっても励みになりますね。
ーーお2人のお話から、VC分科会の明るくてフランクな雰囲気が伝わってきます。これからは、どんなふうに活動を進めていくお考えですか?
秦 メンバーが22社44人と増えてきて、全員でディスカッションすると効率が落ちる場面も出てきたので、運営面での工夫が必要になってきました。トピックごとにグループ分けして意見をまとめ、サマリーを共有するような方法を検討する必要がありそうです。
また、VCはインパクトの最大化に向け支援させて頂きますが、あくまでもインパクトを創出する主体は事業会社です。VCとしては、事業会社が抱える課題やニーズ、彼らが求めるインパクト測定・管理手法を理解する必要があります。分科会のメンバーからも、事業会社の話を聞く場を設けよう、という意見が出ており、現在設営に向け動いています。
去年10月には、インパクトスタートアップ協会が設立されました。そことの連携についても検討しているところです。
堤 今はまだ、ピアラーニングで学ぶフェーズだと思っていますけど、そればかりに留まってはいられないので、今年からは何かしら、アウトプットの方法や機会を考えていきたいと思っています。
「インパクトの増大」という究極のゴールを見据えて活動を続ける
ーー今後の課題としては、どんなことが考えられますか?
堤 同じVC分科会の参加者でも、インパクト投資の取り組みが進んでいるところと、そうでないところの違いがあります。当面は、進んでいるところの情報を共有してもらって、議論を通じて知見を積み上げていく段階かなと思います。ほか、海外連携分科会とも協力して、海外の事例を参考にするのも1つの方法かもしれません。
秦 今はまだ分科会の各メンバーの知識向上・底上げの段階ですけれども、知見や経験を提供してくれるメンバーの善意に頼ってばかりではいけませんよね。すでにインパクト投資の実践を積んでいる人たちにとってもメリットが感じられる分科会でありたいと思っています。スタートアップ協会との連携も、その可能性の1つです。また、22社が集結しているという強みを生かして、発信力が発揮できるようになるといいですね。
今後は、共通の指針、共通認識づくりもしていきたいです。社会課題の構造分析とか、解決のための指針や指標について、それぞれが手探りで考えてきたものを持ち寄ってすり合わせることで、インパクト投資やIMMがやりやすくなると考えています。それによって、分科会の活動の意味や意義が明確になっていくといい。分科会に参加している誰にとっても魅力ある会であり続けたいし、その先にインパクト投資エコシステムの発展があるといいなと思っています。
堤 運営の体制や方法はまだまだ試行錯誤の途上ですが、VC分科会にはアクティブでモチベーションの高いメンバーが集まっていますし、価値ある議論ができる貴重な場だと思っています。
秦 究極のゴールは、インパクト投資を行うVCが増え、投資を受けた企業が創出するインパクトが増えること。この分科会が、その着火点になれるといいですね。
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