社会的インパクト創出のさらなる発展へ向けて〜2019・2020・2021年度休眠預金事業支援先合同セッションを開催【前編】
2023年2月20・21日、SIIF主催による「2019・2020・2021年度休眠預金事業支援先合同セッション」を開催しました。北は北海道、南は沖縄から、さまざまな社会課題の解決に取り組む実行団体と地域の関係者の方たちに都内会場へ足をお運びいただき、それぞれの事業で得た知見をリアルの場で共有するとともに、課題として抱えている問題について相談や意見交換を行いました。2019年度の採択団体は今年3月で事業が終了。合同セッションが3年間の活動を振り返る機会となるとともに、3年間のさまざまな経験を共有しました。
前編、後編の2回に分けてご報告します。
新たな気づきや問題解決の糸口を得ることを目的に
SIIFが行う合同セッションは、「社会課題の解決」という共通の目的を持つ企業・団体が活動や経験、抱えている問題などを共有することで、相乗効果により新たな気づきや問題解決の糸口を得ることを目的に開催しています。
第2回となる今回は、2019年度採択 団体の6社、2020年度の 3社、2021年度の 2社のほか、それぞれの関係者や 休眠預金事業の資金分配や管理等を行うJANPIA(一般財団法人日本民間公益活動連携機構)のスタッフ、各専門分野のアドバイザー、SIIFスタッフなど、のべ57 人が参加しました。
2回目開催を寿ぐオープニング挨拶からスタート
オープニングは青柳光昌SIIF専務理事の「第2回を開催することができました、ありがとうございます」の言葉で始まりました。これは第1回終了時に「またやりましょう!」の言葉が多かったことを受けてのことです。続いて「2019年から始まって5年目に入り、実行団体の活動の成果が形として見えてきた」と述べ、SIIFが支援を行う実行団体の取り組みは先駆的なものであり、「政府の政策に入りつつある活動もある」とし、「事業を継続させていくことで力を発揮し、社会的インパクトを創出してほしい」と結びました。
また、今回初めての参加となった、休眠預金の指定活用団体であるJANPIAの小玉氏 は、「現場を知ることができるこうした機会は大変ありがたい」とし、SIIFが進める2021年度休眠預金事業「地域インパクトファンド設立・運営支援事業」は初めての試みで、大きに期待していると述べました。
ショートピッチでは事業紹介と活発な意見交換
オープ ニング挨拶、JANPIA・SIIFスタッフの紹介、参加者の自己紹介に続いて行ったショートピッチ。実行団体が3班に分かれて、それぞれどんな事業を行っているかモニターを使って紹介し、今後の展望を語るとともに抱えている課題を投げかけました。
奥能登地域の活性化を目指し、「ローカルビジネスラボ・TANOMOSHI」を設立・運営してきた(株)御祓川の森山奈美代表取締役は、この事業によって「当事者意識を持った経営者が、お互いのチャレンジを支え合うコミュニティが形成された」としながらも、休眠預金事業の終了に伴い、TANOMOSHIが「自走していくにはどうしたよいか?」悩んでいることを明かしました。これに対して「出口を作って、それに対して信金ファンドなどを活用しては」などの興味深い意見が飛び出しました。
また、(株)Ridiloverの安部敏樹代表取締役は「事業を進めていく中で、当初描いていたロジックモデルとは違うモデルになった」とその経緯を紹介し、現在進める「子どもの体験格差解消プログラム」の取り組みについて語りました。プログラムに参加する高校生のうち半分が「新幹線に乗るのが初めて」という報告を聞き、問題の深さを実感した参加者と質疑応答が交わされました。
事業紹介を通じて地域の抱える課題も浮き彫りに
「地域の人たちとの関わりを深めたい」と語ったのは、(株)sonrakuの井筒耕平代表取締役です。sonrakuは木質バイオマス発電の普及活動を北海道厚真町で行っていますが、木材の調達が課題の一つとなっています。厚真町内で木材を流通させ、コミュニティを通じて林業や木材に関わる人口を創出したい。井筒代表のそうした想いに対して、町民の方たちにどんなアプローチができるか意見が出されました。
特定非営利活動法人但馬を結んで育つ会の千葉義幸代表理事は、脳神経外科を専門とする開業医です。このままでは医療・介護の供給が足りなくなることに危機感を感じ、生まれ育った但馬地域ですべての人が安心して住み続けることができるよう、医療福祉のサービスを継続的に提供できる環境整備に取り組んでいます。但馬地域の3市2町が垣根を超えて連携できる体制の構築を進めていますが、医療福祉の分野は行政などが入りこみにくい業界特有の壁があることなど、構築を阻む問題を浮き彫りにしました。