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僕らは「村」を舞台に遊ぶ「プレイフルドリブン」から始まった


僕らは「村」を舞台に遊ぶ「プレイフルドリブン」から始まった

休眠預金の資金分配団体として2020年、SIIFが採択した「地域活性化ソーシャルビジネス成長支援事業」分野の6団体。今回はシェアビレッジ株式会社代表の丑田俊輔さんに今後の展開と抱負を聞きました。
秋田県五城目町で古民家を舞台に「新しい村的コミュニティ」の運営で培ったノウハウをもとに、「協同組合型株式会社」を発足させたシェアビレッジ。休眠預金を使って新しいコミュニティの立ち上げやコモンズ(共有資源)の運営を支援するプラットフォームの構築を目指しています。

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12月17日。前日16日は秋田県の一部の地域では観測史上最大の積雪量。
左から)シェアビレッジ株式会社 半田理人
シェアビレッジ株式会社 代表取締役 丑田俊輔
社会変革推進財団 インパクトオフィサー 田立紀子
社会変革推進財団 専務理事 青柳 光昌

「休眠預金」という資金に実験的なお金の流れを感じた

青柳 休眠預金の審査基準で「地元の遊休資産を可視化してビジネスにつなげる」という項目がありますが、丑田さんは6年前に東京から秋田五城目町に移り住んで、すでにコミュニティ形成や関係人口構築の実績がある。そのモデルを利用して、同じ五城目町で別の遊休資産も活用しようということが広がりを感じました。それが採択させていただいた理由の一つです。さらにプラットフォームを立ち上げて全国各地に広げていくという構想自体も、ほかには類を見ない面白さがありますよね。すでに選定基準に合致した結果を一つ出されているということは、安心して一緒にできるポイントでした。これまでとは違う「協同組合型株式会社」という形でチャレンジしていくのもユニークです。採択するとか、資金を提供するという立場を超えて、僕らにとっても「学び」がある取り組みになるんじゃないかと思いました。代表の丑田さん始め、みなさんとても個性的で魅力的ですよね。うちもいろいろなキャリアの人間がいるので、いい化学反応が起こせるんじゃないかと思います。

田立 シェアビレッジさんはこれまで助成金を使ったことはないとのこと。自力でも資金調達が可能だとは思いますが今回、どうして休眠預金制度に申請したのですか? 
丑田 うちの共同創業者の小原(小原祥嵩さん、シェアビレッジ株式会社COO)が社会的インパクトの領域に興味を持ってリサーチして学んでいました。シェアビレッジの目指すところにポスト資本主義時代のブースター的な役割もあるので、こういう領域で活動できるといいなと思っていました。東日本大震災や新型コロナウイルスによって、社会システムが揺らいでいる中で、共同体の在り方から社会を捉えて、一人ひとりの豊かさを見つめ直していこうという大きな流れがあって、お金の流れも従来の資本主義のパラダイムから飛び出ていくチャレンジをしなくてはいけないと思って。従来のシステムの中でもがくことも大事だけど、そこを突き抜けるエネルギーを出していくことが必要だと思っていて、今回は「協同組合型株式会社」という形にし、設立者も権力を手放した形としてみました。休眠預金はそういう意味でも中長期で見てくれるような余白を持ったお金でもある。要項を見たとき、新たなモノサシを作るような、従来の資金調達から飛び出ていくような実験的な取り組みなのではないかと感じて、「お金の流れ」という面でもいいと思いました。もう一つは社会的インパクトを可視化していくということは、今までやってない取り組みだし、可視化されることで自分たちの世界観が次の段階に入っていけると思ったので、一緒にやっていけたらいいなと。

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12月17日の記者説明会で公開した共創型コミュニティプラットフォーム「Share Village β版」

「イシュードリブン」よりも「プレイフルドリブン」でやってきた

丑田 僕らはイシュードリブン(すでに顕在化している課題に対して、それを解決していくための思考法)よりもプレイフルドリブン(楽しみ、遊び、ひらめきを大切にした思考法)のDNAを持ってる。「地域の課題を解決しよう」「古民家を再生しなければ」というのもあるけど、それが一番の中心ではなく、「村つくろうぜ!」というワクワクする気持ちとか本気の遊び心みたいなところに集っている。その連鎖の結果として地域に影響を及ぼしたり、地域の遊休資産が復活したり、関係人口が増えたりした。そういう構造が特徴なので、わりと捉えどころがないんですよ。すべてが可視化できるもの、評価すべきものではないかもしれませんが、そのプレイフルな気持ちと社会的インパクトがつながっていることは大事だと思っています。
青柳 休眠預金の要項を見てお金の流れの可能性とインパクト評価の意義を感じ取ってもらえたことは、すごく嬉しいですね。イシュードリブンではなく、プレイフルドリブンだという話ですが、ぼくらに足りないところは実はそこにあると思っています。やっぱり真面目になりすぎてしまう。休眠預金事業全体もそうだし、ソーシャルな活動をしている人たちはみんな真面目だから、インパクト評価を取り入れようとすればするほど、真面目にやりすぎて、それに疲れてしまう。やらされ感が出てしまうんですね。多くの人を巻き込むとき、プレイフルドリブンはすごく大事なこと。僕らとは違うアプローチであり、学ぶべき点が多いですね。プレイフルドリブンでやりつつ、結果としてインパクトが出ればよいことだし、休眠預金事業全体にも良い影響が得られると思います。
田立 プレイフルドリブンでやりながら、空き家や荒れていく山のような、ともすると目を背けたくなるような地域の遊休資産活用に視点が向いたのはなぜですか?
丑田 僕は2014年から秋田に家族で引っ越して住んでいます。当時はあまりビジネスモデルも持たず、学びを通じて町や地域が良くなっていけばいいなと思っていた。東京に住んでいた自分の脳みそで仮説を立ててもいいものは出てこないから、実際に住みながら地域の日常の営みや遊びをまず感じてみようと思ったんです。そうしたら、その遊びの幅がめちゃめちゃ深いし広い。地域とか自然とか時間軸の関係性の中で暮らし遊ぶことが、結果的に学びに変わっていった。そこで出会ったのが古民家や里山なんです。だから抽象的な環境保護ではなくて、自分と主客一体になり、自分事になっていった。130年の時間を持つこの古民家を残せたら美しいなという視点が生まれた。そういう資産が資本主義の中では価値が下落していて値が付かない。そのギャップがある意味チャンスでもあるし、もったいないと思った。だから「なんとか寄付を集めてこの古民家を維持しなくては」というより、ここを舞台に真剣に遊びながら取り組んでいくと自分たちも楽しいし、地域の人たちも乗ってくれる。その予感がありました。
田立 丑田さんは地域で活動する中で、いろいろな面倒くささを引き受けていきたいと話していたかと思いますが、具体的にはどんな面倒くささがありますか?
丑田 面倒くささを引き受けたのは主に半田くん(半田理人さん、シェアビレッジ町村の管理人「家守」)ですが(笑)。
半田 面倒臭さがある意味、楽しさでもあるんですよね。その過程を楽しめるかどうか。
丑田 関係性が醸されていくと、輪が広がっていって、外からの人にとっても体験価値が上がっていく。現場での苦労は相当あると思いますが、コミュニティが変容していくことで、そのフェーズフェーズで楽しさが生まれていきます。だからこそ持続可能性があって、一時的な熱狂で終わらずに、淡々とハレとケがずっと続いているのかなと思います。
半田 固定的に「関係人口創出」「地域活性化」という形で地域を見るというより、自分はこの現場に根を下ろして、日常的に地域の人と村民たちと接することを大事にしながら、流れの中に身を漂わせるような感覚で、バランスを取りながらやってきています。花火をあげる、というより、どれくらい地域の日常を観察して、余白に飛び込めるか、という機会作りをしてきたという感覚を持っています。なにより、それであれば自分が疲れず無理せず、コミュニティでの面白さを伝えていけるんです。

丑田 ここ(秋田)では野生的なアントレプレナーシップというか、計画的なアプローチでは辿りつけない世界がありますね。身体的で全人的な創造の領域があるなと感じています。

巻き込まれていくうちに楽しくなっていくという原体験

青柳 秋田に来るまでそういう感覚はなかったんですか?
丑田 物心ついてからは東京のマンションで普通に育っていますが、大学2年のときに千代田区の公共施設をリノベーションした「ちよだプラットフォームスクエア」というシェアオフィスの立ち上げに巻き込まれまして。その会社のコンセプトが非営利型株式会社だった。今回の協同組合型株式会社の原型みたいなところがあります。拡大志向を手放した組織の経営を軸にしていて、新しかった。共感や地域との関係性の中でドラマが生まれ、経営としても成り立つ。それが「巻き込まれていくうちに楽しくなっていく」という体験の原型ですね。あとは旅が好きで大学時代に青春18きっぷで47都道府県を旅したり。卒業後は海外も放浪して、マクロな視点の一方で、ローカルで生きる人の世界に飛び込んでいくのが楽しかったですね。
田立 丑田さんがすごいのは複眼的な視点を持っているところですね。シェアビレッジの場合、村長さんの存在がキーになっていますが、どんな村長さんを増やしたいかというイメージを持っていますか?
丑田 あまり画一的なイメージはないですが、カリスマが中央集権的に運営するのではなく、個をコミュニティに溶かしていけるスタイルの方が、これからの共同体を醸していく触媒になれると思っています。僕自身も振り返ってみると、個人で完結できることはほぼなくて、半田がいないと地域の人とコミュニケーションがうまくいかなかったり、小原が組織のことを考えてくれるので成り立っていたり。委ねるところを委ねて、持ち寄ることで成り立つ感覚がいいなと思っています。今回のプラットフォームではアプリとかWebサービスといったインフラ面もありつつ、村づくりの叡智として5年間やってきたこともシェアしていく。さらに、それぞれの村長や村々から出てくるナレッジがあって、それを自然と学び合える環境づくりがしたいですね。
田立 今後、構想の段階から実践的なフェーズに移っていかれると思いますが、SIIFに期待していること、一緒に作っていきたいことはどんなことですか?
丑田 一番大きなところでいうと、プレイから始まる村々の取り組みとイシューとの接続をどう世の中に見せていけるか。コロナ出現後、次の時代に突入していく具体的な形を見せていく、きっかけになるような取り組みにできたらいいなと思っています。僕らだけがプレーヤーではなくて、インスピレーションを受けた遊び仲間がいろいろな地域で実現できたらいいですし、世界の文脈に投げ込んでいけるところまでを意識して、ご一緒したいですね。環境問題とか格差とか、地球規模であるイシューに対して、共同体の在り方を見つめ直していくという切り口から、どう差し込んでいけるか。それを一緒に探究できたらいいなと思います。一つの企業の経営のレベルを超えて社会に問いを投げかけていけるようなチームになっていけたらいいなと勝手に思っています。



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