映画感想:ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ(ネタバレ有り)
前作は期待外れな出来だったので、かなりハードルを下げて鑑賞した今作。
で、感想はというと、アンディ・サーキス、頑張ったのね……。
いや、しょうがないことだとは思う。子供にウケなければならないし、興行のことを考えれば、どうしたって全年齢対象のいい子ちゃんヒーローにならざるを得なかったのだろうが……。やっぱりゴア描写満載で、シナリオもハードなヴェノムが観たかったなあ……というのが本音です。
まあ、予告の時点でヌルい感じになるのは分かっていたこと。SF怪奇ホラーや人体変異ホラー、バイオレンスホラー路線は諦め半分で観ていた。
案の定、血飛沫は跳ばず、人体は引き裂かれず、身体乗っ取られ描写もほぼ無かったが、前作と違い、今作は色々と足掻きが観れたのが嬉しかった。
多分、アンディ・サーキスは、ゴア描写ができないのなら、できる限り足掻いてやろうじゃないか!と意気込んだのだろう。随所にそういった箇所が見られる。
クレタスがカーネイジに変異する時に、全身から物体X的にウネウネが湧いたり、顔面がホラーな崩れ方をしたり。初変異時にエイリアンな現れ方をしたり、刑務所で暴れる時に命乞いをしてきた警官が「家族がいるんだ!」といった瞬間にオルフェノク的なベロ殺しをしたり、恋人のシュリークを助け出す時に女博士を吊るしてるのをホラー的に無音で背後で見切れさせたり。
血の一滴も、手足の一本も吹き飛ばないのだが、こういった足掻きが感じられたのは嬉しかった。DCのシャザム!でも、会議室のシーンでホラー職人たるデヴィッド・F・サンドバーグの「血が出せねえならこうして怖がらせてやらあっ!」という足掻きが垣間見れたが、今作にもそれがあったのが嬉しかった。一応、リーサル・プロテクターの矜持をなんとかしようとしたのね、アンディ・サーキス。
肝心のヴェノムとエディの関係性に関してはメロドラマというか、痴話喧嘩というか、微笑ましいに一点集中していたので楽しく観れたが、クレタスとカーネイジの会話があまり無かったのは寂しかったなあ。前作と同様にミラー越しに会話とか、そういうのは面白いのだが、クレタスとカーネイジのサイコ同士の会話を観たかったところ。どちらも父親に対してこじらせている背景があるので、初めて入り込んだ時に、それについて深く語る会話描写を入れてほしかった。展開のテンポがよく、ドライブ感があるのはいいのだが、そういうシーンがあってもよかったのでは。
あと、これは対比として面白いなと思ったのは、カーネイジにハートが無いという事を視覚的に描写していたこと。銃撃を避けるのに胸をぽっかり開けて空っぽにしているのを、カーネイジには宿主に対する愛が無いというキャラ描写にしていたのは上手いなと思った。反対に、ヴェノムはエディに対してかなり愛情があるし、胸を貫かれても痛がっている。この辺は二者の違いを明確に表していたと思う。
最後の戦いは、教会でヌラヌラした奴と戦うという、ちょっとバイオハザード・アポカリプスのリッカー戦的で懐かしさを感じたり。というか、全体的に一昔前、2000年代のアクション映画っぽいんだよなあ。むしろ昨今のヒーロー映画の中では異色な感じもした。クレタスとシュリークの再会キスシーンとか、ちょっとサム・ライミっぽい外連も感じたし。鐘を鳴らしたり、ヴェノムの目に光景が反射するのは、その辺を意識した目配せなのだろうか?
真意は知らないが、アクションシーンは前作よりもはるかに面白かったので満足です。この辺はやっぱり視覚効果を手掛けてきた第一人者でもあるアンディ・サーキスの手腕なのだろう。カーネイジがヴェノムよりヌラッとしていて、嫌悪感を催す造形になっていたのも嬉しい。もっと細くても良かった気がするが。
とまあ、褒めちゃあ文句を言っているが、総じて満足な出来でした。映画として、きちんとエンタメしていたし。最後のシーンで、とうとうスパイダーマンと共演することになって……。
…………いや!やっぱりもっとエグいヴェノムが観たかった!TLで見かけたけど、スポーン・ブラッドフュードみたいな話が良かった!クソほどヤンデレだけどお前しかいねえ!みたいなのが観たかった!
MCUに行くのなら、ジョン・ワッツにヴェノムを撮らせろよ!エディをピーターに立ちはだかる超怖い大人にしろよ!人体変異ホラーもお手の物だぞ!頼むから、怖いヴェノムを見せてくれ!
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