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映画感想:ブラックアダム(ネタバレ有り)

 色々と先行きが不安な情報ばかり流れてくるDCだが、なんだかんだ嫌いになれないのは複雑になり過ぎているMCUと違って単独作品ごとにしっかり楽しめるからである。MCUはアレとアレが繋がって……とか、キャラのサプライズカメオ出演ばかりとか、CGのクオリティと労働環境問題とか、そういうのも相まって、ちょっと愛想が尽きかけているのだ。(独占配信で作品がレンタル屋に流れてこなくなったというのも大きい。プレデター ザ・プレイの円盤を出せ!)
 まあ、DCもマイケル・キートンがカムバックするバットガールをお蔵入りにしたりと、嫌な面もあるのだが……。

 とまあ、そういう諸々はともかく、今作は単純に映画として楽しそうだから観に行った。まだやっているブラックパンサー2は上記の理由プラス、長いし気を張って見なければならないのではないかという懸念もあったので、娯楽として楽しめそうなこちらを選んだのだ。
 なんたって、職人監督ジャウム・コレット・セラがやっているのだから、まず間違いないだろうというのも大きかった。短期乱発な上にインディーズで頭角を現した新人監督をシンデレラ起用して裏方が大変なことになっているらしいマーベルと違い、そういう信頼はある(と信じたい)DC。

 それで、いい娯楽映画を観ようという心持で観たのだが、やっぱりジャウム・コレット・セラは裏切らなかった!こういうのでいいのだ!と心の中で拍手を送りました。
 ただ、ブラックアダムのキャラクター解釈や、物語の展開には粗っぽさを感じる部分もあります。あちこちで言われているように今回のロック様は完全にターミネーター2のT800を意識していると思うのだが、それっぽい天然が過ぎているのはちょっと気になった。元は知的でしっかりしているキャラのはずなのだが、T800に寄せ過ぎたあまりか、復讐者なのに人間味が無い(というより、ちょっと天然バカ)ように見えてしまう。物語の展開もこれまでのDCの整合性を考えれば、JSA今まで何してたの?とか、そういうのは気になるのだが……。

 しかし、それを観ている間にモヤモヤと感じさせなかったのは、ともかくテンポが良いし、画面に飽きが来なかったこと。今作は何より、全編に渡って楽しいのだ!
 序盤のキメッキメの復活から、外に出て軍隊を蹂躙する一連の場面でビシビシ感じたのは、とにかくロック様という超人をかっこよく撮ってやるぜ!という気概だった。銃弾を指で止める、フードを被って呟く、指先一本で人を灰にする、ヘリやジープを藁のように扱いズタボロにする……。これでもかというほど厨二めいた超人ムーブをかますのだ。
 これはロック様だけでなく、JSAの面々にも感じた。各々が活躍する場面は、絶対にヒーローをかっこよく撮ってやる!という気概に満ちている。ピアース・ブロスナンのダンディぶりが炸裂していたドクター・フェイトや、イケイケ正義漢オルディス・ホッジ演じるホークマンや、瑞々しい新人のアトムとサイクロン。みんなキャラが立っているし、活躍するアクションの場面は総じてかっこいい。CGも決してチープじゃない。
 特に、ドクター・フェイトは素晴らしかった。分身して戦う場面はその辺の超能力アクションとは一線を画しているほど見応えがあったし、ピアース・ブロスナンの圧倒的佇まいによって、初登場なのにずっといたかのような歴戦の過去を感じさせる。吹き替えで観たのだが、声優が田中秀幸さんでたまらなかった。貫禄が違い過ぎる。
 ホークマンも同様で、オルディス・ホッジが演じていると知って嬉しくなった。リー・ワネルの透明人間で、しなやかな身体でアクションもできる正義漢を演じていたのを見た時から、この人にはいつか何かしらのヒーローを演じてほしいと思っていたが、見事なまでにはまり役だった。特性である飛行アクションはもちろん、武器の構え方とか変化のさせ方とか、動作が一々かっこいい。
 この二人の掛け合いがまた気が利いていて面白いのだが、それが決して照れていないのも良い点でした。コメディなシーンは当然あるのだが、キメるところはちゃんとキメてくれるので嬉しい。終盤の展開とかベッタベタなのだが、一切の照れなく真剣にやってくるので受け止めざるを得ないのだ。民衆が一体となって悪のミイラ軍団と戦うのは、さすがにアンチヒーロー映画としてどうなのとは思ったが、それはそれで容赦のなさ過ぎたジェームズ・ガンのスースクに対するアンサーなのかなとは思ったり。

 でも、やっぱり一番かっこよく撮られていたのはロック様だろう。いかにロック様をかっこよく映すか、いかにロック様にかっこいいアクションをさせるか、それだけを意識してやっているのではないかとさえ思えてくる。クライマックスとか、ポッドを脱してその場で呟けばいいのに、わざわざ海を漂わせるのは、MoSのオマージュなのか、それとも白い飛沫の爆発の中から復活する方がかっこいいからか……。その後、マーワン・ケンザリ(アラジンより魅力たっぷりにヴィランしていた)演じるラスボスをフェイタリティ魂に溢れる殺し方で始末するので、もう大満足してしまった。

 という感じで、粗っぽい所はあるけど、それが気にならない位、ちゃんとエンタメに徹した娯楽映画をやっていました。さすが職人監督ジャウム・コレット・セラだなあ。Paint It Blackの使い方とか、ニコニコしてしまった。
 個人的に、全体的な手触りとしてはリーグオブレジェンドに近いですね。中学生の時に見て、何か分かんないけど、めちゃくちゃかっこいいキャラがたくさん出てきて、かっこいい乗り物が出てきて、全員が集合して活躍するからうおお!と感動した、あの時の感覚を思い出させてくれるような……。何より、昨今のヒーロー映画に中々なかった厨二感が溢れていて嬉しかったです。小難しいテーマ云々は抜きにして、そもそもヒーローが出てくるエンタメとは、娯楽映画とはこうあるものだろう!と、堂々と宣言された気分。
 最後にしれっとヘンリー・カヴィルのスーパーマンが画面に帰って来てめちゃくちゃ興奮したので、DCの先行きは不安だが、その責任はきちんと果たしてほしい。そろそろ、DCユニバースの始祖であるMoSを超える超人同士の対決を観たいので……。
 


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