映画感想:カイジ ファイナルゲーム(ネタバレ注意)
僕は滅多なことでは邦画を観ないのだが、友人に熱烈な藤原竜也ファンがいるため、それに付き合う形となって観ることになった本作。
原作を薄っすらなぞっていた1,2作目とは違い、今回は全く新規のシナリオでオリジナルのゲームが登場する。事前にいれていた情報はそれだけ。
それで感想はというと・・・、まあ酷いものでした。こんなに仰々しくやるんなら舞台でやれ!という感じ。
思い返せば、1,2作目って、原作と同じゲームが登場するし、あんな感じでもそれなりにカイジしていたんだなあ、という印象。ところが、この3作目は全くカイジ感がないのだ。
ストーリーはまず、日本が2020年の東京オリンピック後に盛大に景気が悪くなり、先進国から置いてけぼりにされ、すっかり没落したところから始まる。貧富の差が恐ろしいほど開き、一部の富裕層を除いて国民のほとんどが貧困層になってしまい、スラムやドヤ街のように身を寄せ合って暮らしている。
カイジもそんな中の一人。派遣の日雇い仕事に励んでいるが、給料はほとんどを派遣会社にピンハネされて、スズメの涙程度しか給料がもらえない。(この派遣会社のトップが原作に出てくる帝愛の黒崎さん。原作の黒崎さんとは違い、なんだか声を張り上げて大袈裟なセリフを吐きまくるゲスおやじになっている。)
酷い給料に、直々に文句を垂れるカイジだが、「いやならやめちまえよ!でもやめらんねえだろ、バーカ!お前らのようなスキルもない底辺に職を選べる資格があるか!」と一蹴されてしまい、スラム街で一缶千円の缶ビールを煽るカイジ。(クドいくらいキンキンに以下略を言う。なんだか藤原竜也さんがかわいそうになってくる。)
そんなところへ、大槻ハンチョウが現れ、一発逆転のゲームをもちかける。そこから、徐々に国家の存亡をかけた策略へと巻き込まれていくのだが・・・?というのが大まかなあらすじ。
ここから先の展開は伏線もデティールも恐ろしく酷いので、以下略。なんやかんやゲームをして悪役の野望を打ち砕く。
とりあえず、気になった所を挙げていくと・・・。
・本作のウリは、脚本、ゲームが原作者の福本伸行先生考案のものであるが、肝心の駆け引きシーンや心理描写が皆無。後出しで実はこうでした!みたいな展開ばかりで、勝ち負けなどどうでもよくなってくる。というか昨今の福本伸行先生に短い映画のシナリオを任せるのは無理だったのではないか?
・ゲームまわりのデティールがまあ酷いし、それを出し抜くカイジ一行の手段もまあ酷い。そんなわざわざ装置のブレーカーのところにご丁寧にテプラしてあるか!他のとこはただの番号なのに!なんだ半欠けのコインて!用意してあるのかそんなの!ドローンの件は目眩がした。もうなんでもありやないか!
・再登場するキャラが本当にみせかけだけのファンサービス的。天海祐希はちょっとはストーリーに関与するものの、生瀬勝久の坂崎のおっちゃんはほんとに出てきただけ。ファンサービスするほどのキャラでもないだろ映画版は。
・カイジはクズのボンクラだが、ギャンブルとなると目の色を変える男。それは合っているが、あくまでカイジはいい奴ではあるものの、そのギャンブル欲と個人の利益にしか目がないんだから、国家の存亡がどうだのこうだのと絡むようなヤツじゃないだろ!カイジが世界を救ってどうする!
・なんだかカイジ一行に感情移入出来なくて、逆に悪役の福士蒼汰を応援したくなってくる。主張は極端で間違ってはいるものの、年寄りにへこへこ頭を下げて苦労しつつ日本を変えようと努力している若者というキャラってだけで、なんだか応援したくなってしまうよ。結果としてカイジにこてんぱんに野望を打ち砕かれるわけだが、底辺のクズが垂れる説教を聞かされながら膝をつく姿がなんだか痛ましく思えてしまった。
こんな具合だろうか。とにかく終始にわたって藤原竜也さんがかわいそうになってくる映画でした。すっかりネタにされてしまった濁点絶叫キャラを、こんなの馬鹿馬鹿しくてやってられるかよ・・・、どうせまた芸人やらそこらの馬鹿にモノマネされるんだろうなあ・・・、と思いながら演じているんじゃないかと思うと・・・・。
22年目の告白—私が殺人犯です—、では演技を抑えてて面白かったのになあ・・・。あれを見ていたのでほんのちょっとだけ期待していたんですが、本人ももう諦めていたのでしょう。ネタにされまくって肥大化しすぎてしまった濁点絶叫キャラを演じるしかないということを。ラストのあれも、「もうこれで最後にしてくれえ!」という悲痛な叫びに聴こえてしまった。
冒頭は良かったと思うんですよ。東京オリンピックを機に景気崩壊してしまった日本っていうのはあり得る話じゃないですか。その世相を利用して、徹底的にエンタメにするのなら、悪役は時代を逃げきろうとする年寄りにして、それを貧困の若者が打ち砕いて日本を救う、みたいにガワだけでも取り繕えば良かったのではないのだろうか?
藤原竜也ファンで、出ていれば大抵面白いと言っていた友人が酷評しているのを見るあたり、世間の観客も粗雑な展開に辟易したのだろう。映画が終わった後の観客のリアクションも、なんだかため息交じりだった。
一番の改悪として、黒崎さんが大声ゲス悪役になっていたのが、一番許せないかな・・・。原作の黒崎さんは穏やかな笑顔の裏に何を考えているのか分からない、不気味な底の見えない男だったのに・・。かと思えば、原作の方でも最近はすっかりただの中間管理職なおっさんになってしまっているらしい・・・。
・・・なんだかなあ。
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