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【書評】「キャッシュレス覇権戦争」がタイトルに偽りありと言いたい件

あー、ほんと、タイトルの通り、だいぶ期待外れだったなあというお話です。
「覇権戦争」というくらいだから、各サービス(陣営)に関する特徴比較やら、普及度、今後の展開予測、、みたいな話が書いてあるのかな、と勝手に予想してポチったんですよね。

VHSとβ、Blu-ray  vs HD DVD、T-POINTとPONTAみたいな、規格争いとか、覇権争いの歴史みたいな感じで、これだけ各社が参入してPay争いしてるのって、端から見てるぶんには面白いですし、生活者としては興味本位な部分もあり、とはいえこれだけ盛り上がっている中で何らか仕事で関われたりするだろうか、みたいな事も考えたりするわけじゃないですか。

という事でそんな淡い期待を抱きながら読み始めたわけなんですね。

PayPay祭りを序章から取り上げるトレンド感に期待膨らむ

冒頭から例のPaypay祭りを取り上げていて、あれ、この本いつ出版されたんだろうと、思わず見返してしまいましたからね。

これだけ最新事例を冒頭から持ってくるなんてこりゃ筆者のやる気半端ないぞと。

序章については、きっと編集者と話して、これは出版日程多少ズラしてでもこの最新事例を掲載する価値があるよね、みたいなやりとりがあったのかなーと妄想してしまったり。

この意気込みで、きっと後半も各種サービスについての詳細なレポートが期待できそうだなと期待に胸膨らませちゃうわけですよ。

ところが、その期待もだんだんと違和感とともに淡く消え失せていくんですよね。

PayPay祭りを批判する筆者

PayPayを筆者が実際に商店街で使ってみる薄ーいエピソードから始まるわけだったんですが、最終的にはこのお祭りを批判して第1章は終わることとなります。

どうも、この筆者は30年以上カード業界について取材してきた方らしくてその業界の方々とのつながりやパイプが太いんでしょうね。

カード業界の方々のPaypay祭りに関する否定的な声を複数紹介して、あれは良くなかったという持論を展開します。

キャッシュレスを推進する立場のような側面も持ちつつ、どうもカード業界がこれまでなかなか推し進められてこなかったキャッシュレス化を、金に物言わせて結構な話題をかっさらって一過性のもので終わらせた?ことに対して警鐘を鳴らしていたのです。

「『100億円あげちゃう』」とか『20%還元』という派手なキーワードを強調するやり方には違和感がある」(銀行系カード社員)
私たちカード事業者の地道なやり方とは全く違うものだ(決済代行社員)

等々、自分のこれまでの取材歴の中で親しくしてきたであろう業界(カード業界)関係者の声を集めて最終的には今回の件を批判するわけなんですよね。

これまで出来なかったことを、実際に実現して、なおかつ今後使うか新しもの好きなユーザーが継続して使用するかどうかは別として、あれだけ瞬間風速的にDLさせて、キャッシュレス決済の利便性を多くの人々に体感してもらえた件は、どう考えても成功としか言えないなと思うのですがね・・。

自分たちには長年かかって、地道に営業しても出来なかったことを一瞬にして実現してしまった彼らに対する羨望の気持ちから来ている反応ということなんでしょうかね。

キャッシュレス覇権戦争というタイトルの書籍を書いておいて、キャッシュレス導入の支援や、講演を行なっているこの著者から、まさかPaypay祭りに対して否定的な意見が出るとは思わなかったので、冒頭から結構な違和感がありました。

キャッシュレス決済について言及しているのは、第1章だけ

読み終わってから違和感しかなかったので改めて目次見たら、確かに第1章だけなんですよね。これは、どう考えてもタイトルに騙された感というか、ちゃんと調べてから買えばよかったという後悔案件となってしまいました。

一応、そのあとの内容を目次をもとにご紹介いたしますと

第3章 キャッシュレス先進国に躍り出た中国
第4章 「信用スコア」の衝撃
第5章 GAFAが全てを支配するー狙われる個人情報
終章      データ監視社会で身を守る

こんな感じの内容だったんですが、一見してわかりますかね??

見事に生活者の不安を煽って、キャッシュレスには気をつけてね、利便性とトレードオフに、色々な情報を企業や国に握られることになるんですよ、それでもいいんですか?と投げかけるのです。

詳細をご説明しますね。

第2章ではアメリカの信用格差社会について紹介

ここでは、クレジットカードがアメリカから誕生したことや、その歴史について詳しく説明してくれています。

さすが、クレジットカード業界への長年の取材を活かしたわかりやすい説明となっています。

と、そこまではいいのですが、徐々に雲行きは怪しく・・。

アメリカのクレジットスコアなるものの紹介を著者の知人一人(一人!!)のエピソードと、Netflixで配信されているオリジナルドラマを引き合いに、

「ほら、信用格差社会ってこんなに恐ろしいものなんですよ」

ということを印象操作してきます。

もう少し客観的事実の積み上げや冷静な考察が欲しい、、。

第3章は中国のゴマ信用について説明

続いては、中国のキャッシュレス先進国ぶりを紹介してくれるのはいいのですが、その後、ゴマ信用の恐ろしさについてアメリカの事例から畳み掛けるかのように不安を煽ってきます。

健康食品の悪どい恐怖訴求のような感じでしたね。。

ただ、中国共産党は、中国国民の言動、思想を監視したり、信号無視する市民を街中のサイネージで晒したりと、なかなかの監視社会を築いてきたことは周知の事実。

そういう意味では、このゴマ信用の仕組みについては、あまり驚きはなかったんですよね・・。

実際中国人の方にもヒアリングをしているのですが、そのヒアリング内容を見る限り、その方の方がよっぽど冷静に物事を捉えているなと。

この著者の方がとにかくアレルギー反応のごとく、個人情報を取られることを忌み嫌っているのだなと感じた次第です。

正確な情報で情報武装すれば無闇に不安になる必要はない

第5章、終章と続くのですが、内容は想像の通りです。もう書く気にもならない・・。

ということで、否応なしにやってくるであろうキャッシュレス社会について、確かにむやみやたらに企業や国に情報搾取されてがんじがらめになることは自分自身も望んでいるわけではありません。

が、いわゆるOnetoOneマーケティングのような、適切なタイミングで適切なレコメンドをされて、利便性の高い顧客体験ができる世の中から、後退することは今後考えにくいと思います。

そういった時代の流れに抗うのではなく、しっかりと正確な情報をinputしつつ、(あまり感情的に判断せず)

・利便性は享受

しつつ

・データは適度にしか渡さないように注意する

といったことに心がけていきたいものです。

企業側が、データがサイロ化して・・みたいなこと言ってるのであれば、むしろ俺のデータは一箇所に集約させずにとことんサイロ化させてやるぜ!みたいな気概で楽しく生きていきたいものです。(預金を複数の銀行に分散させるリスクヘッジみたいなものですよね!)

なんだその結論。。

デワデワー。


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