「好き」と言わない彼女が「好き」
僕たちは日々色々なこと報告し合う。
今日何があったとかはもちろん。
ルールとかではなく、お互いがお喋り好きなだけなんだけれど、
あまりにも喋り倒すので、どんどん隠し事がなくなるし、相手のことも分かる。
こんなに人に自分のことを喋って、それを聞いてもらえるってのはすごく幸せだと思う。
中でも、お互いに見た夢を報告する、っていうのはいつからか当たり前になっていた。
辛い夢を見た時は、「悩んだりしてない?」って話にも繋がるし、日々の会話のきっかけになる。
つい先日見た夢の一幕。
まだお互いに好きなことが分かってるのに、何も言わない関係性の頃の夢を見た。
彼女さんにちょっかいをかけて、
彼女さんも笑いながら仕返しをしてくる。
その仕返しの言葉がちょっときつくて、内心落ち込んでると、
彼女さんが、それを察して「やり過ぎた、ごめん。」と返す。
そのあと、お互いに見つめあってて、彼女さんがずっと何かを訴えかけるような寂しい目をしている。
その彼女さんがとても可愛らしいけど、付き合う前の僕は、彼女さんに想いを伝えることが出来なかった。
あの頃の二人の関係を凝縮したような夢を見て、
起きた時すごく幸せだったし、今は、隣に寝ている彼女さんを起こして好きって伝えることが出来る喜びを感じた。
この夢を彼女さんに報告した時、彼女さんはちょっとだけムスッとした。
そして、
「そういう関係が好きなら、あまり好きとか言わん方がいいかもしれん。」
と言って来た。
僕が昔の彼女さんとのそういう関係が楽しくて、今でもあの頃が一番良かったと思っている、という風に解釈したらしい。
彼女さんの中では昔の自分も嫉妬の対象。
可愛いな、と思いつつも、そもそもの話、
今でも彼女さんは、僕にそんなに「好き」とは言わない。
スキンシップとかは平気で取ってくる癖に、
「ありがとう」「ごめんなさい」は欠かさない癖に、
日常の何気ないことで褒めてくれたりする癖に、
目を見て「好き」だけは、恥ずかしくて言えない人だ。
夢の中の彼女さんの何かを訴えかけてた顔。
「俺のこと好き?」と聞いたあとに彼女がする顔と一緒だった。
僕はその顔がたまらなく好きだから、彼女さんに「好き」と言ってもらわなくても平気。
彼女さんが嫉妬していた昔の彼女さんに対して抱いた感情は、実は今も変わってないんだよ、と心の中で思いながら、今日も僕だけが彼女さんに「好き」と伝え続けたいと思った。