散歩
僕たちはお互いにインドアなのだけれど、
相方さんは超がつくほどのインドアで、
さらに冬が嫌い。
そんな相方さんでも、去年の10月、11月辺りは
ある程度、外に出られる喜びがあったのか、
毎週末「一緒にどこかに出かけたい」って言ってくれていた。
相方さんが調べたデートスポットに行って、場違い感を覚えつつ。
二人とも陰キャの恥ずかしがり屋なので、外では手を繋ぐことすらない。
仲良さそうな他のカップルとすれ違うと、
顔を見合わせて何だかおかしくなって笑い合ったりしていた。
失っていた青春を取り戻したようでとても楽しかった。
年が明けてから、迂闊に出歩けなくなったので、
相方さんがちょっとだけ不満そうだった。
昨日の夜中、状況が良くなったら行きたい旅行先を二人で話していた。
「とにかくどこか行きたいんよね。」
インドアの相方さんもすっかり変わってしまった。
すごく寂しそうにそう言うのである提案をした。
「散歩とかドライブやったらある程度はできるんやない?」
相方さんは散歩が大嫌いだった。
僕は毎日1時間ほど散歩をするのが日課だが、何度誘っても相方さんは
『散歩はつまらん。』と言って、ついて来たことがない。
「えー、散歩・・・。」
と相方さんはあまり乗り気ではなかったが、
「じゃあ行くか。」
と急転換。
良かった、これでちょっとでも気分が紛れたらいいなぁ、などと思っていると、
相方さんが服を着替え始めた。
「え?もしかして今から行くん?」
時刻は0時過ぎ。
"今から"行こうと誘ったわけではなかったのに、まさかのアクティブ。
「なんか深夜のドライブ、楽しそうやない?」
そういう青春っぽいことをしてこなかった二人の精一杯の行動。
謎の深夜テンションからのドライブと散歩。
特別なことは起きないし、普段家で喋ってることを外で喋っただけ。
それでも、ちょっとだけ楽しかった。