看護職の自由さについて
私は看護師と保健師の資格を持っています。今は保健師をしていますが、以前は看護師として働いていました。私はこの職を気に入っていて、長く働くことができています。
看護職で好きなところはいくつかありますが、一番は働き方に自由さがあり、それぞれの働き方に対し寛容さがあるところです。今日はその話をしたいと思います。
看護職を目指したのは大した理由はありません。大学受験期に急に将来何になりたいのかわからなくなってしまい、あっちこっちの色んな学部を受けて、なんかもう浪人しようかなと思っていた時に「しぐまさんは看護師に向いてると思うから、ここ(母校)の看護学科を受けたらどうかな」と高校の先生に言われただけなのです。先生、その節はありがとうございました。
大学時代の友達の出自は様々でした。元から看護師になりたかった人、最初から助産師とか保健師にしか興味がない人、医学部に全然受からなくて諦めて看護に来た人、社会人になってから資格を取りたくて入った人など、それぞれのモチベーションで授業に取り組んでいました。私はなんとなく入ったこともあり、遅刻ギリギリに来ては授業中寝ているような不真面目な学生でしたが、臨床には適性があったようで、実習は割と楽しく取り組んでいました。
当時真面目だった人も真面目じゃなかった人も、今でも割とみんな息長く働いていて、元気そうにしています。大学病院のERで救急医療に人生を捧げている人、病棟で師長になった人、専業主婦期間を挟んで復職した人、近所のクリニックでパートをしている人、訪問看護ステーションを開業した人、児童施設にいる人、離島に行った人、助産師に転職した人、兼業でケアマネをしている人、保健師に転職した人(私)、働き方も進路もこれまた様々です。また、どこで働いていてもお互いに上に見たり下に見たりも特にない印象があります。この点について、本当に良い職種だなと思っています。
就職した翌年に同期で集まって海に行ったことがありました。その頃は大体みんなとりあえず急性期病院に就職していて、私も総合病院の急性期病棟に勤務していました。私は親が社畜だったこともあり、社会人になったら仕事が全てで、仕事とは大変で頑張らないといけなくて、上を目指さないといけないものだと思い込んでいた頃でした。
海で遊んだあとに宿に戻る途中、海の近くに建っていた病院を見て同期の一人が言いました。「あの病院に転職したらサーフィンしてから出勤できそう。毎日サーフィンしたい。そういう生活、楽しそう。」斬新な発想だと思いました。自分が楽しいと思う生活が中心にあるという考え方に衝撃を受けたことを覚えています。
私はそのことがあってから、旅行に行ったり遠出をするたびに病院を見つけ、「ここにも就職先がある」と思うようになりました。ここで働く私はどんな生活をしているんだろう?と想像することも楽しいですし、「どこに行っても、何をしていても、それに合った働き口を探せる」という安心感も同時に得られるようになりました。
看護職の働き方の多様さは、転職のフットワークの軽さからも来ており、それが彼ら彼女らの自由な雰囲気を作っていると思っています。離職率が高いのはあまり良いことではないのかもしれませんが、「自分の条件に合わなければ辞めて次を探す」という姿勢を持つことは、自分の人生の舵取りをするためには重要なことです。流動性の高さも業界全体の待遇や力量の底上げにつながるのではないかと思っています。
看護職であることにプライドを持ち自己研鑽を積極的に行っている人は多いですが、終身雇用や組織に縛られている人は管理職は別としてあまり見かけません。前に働き方改革の話が盛り上がっていた頃、看護職の働き方がヒントになるのではないかと思っていました。自分の仕事に誇りを持ち、どこにも縛られずに自分の正解の働き方を見つけていく。もちろんみんながそうやって働けている訳ではないですが、楽しそうに仕事をしている友人たちはそんな風に見えました。
私も友人たちを見習って、そんな柔軟で楽しい職業人生を歩んでいきたいと思います。