プロフェッショナルとスペシャリストの違い
どちらがどちらに対して優位ということではないですが、プロフェッショナルとスペシャリストは区別されるべきだと考えています。
これらが区別されるべきだと考えるのは、プロフェッショナルという言葉の拡大解釈が過ぎるからです。プロフェッショナルは本来は職業上という意味合いですが、達人や職人、哲学を持って仕事をしている人のような意味で使われがちです。
プロという語は解釈の幅が広く、前者の意味で使う人と後者の意味で使う人との間で話が通じなくなりがちです。後者の意味で使う人は、なんでもかんでも「プロならこのくらいできて当たり前」と言いがちで、それらの主張を総合すると、想像上の生き物としての崇め奉られるべきプロフェッショナル像が描かれます。しかし、プロは「職業としてそれをやっている人」を指すはずで、現実にどこにでも居るありふれた存在であるはずです。
スペシャリティを持つプロ
プロと似た意味として使われる語に「スペシャリスト」があります。似たような意味で使われますが、プロフェッショナルとスペシャリストは明確に区別出来るはずです。
プロフェッショナルは自身の職業生活を営む上で必要なスペシャリティを磨く存在です。その意味でプロフェッショナルは多くの場合なんらかのスペシャリストではあります。しかし、プロフェッショナルとして求められる資質は職業生活を営むためのものであるはずなので、「スペシャリティを生活の資に変える能力」は明らかにプロフェッショナルとしての能力です。
例えば転職の際に自分を売り込む能力や、自分のやっていることが最終的に誰にどういう利益を与えているかを把握する能力、どういったスペシャリティが生活の資になるかを考える能力などがこれに当たるでしょう。これらはスペシャリティとは分けて考えるべき能力だと言えます。
高いスペシャリティがお金になるとは限らない
プロとしての能力とスペシャリストとしての能力を分けて考えると、高いスペシャリティがお金になるとは限らないという現象に見通しが立ちます。エンジニアの場合は、例えば使用している言語や経験してきたプログラミングパラダイムでお給料に差が出る場合がありますが、この辺りをかぎ分ける能力はスペシャリティとは区別して考えるべき能力です。
もっと分かりやすい例として、スポーツ選手としてのスペシャリティが挙げられます。イチロー選手や大谷選手がもしもっとマイナーなスポーツでそのスペシャリティを発揮していたとしましょう。そのスペシャリティは当然称賛に値するものではありますが、「職業上の」スポーツ選手としての生活は違ったものになったはずです。そのスポーツでどれだけ素晴らしい実績を挙げてもお金にはならないスポーツは沢山あるはずで、スペシャリティの高さとお金が結び付かない最たる例と考えられるでしょう。
最強のプロ
プロフェッショナルとしての能力がずば抜けて高いとはどういうことでしょうか。また、その場合どういうことが起こるでしょうか。世界経済を見通し、様々な利害関係を加味しながら、自分がやるべきことを定義出来る存在は「最強のプロ」だと言えると考えています。
例えば、イーロン・マスクはそれぞれの事業に関するスペシャリティに関しては、おそらく現場の人たちに負けているでしょう。しかし、彼はずば抜けたプロフェッショナルで、彼にしか見えていない次世代の事業が沢山あります。
そういった「最強のプロ」は、事業を構築する中でスペシャリストたちが活躍する場を提供します。これはプロフェッショナルとスペシャリストの理想的な分業です。このような人たちが最先端の事業を次々と構築していく中だからこそスペシャリストは自身のスペシャリティを磨くことだけに邁進出来ますし、またそういった人材が居るからこそ、最先端の事業を構築していくことが出来ます。繰り返しますが、これはポジションの違いであり、どちらが偉いという話ではありません。
尊重し合えるか
スペシャリストが最先端の仕事をして最高水準の給料を貰うには、そういった事業を構築する人が必要です。さて、ここで問題になるのが「尊重し合えるか」です。子供じみた問題に見えますが、これはむしろ良い年をした大人にとって非常に難しい問題です。
なぜなら、ある人生を送れば別の人生を送った人と考え方が遠ざかるのは自然なことだからです。例えば工学部と経済学部で考え方が違うのは当然で、社会に出てからは、社会的なポジションの違いでまた考え方が変わってきます。
分業化が進んだ社会で、仕事についてお互いを尊重し合えるかは実は非常に難しい問題であるはずです。しかし、その方が効率が良いのは自明なので、プロとして他人の仕事を尊重することくらいは出来ないと不味いと言えるでしょう。
Web制作やライターをやっているフリーランス。豊田高専を二度中退し、放送大学生兼フリーランスを始める。Pythonが好き。Vue.js、Nuxt.jsを使う。