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ビジネスパーソンのための交渉術⑦
こんにちは、ビジネスエッセイを発信している松永隆です。
本記事は、拙著『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 日本人の交渉のやり方』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、編集したものです。
今日は交渉本番突入直前に再度チェックしておきたい事項について触れたいと思います。
交渉の着地点の設定
交渉相手に関する情報収集、分析ができたらそれに基づいて交渉の着地点を設定する必要があります。
着地点は以下の3つぐらいは想定しておくべきでしょう。
1.ベストケースシナリオの着地点
2.ワーストケースシナリオの着地点(それ以上は絶対譲れないという線)
3.1と2の中間の着地点
交渉を開始するとだいたい予想していなかった要因が浮かび上がったりするものです。着地点が1つしか想定されていないと、その場合慌てることになりかねません。慌てれば心理的に不利な状況に陥ります。
そうならないためにも右記の3つの着地点を想定し、不測の事態が発生した場合でもそのどれかに当てはまっているのであれば冷静に受け止められるはずです。
交渉は心理戦なので事前準備で交渉中の心のゆらぎを最小限に押さえるための準備はしておくべきでしょう。またこの着地点が複数設定できていれば後述の交渉のシミュレーションもより万全にできます。
1つの着地点だけでは、せっかくしてあったシミュレーションが絵に描いた餅で終わってしまい、しかも慌てることになりかねません。
それでも、交渉の過程で浮かび上がった予想外の要因のため、想定していた3つの着地点の前提が崩れることがないわけではありません。その場合はもう一度3つの着地点を設定し直す方が賢明でしょう。
また、この再設定の場合、社内外で急いで調整しなくてはいけないことが出てきがちなので素早く動くことが求められます。
世間相場のチェック
価格交渉を伴う交渉においては、世間相場がおおよそどれぐらいなのかあらかじめ情報収集すべきです。これは交渉本番においてどこのレベルまで押していいのか、あるいは譲歩するのはこのレベルまでというような基準にするためです。
例えば世間一般で150ドルで売られているものを250ドルで売ろうとしても、どだい無理なのは誰の目にも明らかですが、案外この世間相場(業界相場と言い換えてもいいかもしれません)を知らずに自分の都合で強引な価格交渉をしていたり、逆にとんでもないディスカウント価格で売ろうとしているケースは少なくありません。
誰もが価格を簡単に知り得るものであればそういうことはあまり起こりませんが、交渉するモノやサービスによっては業界相場のレベルが曖昧であったり、きちんと調べないとわからないものもあるので要注意です。
避けなければならないのは交渉相手がきちんとした業界相場を把握しているのにこちらが把握していないことです。これでは間違いなく交渉で不利な立場に追い込まれます。
特に近年ではインターネット検索によって、以前に比べ格段に世間相場(業界相場)の足がかりとなるものを調べやすくなっています。
まずネットで下調べをして、その後にその分野に詳しい人を見つけて話を聞いてみることをお勧めします。
交渉相手先の情報が十分でない場合
本章では交渉前の準備の大切さを強調してきましたが、交渉相手先との取引歴が長くない場合など、なかなか情報の厚みがないこともあるかと思います。
その場合に心掛けなければならないのは、交渉の途中、特に初期段階で相手から直接情報を得ることです。
そのためにどうしても知りたいと思っているが入手できていない情報については、交渉しながら相手から巧みに聞き出すことを心掛けましょう。
その準備として知りたいと思っている事項をまずは列挙し、きちんと整理して記憶しておく必要があります。但し、気をつけなくてはならないのは、交渉相手としては交渉上不利になることは当然話したくないわけです。
従い、先方の核心的利害に影響することから聞き始めるのは避けなくてはなりません。なるべく核心的利害から遠そうなことから少しずつ聞き出すことです。
それは交渉に入る前の世間話の間やその日の交渉が一旦終了して別れ際に交わす会話の中でもチャンスがあれば、たわいなさを演出しつつ、さりげなく聞き出すのです。
そうすることによって情報が厚みを増していきます。その厚みの中に先方の核心的利害に近い事項のヒントがあるかもしれませんし、あるいは第三者の誰かからその情報を得ることが可能かを示唆するヒントが隠されているかもしれません。
そういう意味では聞き上手であればあるほど多くの情報が得られます。交渉の場において自分たちの正当性をやたらと説明しようとする人がいますが、こういう人は交渉上手とは言えません。
一旦自分の考えをぶつけてみてあまり反応が芳しくない場合は、即座に聞き上手に変身し、その原因を相手から聞き出すように努めなくてはなりません。
私の経験では、相手に沢山話をさせることに成功すれば、だいたい交渉を上手くまとめることができたるものです。
聞き上手は交渉上手なのです。
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