ビジネスパーソンのための交渉術⑤
こんにちは、ビジネスエッセイを発信している松永隆です。
本記事は、拙著『ビジネスパーソンのための超実践的交渉術 日本人の交渉のやり方』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、編集したものです。
今日は交渉を行うビジネスパーソンが実際に遭遇しがちな具体的な事態を取り上げます。
■ 第三者の介入の可能性
交渉は必ずしも交渉当事者間で完結するとは限りません。
つまり交渉に影響を及ぼす第三者の存在があることの方が多いと言えます。
できれば当事者間だけでスムーズに交渉がまとめられればそれに越したことはありませんが、不幸にして第三者の介入を許してしまうこともあります。
それではどういう第三者が考えられるでしょうか?
①行政の介入
せっかく当事者間で合意しても行政にそれが認可されないケースもあります。
そのディールの中に行政の認可が必要な事項が含まれていたり、あるいは当事者間の合意そのものに認可が必要とされるケースがあります。
このケースで厄介なのは途中で気が付いて、それまで行ってきた交渉がすべて水の泡と化す可能性があることです。
従い、交渉開始前に何か行政の認可が必要な事項が含まれていないかどうかきちんと調べあげる必要があります。
②競合他社の介入
これは交渉が停滞しているときに起こりがちです。
交渉相手が交渉経緯に不満があったり、不安要素がある場合にライバル会社がその隙に入り込んでくる場合です。取引そのものを奪われることも時々起こります。従い、交渉中は交渉相手の心持ちはどうなのかを細心の注意を持って見守る必要があります。
その時に役立つのがそれまでに収集した交渉相手に関する様々な情報です。
それらの情報を総動員して相手の心理状態を想像し、理解しておく必要があるでしょう。
また、競合他社がどのような動きをする可能性があるかもある程度イメージしておくことも大切です。
交渉相手が競合他社とも取引関係がある場合は尚更注意が必要です。
③上司の介入
重要案件であればあるほど自らの上司が介入してくることも考えられますし、あるいは交渉相手の上司が途中から出てきて交渉の展開が変わってしまうこともあります。
上司が介入することによる結果の良し悪しもあるでしょうが、あくまでも交渉を任されている立場であれば、できれば自らの力で交渉を妥結させ契約に持ち込みたいものです。
それには交渉の途中経過を必要な範囲でタイムリーに上司に報告しつつ、判断材料となる事項について上司とのコンセンサスを形成しておくことが必要です。
あるいは先方の上司が介入してくることもあるでしょう。その上司が意思決定者である場合は交渉を早めるうえでは好都合かもしれません。
但し、注意が必要なのは先方の上司がこちらの上司と顔馴染みである場合、その二人の間で知らないうちに合意されてしまうことがあることです。
そういうことが起こり得る可能性を感じた場合は、特に自分の上司に対するタイムリーな報告と判断基準の共有をきちんと行っておくことが大事になります。
上司が必要情報を持っていないまま同意してしまい、自社にとって不利益な結果となることだけは避けなければなりません。
■交渉完了のデッドラインの設定
交渉開始前に交渉完了のデッドラインを設定しておくことは大事です。
それをしていない場合、後々の交渉過程で時間的に追い詰められてしまったり、思わぬ落とし穴にはまったり、あるいは交渉決裂となる可能性もありますので、決して軽く見てはいけないファクターです。
①デッドラインの設定の仕方
それではデッドラインはどういう基準で設定すればいいのでしょうか?
答えは非常にシンプルで、それ以上交渉の完了が遅れると自社にとって不利になるタイミングの手前です。
交渉完了後に行わなければならない契約履行のために必要な関係者への周知徹底や社内手続きのための時間などを十分に確保しておかなくてはなりません。
この設定が甘いと交渉過程の後半で自らが時間的 に追い込まれてしまい、交渉をするにあたっての心理的な余裕がなくなってしまいかねません。
②交渉の節目節目のスケジューリング
デッドラインの設定ができたら、そこから交渉の節目節目のスケジューリングをしておきましょう。これをすることにより交渉の工程管理ができるようになります。
③スケジュールの遵守
交渉は相手あってのことです。従い、スケジュールの遵守は簡単ではありません。
ただ、スケジュールが遅れがちになると後半戦で自分が心理的に追い込まれてしまいますので、遅れがちになっているという認識を持った時点で交渉相手に多少なりともプレッシャーをかけて交渉を進展させる必要があります。
この時に注意しなくてはいけないのが、交渉相手に進行が遅れるとこちらが追い詰められることを悟られないことです。
悟られたら先方がわざと交渉を遅らせてくるリスクも考えなくてはなりません。
従い、先方にとっても交渉が遅れるといいことがないということをイメージさせるようにしなくてはならないのです。
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