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阿Qと魯迅の日本旅 ~中国愛国青年との対話~

タイトル:阿Qと魯迅の日本旅 ~愛国青年との対話~

不穏な出会い

魯迅と阿Qが東京の静かな街道を歩いていると、突然、興奮した声が耳に入ってきた。

「靖国神社なんてものは、中国人に対する侮辱だ!俺が火をつけてやる!」

声の主は若い中国人青年だった。拳を握りしめ、目には怒りの炎が燃えている。魯迅はその様子に気づき、冷静に声をかけた。
「君、少し落ち着きたまえ。何があったのか話してみてくれないか?」

阿Qはその横で首をかしげながら言った。「おいおい、なんでそんなに怒ってるんだ?俺なんていつも村の奴らにバカにされても気にしないぞ!」

青年は二人に振り返り、憤然とした表情で答えた。
「俺たち中国人にとって、靖国神社は侵略戦争の象徴だ!そこに戦犯たちが祀られているのを許すわけにはいかない!」

魯迅は静かに頷きながら、青年の言葉を受け止めた。

愛国心の行方

魯迅は青年に向かって問いかけた。
「君の怒りの理由は理解できる。だが、なぜ火をつける必要があるのか?」

青年は声を荒げた。「そうでもしないと、世界中の人間に俺たち中国人の怒りが伝わらないからだ!日本人は過去を反省していない!」

阿Qは腕を組んで、得意げに言った。「いやいや、そんなのやめとけ。燃やしてもすぐまた建てるさ!それに、俺なんて自分の家が燃えても、どうせ勝った気分でいられるんだから!」

青年は阿Qを睨みつけ、「お前には愛国心がないのか!」と叫んだ。阿Qは鼻で笑いながら答えた。「俺の愛国心?俺の村が一番だ!でも、村の家が燃えたときは、俺だって笑ってたぞ!」

魯迅は阿Qを手で制し、改めて青年に向き直った。
「君の怒りは、愛国心から来るものだろう。しかし、それが破壊につながるのなら、本当に国を愛していると言えるのか?」

怒りと歴史の対話

青年は少し静かになり、うつむきながら言った。
「でも、どうしても我慢できないんだ。あの神社を見ると、中国の人々がどれだけ苦しんだかを思い出してしまうんだ。」

魯迅は穏やかに答えた。
「歴史の痛みを忘れないことは重要だ。だが、怒りだけで行動すれば、さらなる憎しみを生むだけだ。日本人の中にも、この歴史を反省し、平和を願う者たちはいる。それを無視してはいけない。」

青年は困惑したような表情を浮かべた。「でも、彼らが本当に反省しているなら、なぜ靖国神社は存在し続けているんだ?」

魯迅は静かに答えた。
「それは、日本社会の中にも多様な意見があるからだ。一部の人々が過去の行いを正当化しようとしているのも事実だ。しかし、そのような人々に対抗するのは、火をつけることではなく、対話と理解の努力だ。」

阿Qの妙な提案

阿Qは突然手を叩いて言った。「俺にいい考えがあるぞ!靖国神社を燃やすんじゃなくて、その前で大声で歌を歌えばいいんだ!『俺たちは勝った!』ってな!」

青年は呆れたように阿Qを見つめたが、思わず笑ってしまった。「そんなことをして、何の意味があるんだ?」

阿Qは肩をすくめて言った。「意味なんて考えるなよ!俺なんていつもそうだ。何も考えずにやりたいことをやって、それで勝った気分になれるんだ!」

魯迅は深い溜息をつきながらも、小さく微笑んだ。「阿Qの言うことは一見馬鹿げているが、破壊よりも笑いがある方が、まだ前向きかもしれないな。」

愛国心の新たな形

青年はしばらく考え込んでいたが、やがて顔を上げて言った。
「……確かに、破壊しても憎しみが増えるだけかもしれない。だけど、俺はどうやって自分の気持ちを伝えればいいんだ?」

魯迅は静かに答えた。
「言葉を持ちなさい。怒りを破壊のために使うのではなく、真実を伝えるために使うのだ。人々が理解し合うための努力を惜しまなければ、君の愛国心はより大きな力になるだろう。」

青年は少し戸惑いながらも、「わかった。俺なりに考えてみるよ。」と頷いた。

旅路の続き

青年と別れた後、阿Qは嬉しそうに笑った。「おい、俺たち、あの青年を説得できたよな!やっぱり俺たちは勝ったんだ!」

魯迅は小さく笑いながら、「いや、まだ彼の中に葛藤は残っているだろう。ただ、少しでも破壊ではない道を考えるきっかけになれば、それでいい。」と答えた。

阿Qはそれを聞いて大声で笑った。「まあ、俺の提案が効いたんだろうな!歌って笑って、それで全部解決だ!」

魯迅は阿Qの無邪気さに呆れつつも、その楽天的な態度が青年の心を和らげたのかもしれないと考え、再び歩き始めた。

旅はまだ続くが、今日の出会いは二人にとって忘れられないものとなった。

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