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もの草子#1「リコリス・リコイル感想戦」

初めに

 台風一過の日曜日、いかがお過ごしだろうか。昨日はとりあえず『もの草子』の執筆宣言をしたものの、「しばらく更新しないかもなぁ」などと考えていた。しかし、その夜、事件は起きた。TVアニメ『リコリス・リコイル』の最終回が放映されたのだ…その作品の出来に居ても立っても居られず、キーボードを打つことにした。普段アニメに触れることのない読者は、何の話をしているのか?と頭に疑問符を浮かべていることだろう。まずは作品の概要を簡単に説明していくとしよう。

『リコリス・リコイル』ってどんな作品?

 『リコリス・リコイル』は2022年7月より放送された、A-1Pictures制作のオリジナルアニメーションである。監督にアニメ『ソード・アート・オンライン』を手がけた足立慎吾氏、ストーリー原案は『ベン・トー』シリーズのアサウラ先生、キャラクターデザインには『この美術部には問題がある!』のいみぎむる先生を迎えた豪華製作陣だ。個人的には足立監督が関わっているのが嬉しかった。氏が過去に担当した『WORKING!!』という作品がすごく好きで…いつか紹介記事書きます。気が向いたら。
 まず、作品のあらすじを紹介しよう。公式サイトのイントロダクションを引用すると、以下の通りである。

平穏な日々――その裏には秘密がある
犯罪を未然に防ぐ秘密組織――「DA(Direct Attack)」
そのエージェントである少女たち――「リコリス」

当たり前の日常も、彼女たちのおかげ。

歴代最強のリコリスと称されるエリート・錦木千束
優秀だけどワケありリコリス・井ノ上たきなが働く喫茶「リコリコ」もその支部のひとつ。

ここが受けるオーダーは、コーヒーやスイーツの注文から、
こどものお世話、買い物代行、外国人向けの日本語講師etc、
「リコリス」らしからぬものばかり。

自由気ままな楽天家、
平和主義の千束とクールで効率主義のたきな、
二人の凸凹コンビのハチャメチャな毎日がはじまる!

TVアニメ『リコリス・リコイル』公式サイトより引用

簡単にまとめると、リコリスと呼ばれるエージェントの少女たちが繰り広げる、笑いあり涙ありの日常系?ガンアクションアニメである(忙しい人用)。
 次に、主要な登場人物を紹介しよう。筆者の独断と偏見で書いた文なので悪しからず。

  • 錦木千束…本作の主人公の一人。喫茶リコリコの看板娘にして、10年前に起こった大規模テロ「電波塔事件」を解決したと言われる凄腕のリコリス。天真爛漫な元気っ娘。声を担当された安済知佳さんの演技が光る。

  • 井ノ上たきな…本作の主人公の一人。京都からDA本部に転属してきた優秀なリコリスだが、ワケあってリコリコへ左遷された。クールな黒髪ロングの美人さん。射撃の腕は千束より上。店員時のツインテールが素晴らしい。(当社比)

  • 中原ミズキ…喫茶リコリコの店員の一人で、皆の頼れる姉貴分。呑兵衛なのが玉に瑕の、残念美人系の眼鏡女子。素敵なダーリン募集中らしい。小清水さんのこういうキャラ、大好きです。

  • クルミ…一見ただの愛くるしい幼女に見えるが、年齢不詳。ある事情からリコリコに居候している。基本的に冷静で無表情だが、常連客に混じってボードゲーム大会に参加するなど、社交性はある。笑顔の可愛いマスコット的?存在。

  • ミカ…喫茶リコリコの店長。その正体は元DAの訓練教官であり、千束や同じく1stリコリスのフキからは「先生」と呼ばれている。大人の色気漂うダンディなおじ様。各作品に一人はこういうイケオジ欲しいよね。

  • 真島…本作の敵役。「電波塔事件」の生き残りらしいが…?物事のバランスをとることに強いこだわりを持つテロリストであり、10年前と同じく大規模なテロを目論む。本当にいいキャラしてるので、あなたもきっと好きになるはず。

  • 吉松シンジ…「吉さん」と呼ばれる、リコリコの常連。どうやらミカの旧友らしいが、その正体は…?スーツをビシッと着こなした大人の男性で、こちらもミカ同様、色気がすごい。ちょっと吉良吉影っぽいかも?

 以上が基本的な作品紹介になる。他にもOPのClariSさんやEDのさユりさんが素晴らしいよね、みたいな話をしたいところだが、それはまたの機会にとっておこう。ここからは、個人的にアピールしたい作品の見どころを上げていこうと思う。

作品の見どころ

❶アクション

 作品紹介でも述べた通り、この作品はガンアクションが魅力の一つである。昔からSFや裏社会を題材としたアニメはアクションシーンが肝となる。有名作品で言うと、『カウボーイビバップ』『シティーハンター』『BLACK LAGOON』などが例として挙げられる。彼ら/彼女らのガンアクションに影響され、モデルガンを片手に部屋でポージングした少年少女も少なくないのではなかろうか?筆者も昔、『PSYCHO-PASS』シリーズを観た後にプライズのドミネーターを持って執行官ごっこをしたものだ。本作、『リコリス・リコイル』もアクション映画顔負けの格好良い戦闘シーンを魅せてくれる。おすすめの回は第2話『The more the merrier』第3話『More haste, less speed』。疾走感のあるBGMもさることながら、1stリコリスたる千束の異常なまでの実力が垣間見えるアクションは必見!また、リコリスの制服とともに支給される学生鞄の仕組みが面白いので、一度調べてみてほしい。

❷キャラクター

 次は、アニメ作品を語る上で欠かせないキャラクターの魅力について。簡単な人物紹介は先述してあるので、ここでは一部のキャラについて、より細かくその個性を掘り下げたい。
 まずは主人公その1、錦木千束。10年前に起こった大規模テロ「電波塔事件」をたった一人で解決したリコリス…なのだが、その性格はどこにでもいる普通の女子高生。美味しいものが好きで、可愛いものが好きで、「私はいつも、やりたいこと最・優・先!」と楽しげに語る様は観ているこちらも思わず笑顔になってしまう。飄々とした物腰で掴み所はないがいつもハイテンション。戦闘中もまるでゲームでもするかのようにさらりと敵をいなしていく。しかし、人の命には敏感で、徹底した「不殺」を貫いている。緋村剣心をご存知の読者は、なんとなく辛い過去があったのかと感づくところではあろうが、詳しくは『リコリコ』本編を観てほしい。この徹底した不殺主義が物語の後半でカギとなるのだ…千束役を演じるのは声優の安済知佳さん。千束の笑い声や独特の節のついた話し方が素晴らしく、多くの視聴者を虜にしたことだろう。やはり安済さんの女子高生役は良いものだ。
 千束を紹介したならば避けては通れないのが主人公その2、井ノ上たきな。優秀なリコリスではあるものの、少し暴走特急気味なところがある。クールな女の子だが、どちらかというと、幼い頃から真面目に任務をこなそうとしてきた「委員長タイプ」かもしれない。人物紹介でも触れた通り、喫茶リコリコで店員をしている時は低めのツインテールにしているのだが、私はこのビジュアルにやられてしまった。DA本部への復帰を焦って、リコリコに来たばかりの頃はリコリスらしからぬ言動をする千束に噛み付くことも少なくなかった。そんな「リコリスとしての自分/世界」しか知らなかった少女が千束に出会って、「井ノ上たきな」という一人の女の子としての人生を始めていくのがこの物語のポイントの一つだと勝手に考えている。(初期も特段人間味がないわけではないが、DAの外の暮らしに前向きになってからのたきなは一味違います)そんなたきな役を演じるのは若山詩音さん。安済さんと併せて、キャスト発表の時に『SSSS.DYNAZENON』を思い浮かべた人も多いだろう。
 以上、主人公二人を細かく紹介したが、他にも多彩なキャラクターが登場する。ここでは取り上げなかったが、フキというキャラも筆者のお気に入りだ。また、ハッカーのロボ太も人気のキャラクターだろう。アニメらしく分かりやすいキャラづけの人物も少なくないが、それほど記号的に感じないのもこの作品の良いところだ。

❸ストーリー

※ここから先は『リコリス・リコイル』本編のネタバレを含みます。ネタバレ抜きで作品を楽しみたい方は終わりにへ飛んで下さい。

 最後に、ストーリーの魅力について語っていくのだが…申し訳ない。こればかりはネタバレに配慮するとあらすじ以上のものはお出しできないため、本編の内容にガッツリ踏み込んでいく。そのため、上にもあるように、ネタバレが無理な方はここで一旦お別れだ。❶❷の内容だけでも興味を持っていただけた/記事を楽しんでいただけたのなら幸いである。
 さて、紹介するストーリーの魅力についてだが、ここからは筆者の個人的なシロート解釈が綴られることを注意されたい。では、やっていこう。
 まず、『リコリス・リコイル』は日常系シリアスなバトルものハイブリット作品であると考えた。最後まで本作をご覧の方は分かると思うが、終盤の展開はシリアスそのもの。紹介文にあるような「千束とたきなのドタバタ!リコリスコメディ」みたいな緩さは無い。しかし、それこそがこの作品の魅力の一つだろう。ただシリアスな展開だけを続けてしまうと、視聴者を選ぶことになってしまうだろう。普段からバトルものやSFアニメを嗜む人向けの作品になってしまう。一方、女子高生がゆる〜く日常を過ごすだけのアニメでも、ターゲットが絞られてしまう。だが、『リコリコ』はそれを上手い塩梅でミックスすることで、ここまで多くの人の目を惹きつけたのではないだろうか?その結果シリアスな展開の中にも希望がキラリと光るような明るさ、前向きさがこの作品にはあったように感じる。
 そして、この作品は『千束とたきなの物語』である。より正確に言うならば、前半=たきなの物語後半=千束の物語という構図だと私は考えている。❷でも述べた通り、たきなは千束に出会ったことで人生を大きく動かされた。第3話での「私は君と会えて嬉しい!」という千束のセリフと、色鮮やかに表現された世界が目に焼き付いて離れない。それは、今までリコリスとして生きることだけが全てだったたきなにとってどんなに衝撃的だったのだろう。そして、そんな太陽のような千束
の姿に胸を打たれた視聴者も少なくないはずだ。だからこそ、私は後半の千束に少し違和感を覚えていた。なんというか、はっきりしない子だなぁ、と。しかし、見方を変えると自分なりに納得できた部分がある。前半の『リコリコ』において、物語はたきな視点に近い形で進む。我々視聴者もたきなを初めに知り、その上で千束と出会う。そのため、「たきなから見た、自分に新しい世界を見せてくれた人」としての千束という人物像が無意識のうちに強くなっていた。だが、実際の千束はたきなと一つ歳が違うだけの、少女だった。聖母でも聖人でもない。むしろ、知らない間に大きな期待や宿命を背負わされ、恩人と思っていた人に利用されていた子供なのだ。だから、自分の救世主を殺して生き延びることにも踏ん切りがつかないのも当然である。平生はアニメのキャラにリアリティを求めるのに、こういうところでは超人的な思考を強制するなどおかしな話だ。女子高生に、「それが君の運命なのだから」といっても酷な話だろう。そう考えると、後半の『リコリコ』は千束という一人の「人間」の物語であり、視点は千束側のものとなっているのだと分かる。この二重構造が作品に深みを出しているのではないか?と私はまたしても勝手に考えるのであった。
 最終回を終えて、所感としては「続編作るつもりなんだろうな」というのが正直なところではある。伏線を回収しきらず、ある程度問題を未解決のままにしてるので。1クールで綺麗さっぱり完結させてもよかったのでは…とは思った。しかし、終盤は駆け足気味だったり、粗い部分があったりしたものの、久しぶりにアニメに熱中できて楽しい時間を過ごせたので良かった。この記事を読んでもし興味を持ったのなら、『リコリス・リコイル』を是非観てほしい。




終わりに

 徒然なるままに日々の雑感を書き連ねる『もの草子』第一回、いかがだっただろうか。日記というよりただのオタク語りとなってしまって申し訳ない。次回は趣味で行った散歩の話とか読んだ本の話とかします。多分、いつになるかわからないけど。ちなみにタイトルの「リコリス・リコイル感想戦」というのは、この作品の公式ラジオ番組『リコリコラジオ』のコーナー名からとってきたものである。アニラジ(アニメの宣伝を兼ねたラジオ番組のこと)は作品の理解を深めるだけでなく、出演された声優さん達のことも知れる良い機会になるのでおすすめだ。私は『リゼロ』のラジオに人生を30度くらい変えられた人間なので…リコリコラジオはアニプレックスさんの公式YouTubeチャンネルで無料公開されているため、興味があればそちらも併せて楽しんでいただきたい。それではまたいつの日にか、偶然見かけたら記事を覗いて行って欲しい。

#日記 #コラム #アニメ #アニメ感想文 #最終回 #リコリコ  



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