ワープロ音頭

『回田国』  原口無虫



「水は方円の器に随う」  『荀子』


「筆無精」

ハッピーニューイヤー
年を
越して
脳天気
ストレス性の
貧乏くじ
物忘れが
激しい
真っ白な

忘れ物が
多い
真っ暗な

積もって
しまった
フラストレーション
何かを
失くして
物探しの
画面
何かを
見つける
探し物の

五十の
手習い
筆無精
液晶の
予報に
マスターベーション
何食わぬ
顔で
舌舐めずり
穴が
あったら
入りたい
キリギリス
雪の
底で
家を
掘る
冷たい
北風
スコップが
重い
積もる話
ぎっくりと
腰を
折り曲げて
とどの
詰まりは
ジェットプリント
生活
降って来る
冬の

ドタバタドタバタと


「化合物」

何でもない事だ
と思う
僕たちの

ボルトと
ナットで
無を
組み立てる
不満の
神が
並べる

ある事ない事の
中間に
何かが
生まれるはず
だから
らせんの
糸に
踊る
世界
笑えばいいのだ


「求」

サロンとアカデミズムへの反


「春」

オヤジが

のこのこと
趣味は
ロリータ
足取りも
軽い
遊びの
ブレーキ
若さは
犯罪


「アウグスチヌスの定理」

無限級数の和に答えはない


「無知礼賛」

反世界は全てを無にしてしまうのだ
反世界がないなら無もない
無は無なのである
人は母から生まれる
宇宙の種があるはずだ
神はモーセに言われた
「わたしはある。わたしはあるという者だ。」
僕が死んでも無ではない
「天国があると想像してごらん」
三次元の世界に生きる人で無しである


「仙人」

半端な
雪じゃない
途中の
転倒
大丈夫
道の
奥に
お気に入り
秘密の
温泉
好い加減


「反ロック的」

僕たちの生活は
お前の歌じゃない
楽天知命
仕事が終わったら
静かに死ぬのだ


「乍ら」

日本が悪い
僕は狂い
乍ら
国を呪う

死ななきゃ直らない馬鹿
約束の地

自由が欲しい
僕は殺し
乍ら
愛を食べる

生きているうちが花だから
楽園追放

あの世の生
この世の死

世の中は矛盾

変だ
僕は迷い
乍ら
弁証法

神の食卓に招かれた者は幸い
いけにえを捧げる

テーブルの上
四色問題

青い皿
目玉焼きに
ケチャップ

世界の証明
乍ら族が
神に帰る


「八分目」

志両方円満一番手
石頭髙橋俊彦勇足
生仏死物狂人柱 完


「生ガキ」

養殖の
生ガキ
つるんと
しょうゆ顔
うわさの
丸飲み
ふにゃりと
青臭い
フライに
してみりゃ
千切り
キャベツ
天然の
化けの皮
ころんと
成仏


「死んだら教」

理想の社会
歌う者
神を捨て
金を求める

この世は天国

天国に行けない
生活
悪である

死んだら
地獄

荒地だ

理想の人間
学ぶ者
金を捨て
神を求める

あの世は
天国

天国に行ける
生活
善である

死んだら
天国

楽園だ

世の中は
二律背反
天国と地獄

自由を
食べる者は
死ぬ

知恵の木
死んだら教の
答えである


「げっぷ」

Yeahだ
恥ずかしい
言葉を
吐く
豚は
ケンタッキーの
骨を
しゃぶって
馬鹿と
転がる
共食いの

肉は
毒だ
頭を
振りながら
獣は
売る
ミュージック
お前の
金が
世界を
救う
Yeahだ


「三種の神器」

ソロモンの石
叶結び
フェルマーの剣


「ら行」

らりるれろ
寝禅
+と-
しかばねのポーズ
答えは無
ステレオの
LとR
ヘッドフォン的証明
左と右
違いが分かる
男と女
黄色い声で
日本語
ブラックとホワイト
頭の中心
マンダラ図
凸と凹
合体
〇と✕
真言を唱える
らりるれろ


「乙未」

北斗の
黙示に
導かれ
蝦夷共和国の
首都
函館の
五稜郭に
発明神社の
御神体
聖なる箱を
置く


「専ら」

詩人たる者
専ら
行に
打ち込むべし


「別の者」

三途の川
皆で渡れば恐くない
月の砂漠を
ラクダの行列
井戸の底
一人で空を見上げる
針の穴に
クモの糸


「蛙」

中古のコミューン
東西南北
知足の隠れ家
四位一体
重力場
食卓のマリア
体と血
蛇の目に涙
処女受胎
主はキリスト
万物理論
聖霊と子と
父と母の
十字架
僕は王様
世界の箱
神にハレルヤ


「球充填」

接触数
十二個の
組み立て
正二十四辺体と
正二十五辺体
体積は
等しいが
表面積が
異なる
ケプラーの
予想に
反して
正二十五辺体が
最密


「サヴァンの福音」

始めに素数あり
加減乗除
全ては満ちた


「蘇我」

未来を
信じる
一代様
日本に
ユダヤの
救世主が
現れる
大円寺の
十字架


「特許」

神の
計らい
選ばれし者に
許しの
秘跡
汝は
聖なる石
十字架の
救い
キリスト
世の

我を
照らしたまえ


「知足道」

鳥と寝禅
魚と散歩
王の点心
人に作法
空海と十文字


「ら抜き」

冬の木
トランプが
一枚
箱の中
ジョーカーは
双子
言の葉


「中心」

惑星の
太陽系
すべてを
丸く
収める
万有引力
エルサレム
聖なる都
神は
十二支の
息子を
集める


「犬の舌」

だらだらと

よだれを
垂らして
行って来る

芸はないが
よく吠える

ねえねえと

餌を
ねだって
待って居る

牙はあるが
すぐ舐める

街はざわめき
首輪に鎖

散歩が好きな
二人の
濡れ場

鼻を
くんくん
おしっこ
うんこ

ちょっと古風で
似た者夫婦

べろべろと

今日も一日
犬の舌


「裏小路」

痛いとこ
突っつく
相手に
虫酸が
走る
ぐさっと
一発
お灸を
据えて
がりがり
オヤジの
下水道
掘り返す
姉さん
横槍
よだれ掛け
もう一度
口を
開けば
歯に

舌の先
何となく
気になる
刺身の妻


「コミューン」

天国は
僕たちの理想
反イマジン主義者が
働いて生き
闘って死ぬ


「淫ら」

女は
地獄の門

肉体から
出て
肉体へ
入る

男は
地獄の鍵

肉体へ
入れて
肉体から
出す

肉体は地獄

母は
天国の門

精神から
出て
精神へ
入る

父は
天国の鍵

精神へ
入れて
精神から
出す

精神は天国

肉体を
地獄に返し
精神を
天国に返す

僕たちの
淫ら

神は
全てを
許し
洗い
清める


「三文句」

天国があると想像してごらん
セックスとドラッグのないチルドレン
僕たちの生まれる前からある世界


「帰り道」

西向きの
魚屋で
心臓を買う
死んだ父と
羊水の匂い
動き出す
気持ちだけ
急いで
日が沈む
母に移植と
袋の鼠


「θ理論」

円はすべて面積が3の倍数である


「玉串」

仏壇に向かい
香を焚き
四連の
みたらし団子
鈴を打て
三本
百円
手を合わせ
賞味期限を
守りなさい


「合同」

正四面体十個と正四角錐五個
正五角柱一個と正五角錐二個


「今一つ」

飲み込めない
大豆の小粒
モーツァルトの死に方
健康ブームという
気になる病
用は長持ち
乗り回しの
限定車で
凡人の買い物
オムニバスは安い
ひきわりながら
円周率
糸を引く
ロバの耳に
植物性
鼻から牛乳


「へっちゃら」

ほら
またね
ぐーたら
お腹の
ニート
笑う
おならの
プーさん
らっぱ
吹き


「七夕」

世界が平らになりますように  ら族


「棒倒し」

休むに
似たりと
横しま男の
物言いは
お金に
無心の
立ち居
振る舞い
はべらかし
知に
働けば
立て替え女の
物言わず
お金に
未練の
寝る子
起こして
はぐらかし
下手の
考え
角が
立つ


「逆様」

教科書は
信じるな
世の中を
引っ繰り返して
グレンと
予言のように
決まっている事
常識は
逆様に
落ちて行く


「紅海」

甘酸っぱい
リンゴ
若気の
至り
禁断の
果実
失楽園
魂の
放浪
迫害と
神の

妄想の

カタルシスの
反乱
排泄物の
ために
重力は
ある
雪の

カギ十字の

王は
笑う
方言の
道化師
バベルの
塔に
怒りの
台風
混乱と
分裂
街は
下痢だ
種の
ない
手品
缶ジュースが
落ちる
父と
母と
子の
弁証法
古い
家を
売る
いけにえの
牡羊座
体と
血の
数学
胆のうの
結晶
厄年を
過ぎ越し
楽天知命
イーハトーブへ
旅立ち
未来の
真実
道は
開ける
菜園で
無口に
お茶を
飲む
自由の
骨を
埋める
詩人
空を
見上げる
一杯の
答え
万物理論
頭が
熟れる
三種の
神器
創造物の
ために
重力は
ある
ソロモンの

叶結び
フェルマーの

自然と
人間の
対話
運命の

世界の
共通語は
五感だ


「ふ」

都の西北
田の上に
ピラミッド
日が沈む
地下深く
サタンの
横槍
穴を掘る
御茶ノ水
丘の上に
オベリスク
星が光る
天高く
ノアの
円盤
空を飛ぶ
道の奥
山の中に
リンゴ
月が笑う
箱一杯
モナリザの

世界が転がる


「蝦夷歌」

ヤーレヤーレヤーレヤ
五町内のネブタこだ
よぐよぐ見でけろじゃ


「器」

シャボン玉
今日を
忘れて
ユーレカ
僕の
器と
湯上がりに
飲む
ビールの
重さ
浮かぬ顔
明日も
風に
ぶらぶらと
アルキメデス


「と」

両手で
数えた
振込日
駒並べ
斜め後ろは
苦手の
成金
病気を
売って
本を
買う
六本木の
猫の
手招き
苦しい


「わらはんど」

わしズムの尻尾に
ら族の頭
東北と西南
わらはんどの
綱引き
正反合
うるさがたの手に
おとなしめの足
北西と東南
おどおが様の
丸投げ
表裏一体
人よ人よに人見頃
不二山麓にオウム鳴く
割り切れないが
仲を取り持つ
超越数
百分率の旗


「辞世の句」

天国があると想像してごらん


「墓」

平らに
埋め立て
地球は
青い
海になる


「円」

       修     
    下     身
     天         斉
   平      家
     国  治


2007~













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