オーストラリア 「森が見た夢」より 最終話
目の前に広がる海を眺めていると、僕は少しの間動けなくなっていた。
海岸の岩場に腰掛け、何を撮るわけでもなくカメラを構えたまま、じっと何かが起こるのを待つかのように。
聞こえてくるのは岩にぶつかる波の音。それも穏やかな揺らぎであるために、そして見渡す限りそれ以外に音をたてるものがないために、ひとつひとつの水の撹拌を耳のそばで、若しくは耳の奥で聞いているようだった。
どのくらいファインダーを覗いていたかわからない。シャッターを切ったのは、見下ろす透明な水の中を視界の右から左へとウ