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<Q&A数学>サイン・コサインって何か説明できる?【前編】

こんにちは。高校数学を教えているsigmaと申します。


「10分でおさえる!高校数学のかんどころ」と称したこのシリーズでは、わかりやすく、また本質を捉えた解説を心がけながら、数学の諸分野に関してご紹介させていただこうと思います。


(なるべく堅苦しい・ややこしい部分は解きほぐしながら進めていくつもりです…!)

早速、第1回は数1・三角比の分野になります。

まずは、以下の「チェックポイント・クエスチョン」に即答できるかどうかで、自分の数学力を確認してみましょう。


「三角比」チェックポイント・クエスチョン

目標解答時間:10分以内/10問


Q1. 0°≦θ≦180°を満たしている角度θが、何かランダムに1つ与えられたとします。これに対して、sinθとはどういった値のことを言いますか?

またcosθ、tanθについても、同様に説明してください。

コメント:数Ⅱ履修者は、「実数θに対して、」で考えてみましょう。



Q2. 角度θに対して、sin²θ+cos²θ=1はなぜ成り立ちますか?

コメント:「そう教科書に書いてあるから」「公式だから」は答えになっていませんよ!



Q3.角度θに対して、1+tan²θ=1/cos²θはなぜ成り立ちますか?

コメント:これはあることからすぐにわかります。



Q4. 90°<θ≦180°とする。sinθ = 3/5のとき、cosθ, tanθを求めてください。

コメント:もし可能なら、上の2つの公式に代入せず暗算で解いてみましょう。



Q5. 三角形ABCの面積Sが、S=1/2×bc×sinA(「辺×辺×その間の角のサイン」の半分)で求まるのはなぜですか?

コメント:これも「公式だから」は駄目です!



Q6. 正弦定理は、中学でやった「◯◯◯の定理」の発展版です。◯に入る言葉は何でしょう?

コメント:正弦定理で、角が90°の場合を考えると…



Q7. 余弦定理は、中学でやった「◯◯◯の定理」の発展版です。◯に入る言葉は何でしょう?

コメント:余弦定理で、角が90°の場合を考えると…



Q8. 三角形の3辺の情報だけで、鋭角三角形か?直角三角形か?鈍角三角形か?を見抜く方法を教えてください。

コメント:正弦定理と余弦定理、どちらを使うでしょうか?



Q9. どんなテキトーな数3つに対しても、それを3辺にもつ三角形はつくれますか?理由とともに答えてください。

コメント:例えば1cm,1cm,10mの三角形は作れなさそうですね。作れる条件は何でしょうか?



Q10. 直線y=ax+bとx軸のなす角のtanはいくつですか?

コメント:何となくわかった人も、もう一度頭の中でイメージしてみましょう。




お疲れさまでした!これでチェックポイント10問が終わりました。

何問ほど答えられたでしょうか?

とりあえず半分以上が正解できていると実力十分かなと思います。

では、ここから各問題を通して、三角比の本質を掴んでいきましょう!



三角比は「直角三角形の2辺の比」を「拡張(≒応用)」させたもの


Q1. 0°≦θ≦180°を満たしている角度θが、何かランダムに1つ与えられたとします。これに対して、sinθとはどういった値のことを言いますか?
またcosθ、tanθについても、同様に説明してください。

このQ1の解答でこのように答える人がいます。

『サインは斜辺分の縦。コサインは斜辺分の横。タンジェントは横分の縦。』

これ自体は「一部」正しいですが、説明として明らかに十分ではありません。ではどこが不十分なのでしょうか?


まず言いたいことの説明自体が足りていませんね。

θとサイン、コサインの関係性が不明ですし、斜辺とか横とか縦とかいきなり出てきて何のこと?となってしまいます。


(僕自身教えていて感じるのは、意外とこのあたりの説明が雑な生徒さんが多いです。もちろん自分の中での覚え方としてはいいのですが、この理解しかしていないと計算系以外の問題でつまずくことが多いです。)


きちんとそこを補った上で、言いたいことを形にしてみると、

θを角に持つような直角三角形を考えて、その三角形の縦の長さと斜辺の長さの「比」をsinθという。
(より正確に言うと、sinθ=(縦の長さ)/(斜辺の長さ)です。) 同様に、
横の長さと斜辺の長さの比(横の長さ)/(斜辺の長さ)cosθといい、
縦の長さと横の長さの比(縦の長さ)/(横の長さ) tanθという。      …(*)

になりますね。しかし、これでもまだ不十分なのです。



そもそも、この「直角三角形によるsinの定義」は大きな制限があります。

“θを角に持つような直角三角形”の3つの角は、θと90°と90°-θです。

これがすべて正である必要があるので、0<θ<90°となります。


つまり(*)の定義では、0<θ<90°である場合しかsinが定義できておらず、Q1の0°≦θ≦180°には及んでいません。


そのため、教科書で行ったような「単位円(原点中心、半径1の円)」による定義が必要になるんですね。

この辺り、教科書で複数の定義が紹介されていますが混乱しないよう、きちんと2通りの定義がある理由を押さえておきましょう。


単位円による定義は、

”斜辺分のタテ”みたいな「直角三角形の定義」を活かしつつ
0°〜90°以外のもっと広い範囲のθに対しても「2辺の比みたいなもの」を考えたい!

という動機から生まれています。見出しの【三角比は「直角三角形の2辺の比」を「拡張(≒応用)」させたもの】という言い方はここから来ています。



サイン・コサインの定義

では、単位円によるサイン・コサインの定義です。

x軸の正の方向から反時計周りにθとなるように、原点から半直線を引く。
また、その半直線と単位円の交点Pの座標をP(x,y)とする。
このとき、cosθ=x、sinθ=yと定める。

なんだかすごくめんどくさそうですね…。

しかし、この文章のパーツは1つも無駄にできません。


角度を誤解なく表現するには、「x軸の正の方向」というはじまりと、「反時計回り」という方向という、2つの基準を定める必要があります。


そしてcos, sinのそもそもの定義だった「直角三角形の2辺の比のようなもの」は、単位円上で直角三角形を作ることで、(斜辺の長さ)=1になるので、横の長さか縦の長さ(のようなもの)を気にするだけでよいわけです。


なので上記のように、横[縦]の長さの代わりに、Pのx座標[y座標]に置き換えることで、cosθがマイナスの場合、すなわち0°〜90°以外の角θに対しても定義ができるわけです。




【参考】ちなみに、この説明の順番も大事です。


「x軸の正の方向から反時計周りにθとなるように、原点から半直線を引く」

ここが見落としがちですが、

θが与えられているので、まず先にθとは何かを表現しなければいけません。

「θとなるように線を引く」→「交点の座標を置く」の順番です。


sin120°って何?と聞かれたら、まず120°を測って、そこからsinを説明しますよね。当たり前なはずですが、ここを押さえず、以下のように答える人が多いです。

単位円上の点をP(x,y)とする。OPとx軸のなす角がθで、cosθ=x、sinθ=y。

この説明のアヤシイ点は、先に単位円上の点Pから決めていることです。

Pをすでにある1点に決めているのか、それともどの1点でも良いとしているのかがわかりません。

問題文の言い方からθは与えられている、つまりすでに(θ=57.2°みたいに)何か1つに決まっているので、「単位円上の点を定めて、なす角がθ」は意味不明なんですね。


このようなポイントに普段から意識しておくこそが、数学力が大きく向上するカギだと僕は思います。(計算はできても論理がハチャメチャだと、数学では点が安定しません。)



最後にタンジェントの定義です。これは複数の定義の仕方があります。

【定義1】(単位円のsin,cosの定義の流れで)
x軸の正の方向から反時計周りにθとなるように、原点から半直線を引く。
また、その半直線と単位円の交点Pの座標をP(x,y)とする。
このとき、cosθ=x、sinθ=yと定める。そして、y/x (=sinθ/cosθ) =tanθと定める。
(ただし、cosθ≠0とする。)

これが先ほど紹介した単位円の定義の「ついで」にtanを定める方法です。

注意すべきは、分数で表現しているため、(分母)≠0が条件についてくるということです。数学では0で割る操作は認められていません。


別の定義もあります。こちらは教科書でよく紹介されています。

【定義2】(傾きとしてtanを定義)
x軸の正の方向から反時計周りにθとなるように、原点を通る直線(≠半直線)を引く。
その直線とx=1の交点をQとするとき、Qのy座標をtanθとする。
(ただし、原点を通る直線がx=1と平行になるときは、交点がないので定義しない。)

こちらの場合も、実は本質的には【定義1】とあまり変わりません。

(ただし、【定義1】ではsinθ/cosθ=tanθは定義ですが、【定義2】では定義ではなく性質なので、厳密には証明が必要です。)

ポイントは、tanが定義されない場合(θが90°などの場合)の表現の方法です。こちらもきちんと押さえておきましょう。





以上でようやくQ1の解説が終わりました。長かったですねえ〜。

ここまで読んでいただいた時点で、自分の粘り強さを褒めてあげてください。


「全然10分じゃねえ!」とお思いの方もいらっしゃるかとは思いますが、

10分はあくまでチェックポイントの時間でした。

数学の本質にせまる説明を文章でしようと思うと、ある程度の分量を要することになってしまいます。お許しください。


では、長くなりましたので、Q2〜Q10の解説は次回に持ち越しさせていただきます。


お読みいただきありがとうございました。
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