祝『7'scarlet』Switch移植!姉妹作というべき作品『ワールドエンド・シンドローム』との関係とあわせてご紹介
アイディアファクトリーの女性向けゲームブランド「オトメイト」は、2024年2月18日にファンイベント「Dessert de Otomate(デセール ドゥ オトメイト)2024」を開催した。発表されたタイトルのなかで、私が特に驚かされたのが、2016年にPS Vita向けに発売された『7'scarlet』のNintendo Switch移植版だ。
オカルトホラー要素を含む女性向け恋愛アドベンチャーあり、ノスタルジックで美麗なグラフィックと、没入感を引き立てる伝奇要素、切ないストーリテリングが特徴的な作品である。『魔都紅色幽霊撃隊』や、「Deadly premonition」シリーズのプロデュースなどで知られる金沢十三男氏がシナリオを手がけ、同氏が所属するトイボックスが開発を担当している。
舞台は死者が蘇る伝承「屍者伝説」が伝わりミステリースポットとしても名高い「奥音里」という田舎町。主人公は1年前に奥音里で「兄・ハナテ」が行方不明になった真相を探るため、幼馴染とともに「奥音里禁忌倶楽部」のオフ会という名目で町を訪れる。そういえば住民限定のシークレットライブのために、国民的アイドルグループのセンター「エイト」が奥音里にやってきたらしい……というあらすじ。
ところで『7'scarlet』には、同じく金沢十三男氏とトイボックスという座組で制作された、姉妹作にあたる作品があるのはご存じだろうか。それは2018年アークシステムワークスから、PS4/PS Vita/Switch向けにリリースされたアドベンチャーゲーム『ワールドエンド・シンドローム』である。
こちらのストーリーとしては、死者が蘇る伝承「黄泉人伝説」が伝わる「魅果町」という田舎町。主人公は「姉」を亡くした傷が癒えないまま、高校転入のために魅果町に住むことになり、ひょんなことから「ミステリー研究会」入部することになる。そういえば町を舞台にした小説の映画化のために、国民的アイドルグループのセンター「二階堂玲衣」が魅果町にやってきたらしい……というあらすじ。
奥音里=魅果町
奥音里禁忌倶楽部=ミステリー研究会
屍者伝説=黄泉人伝説
エイト=二階堂玲衣
例としていくつかを上記で示させていただくが、『ワールドエンド・シンドローム』の舞台設定やキャラクターの配置は『7'scarlet』と対になっている。そのため鋭いプレイヤーだと、片方をプレイするともう片方の設定に感づく可能性があるという、珍しい体験が味わえるのだ。
また両作のオープニングテーマの歌詞には、メインキャラクターの名前が隠されているという共通点も存在。こちらは作詞を手がけた金沢氏が、『ワールドエンド・シンドローム』発売当時に「いつも通り、ちゃんと仕掛けもありますよ」とポストしており、意図的に仕掛けられたものだ。
『7'scarlet』オープニングテーマ「World's End Syndrome」
遠き“日の”=迦具土ヒノ
果てな“い空”=甘梨イソラ
“永遠”=櫛奈雫トア
駆けだ“そう、透け”ていく=建比良ソウスケ
見上げた“夕月”に=叢雲ユヅキ
解き“放って”=ハナテ
『ワールドエンド・シンドローム』オープニングテーマ「Brand-New World」
眩“暈み”たいな=楠瀬舞美
フ“レイ”ズ=二階堂玲衣
“見失”った=甘奈未海
さ“さや”き=神代沙也
“雪の”ように=音無雪乃
と、ここまで共通点をあげさせていただいたが、ストーリーの展開自体はほとんど異なり、どちらからプレイしても新鮮な気持ちで楽しめるため、単なるベース企画の流用だとは考えていない。また両作の世界観同士は地続きで、なんと一方では隠されていた設定がもう片方で明かされたり、TIPS内で間接的に言及があったりするのだ。
だからこそ『7'scarlet』と『ワールドエンド・シンドローム』の関係性はまさしく双子のようで、1作だけでも面白いが両方プレイするとニヤリとできるという、金沢氏の用意したサプライズなのだろう。
乙女ゲーマーかつギャルゲーマーの私は抜かりなく2作ともプレイしていたが、それぞれが異なるメーカー同士からリリースされた、女性向け・男性向けの恋愛アドベンチャーだ。プレイヤー層が異なるためか、2作の共通点に言及したインターネット上の書き込みは少なく思える。だからこそ気づいている人間もたしかにいるのだと発信し、アーカイブとしての役割を果たしたいと考えたのが本稿の目的だ。今回の『7'scarlet』移植で、Nintendo Switchに両作が揃うため、気になった方は手に取ってみてほしい。
©IDEA FACTORY/TOYBOX Inc.
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