朝ドラ再放送で見たオードリーがかなり良かった件
2000年10月〜翌年3月までNHKで放送された連続テレビ小説(いわゆる朝ドラ)「オードリー」。
本放送の時は見てなかったが、今年の4月からBSで始まった再放送を最後まで見終えた。
あまり期待していなかったのに、かなり良かった。
あらすじ
京都太秦の撮影所にほど近い老舗の高級旅館「椿屋」の1人ものの女将である滝乃(大竹しのぶ)と、その隣に住む佐々木夫婦(段田安則、賀来千香子)は古い付き合いで、家族のように付き合っている。佐々木家に生まれた娘・美月を滝乃は我が娘のように可愛がり、ついには自宅に部屋を作って育てるようになる。
滝乃の計らいで名門校に通うようになる美月だが、子供の頃から撮影所に出入りしているうちに、映画の世界に憧れるようになり、やがて女優となるが、時代劇映画の人気低迷、テレビの普及と言った時代の流れに翻弄され、女優をやめ、テレビスタッフになり、やがては監督として再び時代劇映画を撮ることとなる。
期待していなかった理由
本放送当時、番組に期待できないと考えて見なかった理由はキャスト陣である。
主演の岡本綾は、CMで注目されたものの、女優としての実績はあまりなかった。
だが朝ドラでは、新人に近い女優を起用することも多く、それを多くのベテラン脇役で支えることも多いので問題ない。
ただ主人公を支える役として重要な両親役だが、段田安則は私にとってあまり有名な俳優ではなく、実力がわからなかった。
母親役の賀来千香子と、”準”母親役の大竹しのぶの間に立つ主人公の苦悩が描かれ続けるが、この2人は80年代の人気ドラマ「男女7人夏物語」のイメージが強く、このドラマのファンのウケを狙ったあざとさも感じる。
他に知っている俳優と言えば、映画会社社長の國村隼、椿屋の従業員の藤山直美。力のある役者だが、主人公を支えるには少し遠い存在に思えた。
良かった理由
まず俳優陣が思いのほかよかった。
岡本綾のセリフは決して上手くなかったが、しっかりと10代から40代までの変化を演じ分けていたのに、まず驚いた。その後大した活躍もせず、芸能界から姿を消したのはとても残念だ。
当時は無名だった堺雅人と佐々木蔵之介が、チョイ役ではなく、とても重要な役を演じ、凄い演技力を見せつける。特に助監督から社長まで登り詰める堺雅人の演じ分けは素晴らしい。VIVANTで見せたような変化ぶりであるし、後半の堂々とした話し振りは半沢直樹のようだ。
役者としては無名な長嶋一茂も準主役級の大役。もちろん決して演技は上手くないのだが、それでもかなり頑張っていた。
脚本もよかった。
朝ドラと言う長いストーリーでは、しばしばバランスがおかしい場面が出てくる。
関係ないストーリーが意味ありげに延々と描かれるが、結局ストーリー全体にあまり関係なかったり。
最終的に名作と言われるものでも、途中でかなり脱線しかけているのを強引に立て直す場面が見られることもある。
想像だが、放映開始時にストーリーが固まっていなかったり、途中で手直ししてしまったりするのではないか。
そう言う不自然さが、ほとんどなかった。
ストーリー自体は、かなり変わっていて、好みの分かれるものだと思うが、全体としてのまとまりが良かった。
特に、使い捨てられる脇役がほとんどいないのが良かった。
大概はロケットの発射台のように消えてしまう幼馴染の少年も最後まで主人公への愛を伝え続け、主人公を支え続ける。
主人公は朝ドラには珍しく、結婚もせず、子供もできないが、それでも最後はみんな幸せそうな顔をする。
世を拗ねて、難しい顔をし続けていた長嶋一茂演じる錠島が、最後に笑顔を見せたことには感動さえした。
亡くなった人はいたけれど、その人たちも最終回に幽霊として姿を表したりして、作者の登場人物への愛情を感じる。
思いつき
先日、真田広之がエミー賞で主演男優賞を取って話題になった。そのインタビューの中で時代劇への熱い想いが語られた。
そのインタビューを見て、同じように時代劇映画復活を目指す人々を描くオードリーと照らし合わせている方をSNSで何人も見かけた。
そこで私が思ったのは、長嶋一茂の演じた役は本当は真田広之が演じるはずだったのではと言うことだ。当時はまだ真田広之も日本で活躍していた。愚直に時代劇俳優を演じるこの役は、まさに打ってつけだ。