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生きるってことは愛だよ~病院入院日記2 手術当日の朝、一番大切なことを守る意味

手術日の朝が来た

「おはようございます」
夜勤看護師さんの言葉で目が覚めた。

昨夜、不安なまま、寝落ちしていたようだ。

前開きの病院のパジャマに着替える。
手術場に着ていくそうで
袖もホックで取れるようになっている。

「ちょっときついかもしれないけど、
このひざ下のストッキングも履いてください」

なるほど、きつい。
つま先は出るようになっているが、
ふくらはぎが締め付けられる。

「長時間じっとしていることになるので、
その間、ふくらはぎなどに血栓ができないように
予防するためです」

と説明を受ける。
つまり、
「エコノミークラス症候群」のようなことになって、
足の血管に血の塊ができて心臓や脳で詰まったりしないように予防するらしい。

ちょっと待って、紅茶を1杯飲ませてください

看護師さんは、点滴の準備も持ってこられた。
昨日、腕に刺した点滴用のルートに、これから点滴をつなぐ。

それ以降は、水分は点滴から行くようになるので
「絶飲です」

看護師さんが点滴をつなごうとする前に、

「ちょっと待ってください、
このレモンティーをちょっとだけ飲ませてください」

と頼む。

のどが渇いていたからではない。
これから当面、口から何も味わえなくなるから、
最後に、レモンの味を少しだけ楽しみたかった。

「おいしい」

これ、
意外にいちばん大切なことだ。
自分の身の上に感じて、あらためて実感した。

私はこれまで、福祉施設で介護をしながら、
利用者さんの飲食状況を記録に書いていましたが
「水分摂取150CC 主食6割 副食3割摂取」
と書いていました。

その内容に何の意味があるのか?
利用者さんにとって、何の意味があるのか?

その人にとって、一番意味があることは
「おいしい」と感じること。
「楽しい」と感じること。

こんな基本的なことをいつしか忘れていなかったか?

看護師さんは、私の「紅茶を最後にちょっとだけ飲ませて」というおねだりを聞いてくれました。

「よかったですね。
美味しそうな顔ですね。」
ちょっとジョークを言ってもらえて、
緊張がほぐれた。

「お守り」の意味

「お守りは、手術室までもっていっていいのですか?」
看護師さんに聞く。

手術室の入り口までは持っていって構わないとのことでした。
手元に、妻が渡してくれたロザリオがある。
妻も重い病気で、付き添いができないから、祈りを込めて私に預けてくれました。

「これ、お守りにして。大丈夫。私が祈っているし、マリア様もそばにいてくれるから」

ロザリオというのは
聖母マリアの記念の「数珠」のようなもの。

このロザリオに妻が、祈りを込めてくれました。

「お守り」の神秘的作用については、ここでは書くつもりはありません。
わたしは社会福祉士として、思想や宗教には全く中立の立場で書いているから。

ただ一つ、確かに言えることは
「お守り」には、「意味」がある。

その「お守り」がそばにあることで
そこには、私を思ってくれる人の祈りがあることを感じる。

そういう人もいないという人がいるかもしれない。
しかし、
「たった一人、あなたのことを思っている人がいる。
その人の祈りを、忘れないでください」

ある方からいただいた言葉だ。

「その人はね
あなた自身ですよ。
あなたをずっと思いやってきたあなた自身を、
忘れないでください」

妻の言葉と、
この、以前にある方からいただいた言葉を思い出したら、涙が流れた。

その人にとって一番大切なものを守る

わたしはこれまで、社会福祉士として支援する中で、
福祉サービスの利用者さんや入院患者さんの

「大切なもの」

例えば、
家族の写真、ご先祖様の位牌、大切にしておられるお守り、
その方が信じている宗教や宗派の記念のもの
そういうものを大切にしてきました。

これは、
ある意味、その方にとっては
衣食住よりも、
時には生死を超えて
重要な事柄でした。

このように大切なものを守るケアを
「スピリチュアルケア」と言います。

私はこの
「スピリチュアルケア」を大切にしてきました。

自分が実際に手術に臨む身の上になって
これまで私が指針にしてきた「スピリチュアルケア」の意味が
頭からではなく
心の感覚で身にしみました。

「きれいごと」こそ大切だ

「お守りなんて気休めだ」
「祈りなんて、独り言だ」
「きれいごとなんかもうたくさん」

そういう人もいるかもしれない。

しかし、
人には、大切なものがある。
大切な心がある。
守っていたい「きれいな世界」がある。

これを自分自身も大切にし、
退院後、
また社会福祉士として復帰したら
クライアントさまの大切なものを
これまでよりも実感して守っていきたいと改めて思いました。

あなたにとって、一番大切なことは何?

そう問われたら
今の私は

すぐ答えます。

「生きること。」

これから手術場に向かいます。
たとえ全身麻酔で意識がなくても
「生きるってことは、愛だよ」

この言葉を潜在意識に叩き込んで
生き抜きます。

これからもずっと生きて
みんなも、自分も幸せになります。


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