運命の言葉を探して。私がスペイン語を学び続ける理由
18歳の高校生は真剣に悩んでいました。スペイン語を勉強したい、スペイン語がいい。さて、どうやって周囲の大人たちを納得させるか?を。
こんにちは、しえです!いつもご覧いただきありがとうございます!
今回はいつもの投稿とは少し趣向を変えて、どうして私がスペインを、そしてスペイン語を選んだのか?について触れて行きたいと思います。バモス!
どうしてスペイン語なの?
「どうしてスペイン語なの?」
「¿Por qué aprendes español?」(どうしてスペイン語を勉強しているの?)
この質問、何回答えてきたか分かりません。日本で人と知り合った時、スペインで私がスペイン語を話すと分かった時、まず最初に聞かれるこの質問。どうして?
英語を勉強している、という人に「どうして?」と聞く人はいない。しかし、英語以外の他言語を勉強していると言うとそこに何か特別な理由があるはずと思われるのでしょう。
世界ではメジャーな言語
世界に目を向けてみるとスペイン語はかなりメジャーな言語です。全世界で21カ国が母国語としており、英語圏の国では第二言語として学ばれることも多い。英語圏内を旅行していても、スペイン語が聞こえてくることはよくあります。
スペイン語を母語とする人は全世界で5億人、第4位につけています。インターネット上では3番目に多く話される言語なんだとか。
でも、それらすべては海を超えて初めて分かること。山に囲まれた田舎育ちの高校生がそんなことを知るわけがありませんでした。
すべての始まりは1999年ワールドユース
私がスペイン語をやろうと決めたのは1999年、U-19サッカーワールドユース決勝戦がきっかけでした。
兄弟がサッカーをやっていたので、サッカー自体は子供の頃からいつも側にあるスポーツでした。自分でプレーすることはなかったけれど、観るのは大好き。周りの友人たちがアーティストやアイドルに夢中になっているのと同じように、私のアイドルは小野伸二選手でした。
その小野選手が出場していた1999年U-19サッカーワールドユース大会。黄金世代と呼ばれ、とっても強かった日本代表は決勝へ進み、その相手がスペインでした。
スペイン語を話せれば・・・!
その大会、日本はスペインに破れ優勝を逃しました。
あまりに強く、今まで自分が見ていたサッカーとはまったく違うプレーを見せてくれたスペイン代表。
スペインのサッカーはすごい。日本人と体型もそんなに変わらないのに、こんなに強いなんて。
どうやらリーガ・エスパニョーラというレベルの高い国内リーグがあるらしく、日本のサッカーはスペインを目指しているのだとか。
そうか、それならこれから日本の選手がそのリーガ・エスパニョーラにたくさん行く時代が来るかもしれない。いや、絶対に来る。
文章を書くのが好きで、サッカーも好きだからスポーツライターになりたい。スペイン語ができれば、スペインに派遣されるかも!
とまぁこんな感じで、誰に相談するでもなく勝手に「大学はスペイン語専攻に進む」と心に決め、私とスペインの関係は密かに始まりました。
言語には相性があるらしい
大学はスペイン語専攻に進みたい。
ただ、「スポーツライターになりたいからスペイン語をやる」と言っても反対されそう。私の頭の中では完璧な計画に思えますが、伝わらない可能性を考慮してしばらく黙っていることにしました。
先人のアドバイス
スペイン語をやろうと思っている、と言う事を打ち明けるに相応しいであろう大人がその時一人だけ側にいました。それは家族ではなく、小学生の時から通っていた塾の先生でした。
英語を教えてくれていたきれいで上品な先生は、フランス語話者。上智大学でフランス語を学び、塾の傍らフランス語翻訳の仕事もやっているという胸の内を明かすのにうってつけの人物でした。
スペイン語をやろうと思っている、と私が話すと先生は開口一番「スペイン語、聞いたことある?」と。
ないです、と答えると先生は「言語には相性がある」という話を聞かせてくれました。
言語は音だ
言語に相性がある、というのはまったくもって新しい情報です。スペイン語をやりたいからやるではダメなのか。先生は続けます。
「言語というのは音です。心地いい音、気持ち悪い音、誰にでもあるでしょ?意味は分からなくてもいい、音として聞いた時に心地よい言語じゃないと続けられない。
もしかしたら韓国語や中国語、ドイツ語の方が合っているかもしれないから、まずはいろんな言葉を聞いてみて」
聞いていて心地よい良い言葉がある。言語を音と捉える考え方は初めてでした。先生は「聞いてみたら分かる」と言いますが、本当でしょうか。
いろんな言語を聞いてみることにした
半信半疑だったけれど、先人のアドバイス通りまずは様々な言語を聞いてみることにしました。
図書館には言語の本はあるものの、音声で聞けるCDは置いてありません。さて、どうするか。当時の手段はただひとつ、NHKの語学講座でした。
今も続いているNHKの語学講座はその時代にも存在しており、毎日日替わりで色んな言語の講座番組がテレビやラジオで流されていました。
英語はもちろん、中国語、ロシア語、イタリア語、ドイツ語、フランス語、そしてスペイン語。これらをまずは片っ端から聞いてみることに。
聞くだけで分かる相性
様々な言語をただ聞くだけで、先生の言っていたことは本当だと分かりました。確かに言語には相性がある!
中国語の弾けるような音の並びが好きな人もいれば、フランス語の優雅な流れがぴったり来る人もいる。心がウキウキするようなかわいい音もあれば、その逆も。
相性の良くない言語は、話せるようになるイメージができません。なんだか発音が気恥ずかしい。耳が「この音はダメ」と言っているような、そんな気がしてくるんです。
なにか新しい言語を勉強しようと考えている方、騙されたと思って聞いてみて。例えば私にはフランス語の喉から抜けるような音はピンと来ない。けれど、聞く人によってはこの音が美しいと感じるわけです。
どちらが優れている、良い悪いではなく完全に個人の相性だと思います。初対面から「いいな」と思う相手と「苦手かも」と思う相手がいる。言語にも、運命の相手がいることを体験しました。
私とスペイン語
色んな言語を聞いた結果、私は「私とスペイン語はぴったりだ」という結論にたどり着きました。先入観でしょうか?恋は盲目?
時折登場する巻き舌の発音もなんだかかっこいい。ニャ、ニュ、ニョの音が頻発するのもかわいい。リズムよく歌っているように聞こえるのも素敵。
不思議なもので、色んな言語を聞いてもやはり「スペイン語だ」と思うことができた。その後、大学入学までNHKのスペイン語講座を聞く作業は続きます。
スペイン語への道
スペイン語と自分の相性が良いことが確認できた今、決意を取り下げる理由は何もありません。
しかしまだ目の前の超大きな壁を超えていなかった。家族の同意です。
私の家族は全員が教師です。先生にもいろんなタイプの方がいらっしゃいますが、私の親はザ・先生。教育熱心で、口うるさく、頭はかため。
「スペイン語をやりたいからやる」では納得してくれそうにありません。
将来に対してのプレゼンを決行
親の同意が得られないとスペイン語の勉強もできません。進路を選択する段階の高校2年生半ば頃になって、私は初めて「スペイン語を勉強したい」という自分の意志を伝えました。
自分の意向を伝えるだけでは説得できる可能性が低いと判断し、家族が納得する以下の理由とともに。
スペイン語専攻の場合、大学は国公立のみ
第二言語で英語を選択する
英語の教員免許を取る
私立の大学に行く場合は英文学科
奨学金を利用する、もちろん全額自分で返済する
浪人はしない
特に英語の教員免許を取得する、は母が譲らないポイントでした。国公立大学は私立の半額以下で通うことができるので、そこも大きかった。
高校生が全力で考えプレゼンした結果、限られた大学に合格することができた場合のみスペイン語専攻へ進めることが約束されました。
受験を乗り切れ!
国公立大学の受験は一番最後、3月頃に行われるため孤独感がすごい。一緒に図書館で勉強していた友人や地元の同級生たちも次々と進路を決めて、図書館には現れなくなりました。一人ぼっちの戦いです。
勉強がめんどうに感じる日は、図書館にあるスペイン語基礎の本をめくりモチベーションを保ちました。この言葉をやるためには、死んでも大学に合格しなければならない。自分が受験をミスしたら、スペイン語とは生涯引き離されてしまいます。
受験を支えてくれたスペイン語への憧れ。狙い定めだ大学の外国語学部スペイン語学科に無事合格し、本格的にスペインオタクへの道が開けました。
初日から涙ぐむ18歳
入学初日、生まれて初めてスペイン人の先生がスペイン語を話すのを目の前で聞いて、思わず涙ぐんでしまったことを強く覚えています。今考えるとおかしな18歳ですね。
遠い存在だった言語を、目の前の人が話している。自分が勝手に学んできたスペイン語の基礎知識を、専門家から教えてもらえる。
語学、文化、文学、歴史、経済・・次々と並ぶ講義はすべてスペインに関するもの。ここは天国でしょうか?スペインオタクの土台が着々と形成されていった貴重な時間でした。
あの時スペイン語を選んで良かった
あれから20年あまり。
高校生の私が志した「スポーツライターになる」という夢は叶えることができず、私にはスペインの知識とスペイン語のみが残りました。それでもあの時スペイン語を選んだことをまったく後悔していません。
意味は分からないまま音としてスペイン語を聞き、相性が良いと判断した自分は間違っていなかった。証拠に20年という月日を経ても、私はまだスペイン語に対して情熱を持っているし、スペインという国を愛しく思うことができる。
相変わらず日本国内での需要は低く、スペイン語を話せるだけでは1円も稼げませんがそれでもいい。
ありがとうサッカー。ありがとうワールドユース。ありがとうスペイン。高校生の時に出会ったスペインと、一生を添い遂げる決意です。
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