情報を選ぶ時代へ。

早いもので、かれこれ私がボイストレーナーを始めてから10年以上の月日が経ちました。

ずっと果敢に音楽を続けている生徒もいれば、すぐに辞めていく生徒もたくさんいますが、その中でも技術的、音楽的な悩みよりももっと別なところで頭を抱えたり、諦めていった生徒は本当に多かった印象があります。
そして年々増えてきているような気もしています。

それらの大抵は、他の人と自分を比べたりすることに起因していました。

自分より先に進んでいる人を見ては落ち込んだり、自分より下に見ていたはずの人が思わぬ大躍進を遂げていたり、あるいは一緒にいたはずの周りから自分だけ置いていかれていたり。

当然、私も音楽歴がそれ以上あるので、同様の経験もありますし、それ以外でも様々な苦悩を体験しました。むしろ、今でも本当に悩みは尽きません。

しかし、同時に自身のメンタルをしっかり前向きに保てるようにもなり、より以前よりも純粋な気持ちで音楽に真っ向から向き合えるようになってきました。
その私の経験も踏まえた上での、メンタル面でのアドバイスを今日は記そうと思います。


先ほど、10年と書きましたが、この10年くらいで、本当に情報社会として、まだまだ「成熟」には程遠いとは思いますが、それでも世の中はかなり発展してきているなと感じます。
10年前のmixiなんかをやっていた頃とは、社会の空気感や雰囲気はだいぶ変わったと思います。
特に何が変わったか具体的に言うと、「とても小さな情報まで可視化されるようになった」ことかなと個人的には認識しています。

さらにもっと昔なんて、遠くにいる自分の知り合いが今何をしているかなんて知る由もありませんでした。
そして知る必要もなかったと思います。

しかし、今は違います。SNSに触れていれば、必要ない情報も沢山入ってきます。
「見なければ良い」という意見もありますが、触れていれば流れ込んできますし、軽い興味から深くまで見てしまうのが人間だったりすると思いますので、実際にはなかなか難しいかと思います。


そんな中、私は最近テレビを自宅に置かなくなりました。
前からほぼ観ませんでしたが、付いてたら付いていたで、ダラダラとスマホでもいじりながら、テレビも眺める時間が少なからずありました。

それらを全カットすると、かなりの時間が生まれ、さらに細やかなストレスが前よりも更に軽減された実感があります。
そしてテレビが無くても、いまだに全く必要としていません。

ニュースなどはもうスマートフォンの中のどこからでも入手出来ますし、観たい番組があれば何かしらの手段で観ることも出来るかと思います。


とにかく情報過多社会と言いますか、本物から嘘まで、大きいものから小さいものまで情報が混在していて、間口を広く取りすぎるとどんどん流れ込んできます。

当然そこにはメリットもあれば、デメリットもあり、今までは決して手に入らなかった演奏や録音、さらにはそのメイキングや裏話。名人同士のたわいない、しかし素人には貴重な会話まで手に入る可能性もあれば、知る必要もない隣の隣人がどこぞでパフェを食べた、みたいな情報まで入ってきます。
そして、そこに少なからず心を動かしたり、惑わされてしまうのが人間の性でもありますので、やはり自身にとって有益なものとそうでないものを識別していくことが、これからは重要になってくると思います。

また、音楽だけに関わらず、人生までを含めた色んな物事に対する「答え」、みたいなものまで、既に世の中には溢れていますが、こちらも実は本当に注意が必要です。
例えば、大リーグの選手やイチローの考え方や打法ばかり研究して、ある程度分かったつもりになり、明日の試合の練習をそっちのけにしてしまう可能性などが大いに考えられると言うことです。
そして一番恐ろしいのは、自分一人では、そうした錯覚状態の自分になかなか気付けないという点です。

こうして遠くの情報ばかり入手するのも危険がたくさんあるので、そういった意味でも、しっかり自身の立ち位置を客観視して、本当に必要な情報を選んでいくことが、これからは非常に重要となるのです。

余計な情報に惑わされず、時に立ち止まることはあれど、しっかりとした歩幅で音楽人生の駒を進めていきましょう。

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