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フェチについて

私が中学生の頃の友人に、男の喉仏が大好きな女がいました。

彼女は様々な男の喉仏を観察しては、3組の〇〇の喉仏は最高だ、素晴しい。今度お前も見たまえ。みたいなことを私はよく言われていた記憶があります。

彼女にそこまで言われて、私も様々な男の喉仏を観察することになりましたが、私には〇〇君の喉仏も他の男の喉仏も違いが分からなくて、何度も彼女に説明を求めました。だけど彼女は「あの出っ張り!ちょうどいいんだよ!出すぎず、でなさすぎず、とにかく素晴しいんだ」といつも感覚的すぎて回答にならない言葉を聞かされていました。

私がその説明にうーん?と首を傾げると、「なんで分からないんだ!めちゃくちゃ良い喉仏ではないか!なかなかないんだぞ!あんな感じのやつは!」とこれまたよくわからない事を聞かされていました。

私はこれまで喉仏には一切関心がない人生を生きてきました。
首のおまけ程度についている喉仏にこんなに熱視線を送る人がいるとは思っておらず、彼女のおかけで中学生にしてフェチの多様性を知りました。

そんな彼女との喉仏話の中で印象に残っているものがあります。

彼女と雑談をしていて、ふと喉仏の話になったとき「触りたいんだよね、喉仏。つんつんしたい。」と言っていたのを聞いて、えっ、ガチめの変態じゃん……と困惑した思い出があります。

その発言を聞いたあと、私はそれ以降の授業の内容が頭に入って来ず、彼女の喉仏に対する気持ちを理解するために考えを巡らせていました。みんなが真剣に二次方程式を解いている中、「触りたいって事は、喉仏は女の乳首みたいなものってこと……???」「喉仏=乳首」との結論に至り、授業中にフェチの公式を編み出してしまいました。

その公式が出来上がった瞬間から、男全員が性器を丸出しにしているように思えてしまって、シャツの襟元から少しだけ見える出っ張りに「これは、性的なやつ…」「えっちだ…」「出ている…」などの言葉が頭をよぎるようになってしまいました。

そのため学校で男性教師や男子生徒を見るたびに、少しだけ視界に入る喉仏にいちいち恥ずかしいようなこそばゆいような気持ちになってしまうことが数日間起こりました。

しかし結局、私は喉仏にハマれませんでした。

数日間は謎のドキドキを味わえましたが、常に見ることができるという点が私の中で大幅な減点対象になりました。

私の中の審判も「常に見えるものはエロではない、ゆえにときめかない」と判決を下した事により私の喉仏ライフはそこで終了しました。

それから十年が経った今、たまに彼女のことを思い出しては、付き合っている男の喉仏を指の腹でつんつんしてしまう癖ができました。大概はすごく嫌がられます。

それもこれも彼女の呪いのせいです。

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