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競技のルールは、選手も交えてみんなで決める!? 戦いは、タスクブリーフィングで始まっている!

"Minimum distance 2,023km"

"No~!"

"100km!"

"No~~~!!!"

河川敷の放送棟のそばにいらっしゃったかたはご覧になったかと思いますが、これは11月5日、大会最終日午後のキーグラブレースに向けたタスクブリーフィングでのやり取りの一コマ。競技委員長が示した
「CLPからの離陸最小距離は2023kmとする」
という条件に対して、参加選手が「遠すぎる!」と反対(笑)

キーグラブレースのタスクブリーフィング中。。。
11月5日撮影


これに応じて競技委員長は最小距離をだんだん短くしていって、「100mにして!」というツワモノまで出たものの、最終的には「1km」で決着。

これを見て、「タスクブリーフィングって、競技委員長が競技内容を選手に通知するだけだと思ってたんだけど、違うんだね」とお気づきになったかたも多いことでしょう。

競技委員長の安永さん。
これからキーグラブレースのタスクブリーフィングをはじめるところ。
11月5日撮影

そうなんです。タスクブリーフィングでは、競技委員長が提示した競技内容に対して疑問点があれば選手が質問して説明を求めるだけではなく、逆に選手側から提案して競技内容が変更される場合もある…という、双方向の話し合いの場なのです。(選手からの提案を受け入れるかどうかの決定権は、競技委員長にあるので、提案が必ず採用されるわけではありませんが。)

このため、タスクブリーフィングで競技委員長が提示する競技内容をそのまま受け入れるのか、それとも多少なりとも自分に有利になる(不利益が解消される)ように変更を求めていくのか…。
選手にとっては、この段階で既に戦いが始まっているわけですね。

たとえば、11月1日の朝のタスクブリーフィングでは、こんなことがありました。

ブリーフィングの様子。壇上の競技委員長から、選手に対して説明が行われている。 10月31日撮影(ゼネラルブリーフィングの写真です)

このときの競技は、嘉瀬川河川敷のローンチ・エリアから一斉離陸をして、タスク1から順にPDGFONJDG、JDGという4つのタスクをこなすというもの。

前半のPDGとFONに関しては選手自身がゴールを決めて宣言するので特に問題はなかったのですが、後半の2つのJDGで高得点を目指すためには「あらかじめ定められていたルールのままでは自分にとって不利だ」と考えた選手がいました。

それは、ゼッケンナンバー1番、藤田雄大選手。そこで、さっそく挙手をして「今回のタスク設定はローンチ・エリアの北側から離陸する気球にとっては不利だから、公平性を保つためにもルール9.21を適用しないようにしてほしい」と、競技委員長へ提案したのです。

このときのタスクブリーフィングで選手たちに提供されていたパイバルデータ(ローンチ・エリアで競技本部の気象チームが計測している、風向と速さの情報)によると、気球を南側に飛ばすため使えそうな風は、地表付近から200m程度までぐらいの高度でしか吹いておらず、この高度の風を使えないと、JDGのターゲットが設置されている佐賀市西与賀町や佐賀市本庄(いずれも、ローンチ・エリアからみると東南東の方向にある)に向かうには不利だ…と。

タスクブリーフィングでは、フライトの参考にしてもらうため、気象の概況も説明される。ウェザーニューズ社の気象予報士、内藤さん。 11月1日午後 撮影

では、なぜ、ローンチ・エリアの北側から離陸する気球は、低い高度の風を使うことができないのか?
それは、藤田雄大選手が指摘したとおり、今回のフライトに限って、低空の風を使おうとするとルール9.21に違反してしまう恐れがあるから。

ルール9.21 ローンチ・エリアからの退去

離陸期間の終了に関わらず、バスケットが最初に地面を離れてから3分以内に、競技者は離陸エリアの境界を通過するか、地上500フィートまで上昇していなければならない。
競技者は、離陸期間の終了時刻もしくはすべての気球が離陸した時刻のいずれか早い時間以内に、500フィート以下の高度で離陸区域に再進入してはならない。

2023佐賀インターナショナルバルーンフェスタ 競技規定

このルールは「後から離陸する気球が、先に離陸して上を飛行中している気球に対して下から衝突するような危険」を避けるためには有効なものです。

しかし、このルールが適用除外されないと、ローンチ・エリアの南側から離陸する気球のほうが最初から南に向かう風を使うことができて有利、より北側のほうから離陸せざるを得ない気球ほど南に向かう風を使えずに不利になってしまいます。(ローンチ・エリア内のどの場所から離陸するのかは、競技本部が決めて選手に通知するので、選手側が自分で好きな場所を選んで離陸することはできません。このやりかたも、ある意味、選手間の公平性を保つためのひとつの方法であると言えます。11月1日朝の競技飛行では、藤田雄大選手はローンチ・サイトの北のほうから離陸するように指定されていました。)

だから、ルール9.21を適用しないで…ということだったのですが、競技委員長は「安全確保のため」にルール9.21の解除には反対。

そこで、ゼッケンナンバー29番の宮田浩樹選手が「気球がいなければ、再進入して構わないか?」と確認し、これは認められました。

基本的な競技のルールは大会が始まる前に決まっているのだけれど、細かい点は、その場その場の状況に応じて選手側の意見も考慮したうえで競技会が行われるなんて、面白いですよね。

TOMY

TOMYさんからのnoteいかがでしたか?
競技委員長と選手たちとのブリーフィングの様子は関係者の中でも、みんなが見ることのできない場面でもあります。
長年、熱気球を追いかけ、たくさんの競技部門を見てきたTOMYさんならではの視点で書いていただいたnoteと写真の数々。

ここからは、文中でも紹介されていたエントリーナンバー1番の藤田雄大選手の11月1日朝のフライトの様子を捉えた!をご紹介していきます!

気球の準備をクルーに任せて、フライトプランを検討中。。。の藤田雄大選手(#1)
南側の気球に進路を塞がれる前に早々に離陸してしまったらしく、ふと気づいたら、お達者にゃん吉4号は遥か彼方。ローンチ・エリアからは米粒ぐらいにしか見えない。
タスク3 JDGのターゲット上空にやってきた気球たち。お達者にゃん吉4号も。
(パシフィックカップでの成績 
11.20m 967ポイント)
タスク4 JDGのターゲットに
アプローチするお達者にゃん吉4号。
(パシフィックカップでの成績
0.39m 1000ポイント)

All photo by TOMY

ここで紹介しきれないTOMYさんの日々の活動は、インスタグラムのアカウント @hustle_bt でも見れますので、熱気球やカメラが大好きな方はぜひフォローしてください!

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