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糖尿病専門医の末席から「ダイアベティス」について叫ぶ〜糖尿病の名称変更に関する議論についてコメントさせてください〜

取り急ぎ「糖尿病の名称変更」についてコメントさせていただきます。

まず、この議論が病態の理解が不足していることに原因を見出しているとするならば、1型糖尿病と2型糖尿病とに分けて議論する必要があると考えます。また、1型糖尿病の名称変更の議論は、今回の議論に先駆けて存在しておりました。

次にダイアベティスという名前のインパクトが話題となっておりますが、過去に名称変更した統合失調症や認知症でさえ、名称変更のスティグマ解消に対する効果について十分に検証されていないようです。

スティグマの親子関係と,統合失調症名称変更の知識がスティグマに与える影響(今回のCQに直接的な議論ではありませんが、数少ない検討した研究にて採用しました。)
https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=abst&vol=120&year=2018&mag=0&number=7&start=551

また、私自身は名称変更には必要性も感じており基本的に中立から推進よりの立場をた持っておりますが、最近のwebアンケートをみると医師の多くが名称変更に反対しており、ステークホルダーを巻き込めていないことから、このタイミングでの名称変更が本当に有効であるのかという点でまだ自分の結論が出ておりません。

また、これまで蓄積されてきた糖尿病という名称の価値に関する議論はあまりみられず、名称変更へ向けた議論が拙速に思われます。定着したもの、名称変更により失われるもの、波及する負の影響などのより慎重な議論が必要と考えます。

一方で学会レベルでアドボカシー活動を行うことは大変意味のあることと思いますし、私も糖尿病学会のそういうところは大好きです。

ならば、まずは日本糖尿病学会員が名称変更を希望する患者さんの声の向こう側に、どんな生きづらさがあるのか、個人的な意味があるのかについて耳を傾けることが重要なのではないでしょうか。

そして学会として、そのように呼びかけていくことが第一の施策としては肝要と考えます。

次に名称そのものですが、私はこの点について適切な名前を見出せません。ダイアベティスという候補もよほど良い案がなかったことを物語っているようにも見えます。高血糖症のような中核となる病態を正確に伝えられたとしても、他のリスク因子や合併症・併存症の管理、さらにはQOLに関連した生活やライフサイクルなど疾患概念や治療対象の範囲を直感的に想起しにくい名称は、アドボカシー活動の意図にそぐわないと考えております。現在の2型糖尿病、特に中高年患者では、高血糖という枠組みをこえて、マルチモビディティの枠組みで療養・治療していくことが日常と思います。

さらに名称変更より、その後の啓発活動の方が事業の有効性をかけた本丸と考えます。

しかし、名称変更の議論の社会へのインパクトが、普及啓発の戦略に先行してしまっていることはあまり好ましいとは思えません。

一次情報でいきなり問題解決へ踏み切ると、本当の声に目を向けるチャンスを奪い、あやまった方向に施策をすすめてしまう原因となります。キャンペーンではなく、時間をかけて取り組むべき課題ではないでしょうか。ここでいう本当の声とはアンケートなどマクロな集計から排除されてしまう声も含みます。

以上より、私は拙速な名称変更よりも、まずはひとりひとりの2型糖尿病患者さんのスティグマと生きづらさの関係について、(これまでもそうしてきましたが)、より注意して耳を傾けることから始めたいと思います。また学会レベルでは、そのような方向でのキャンペーンをはることの方が有意義なのではないでしょうか。名称変更はその後でも遅くはないはずです。

以上、思いつくままに述べさせていただきました。

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