渡せなかったラブレター
人は自らの行動の結果を受け入れなければならない、と言い換えてもよい。
珍しく物語りをする気分だから、少しだけしよう。ほんの少しだけ。
さかのぼること10年前、彼はひょんなことから人を好きになった。
結果は上々。でも、彼は自分の中からあふれる衝動にもがき、苦しんだ。
そんな自壊に耐えられず、彼女を傷つけ、去ってしまった。
彼の渡せなかったラブレターは、心にへばりついている。
彼は過去に囚われることをよしとしないのだろう。しかしながら、「過去に囚われざるをえない」のであろう。
人は自らの行動の結果を受け入れなければならない。だってそれこそが、そのままの自分であるから。
それがどんなにつらい過去であっても、どんなに楽しい記憶であっても、それこそが偽りのない自分自身だから。
多分、これが彼の原点。
きっと遠くの「あなた」とは、昔も、今も、一緒にいたかったのだろう。多分、私がいなくても生きていけるから。
自分自身に耐え切れなくなって、いや、「あなたの幸せを願って」とすりかえよう。
どうぞ、渡せなかったラブレター、です。
彼にとってそうであったように、恐らく「あなた」にとって、彼は必要のない人であったのでしょう。
少なくとも私は、そう思います。