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映画レビュー 『本心』
久しぶりに面白い映画を見れたので布教活動します。きっかけは平野啓一郎でした。
京都大学在学中に『日蝕』(1998年)で芥川賞を受賞した。壮麗な文体の同作と『一月物語』(1999年)、『葬送』(2002年)をロマンティック3部作と称する。以降は平明な文体。ほかに『ドーン』(2009年)、『マチネの終わりに』(2016年)などがある。
平野啓一郎は、良くも悪くも社会問題を書くことが好きなようで、作家として問題提起を作品内ですることが評価される一方、純粋な物語として楽しみたい人々にとっては「能書きが多い」ように感じるそうです。
私が作品に触れたのは、『マチネの終わりに』を小説版で読んだ時でしたが、親和性が高く社会問題も含めて私は楽しく読めた記憶でした。
そんなつながりもあり、見てみた『本心』ですが結論からいえば85点。よくできていたと思います。
以下ネタバレとなりますので、気にされる方はブラウザバックをお願いいたします。あとよろしければ、noteのフォローとスキ、よろしくお願いいたします。
総評 評価85点
面白かった、全体の要素は若干情報過多で支離滅裂感があるが、本心を様々なところにかけてたのは流石平野啓一郎、役者も池松、三吉と作品に没入できる演技力があった。
減点材料
先に、構成など良くなかった点から。
中盤の劇の展開の目的による、社会問題詰め込みによる情報過多は物語の「おもしろくみせる」という観点から減点。物語を「おもしろくみせる」上では、社会問題を顕在化させるのではなく、背景にある社会問題によって作中の人間が考え、困惑し、行動し、揺らぎ、葛藤する等のリアクションがポイントとなる。
平野啓一郎はよくも悪くも社会派の作家であり、その点映画の2時間という枠組みの中では、もう少し構成の中に入れる社会問題を絞ってよかったと考えている。(例えば、安楽死、ギガワーカーと災害くらいで)
この点-20点という形である。
評価できるポイント
三吉彩花を劇中の三好役として使っているのはとても面白い試みであると感じた。作品におけるその役の雰囲気、性格を元々の役者にあわせたのか、あるいはそれ以外の視点でも、その他の役者の感情移入を簡単にするなど様々考えられることがあった。
最初の事故が主人公に対してあるが、それにより、1年という時間を主人公に寝たきりで過ごさせることで、時代の変遷の早さを演出、読者の窓となるための導入は流石平野啓一郎。窓では、時代の移り変わりの速度がめちゃくちゃよかった、母の死と時代に置いていかれる没入感を演出。
母の実像と、息子視点の母の虚像の対比は見事。平野らしい、人が様々な人にたいして別の顔を持つ分人の概念を上手く導入。
そのVFの生みの開発者の家庭が上手くいってないのもヨシ、なんならVFのエラーフラグ(後のAIの暴走への伏線)も◎
恋の描き方はうまかった、ラストシーンは映画ならではのカットであり、余計な言葉がいらないのはとても素敵。個人的に好きなので+5点
シュレディンガーの猫は優秀、終盤の母と黒猫のシーンがありそれは母が死んだ時のように回想されるシーンを時系列的にはおかしい最後に持ってくるのだが、「あの日黒猫を助けた」とも、AIとして再現された母が「その時アバターが示す三好の気持ちをくんで、息子と結ばれるように助けた」とも両方に取れる量子表現であり、物語の最重要ポイント。すこし解釈するには難しい感じもある。
定期的に映画を鑑賞したい
2時間という時間は現代のコンテンツ過多な時代には低くないコストである。しかしながら、みたいと思った映画は積極的に見て、レビューしていきたい。今はオッペンハイマーが気になっている。