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父との記憶。自分が父親になって思う事。

私は父が嫌いだった。

父が言ったことは絶対で、私に選択肢が無かったから。

私が小学生の時、とにかくサッカーが好きで毎日練習していた。中学生になってもサッカーを続け、選抜にも選ばれた。将来はサッカー選手になることが夢で父にも「俺はサッカー選手になる!」と伝えたが、「お前がなれるわけが無い」と、たったその一言で私の夢は終わった。

抵抗したかったが、父が怖くて出来なかった。

父は「とにかく勉強しろ。勉強が出来ればいい所に就職出来る」とそれだけを常に言っていた。

そんな父の気持ちとは裏腹に、私は全く勉強をしなかった。夢を否定されたのに勉強なんてしたくないと思ったから。

高校への進学の話になった時も、私は中卒で働くと言ったが、父は高校には行けと言った。

無理やり塾に通わされ家庭教師までお願いして、とにかく勉強させようと。

結果的に試験は合格したが、またしても私の意見は通らなかった。

高校に入っても相変わらず勉強はしなかったし、大好きだったサッカーも辞めてしまった。

そんな私に「金は出してやるから大学にも行け」と父が言ってきた。正直行きたくはなかったが、とりあえず少しだけ頑張ってみるかと思い、高校2年の時に初めてテスト勉強をした。

そのテストで高得点を得て推薦され大学にも行けた。

就職活動の時も色々あったが、父の意向で父が勧めてきた会社に就職することになった。

私の人生は父の敷いたレールに沿って進んでいるだけ。私の人生に自由はなかったと思いながら働き続けた。

そんな私も結婚して子供が産まれた。

子供を見ながら、父のような父親にはならない。この子には好きなことをして自由に生きてほしいと強く思った。

子供が産まれて暫くして、母から電話があった。

「子育てはどう?大変でしょう?それに子供って可愛いでしょ?」

「お父さんもねあなたが可愛くて心配だったのよ」

母は私が父に抱いていた気持ちを知っているようだ。

「あなたがサッカーを始めたときお父さんもサッカーの本を買って勉強していたのよ」

「初めて得点した時は大喜びして、あいつは将来サッカー選手になるかもな!って言ってた」

「実際あなたがサッカー選手になると言った時お父さんは否定したかもしれないけど、それはあなたの決意を試したのよ」

「お父さんが否定したぐらいで諦めてしまうなら必ず途中で挫折するだろうって」

「勉強もそう。お父さんも勉強しなかったから社会人になって苦労したのよ。その苦労をあなたにしてほしくなかったから強く言ってたのよ」

「親はね、とにかく子供が可愛くて心配なのよ」

「あなたもいずれわかるわ」

母からこの話をされ色々思う事はあった。

あの時一言「頑張れ」と言って貰えたら私は夢を追いかけていたのに。仮に挫折したとしてもそれは自分の責任で父や母のせいではないのに。

父への怒りが湧いてくるのと同時に、嬉しさもあった。父もサッカーの勉強をしていたこと。得点した時に大喜びしてくれていたこと。

ただその姿を私の前では見せてはくれなかったけど、ある意味親バカだったんだと。

勉強もそうだ。大学を卒業したことで給料も高く、技術関係の仕事をさせて貰えた。

結果的に父の言う通りなんだと思ったが、やはりもっと自分の意思で前に進みたかった。

「この道しかない」ではなく「こういう道もある」と言ったアドバイスが欲しかった。


私も父になりもうすぐ5年。子供がとにかく可愛くてそして色々心配だ。

怪我しないかな。風邪ひかないかな。

母が電話で言っていたことはこの事なのか。

子供が大きくなっていくにつれ、将来の事等もっと心配事は増えていく。私が経験して後悔したことを子供にはしてほしくないと思う事は父と同じなのかもしれない。

結局私もこの子の人生にレールを敷くとこになるのだろう。

ただ何本もレールを敷いてやりたいと思う。

いくつもの道の中から自分がやりたいこと、自分にあったことを見つけて進んでほしい。

その道を全力でサポートすることが親の務めだと思う。


最近ではこんな父親になりたいと相談できるほど父とは仲良くなった。

今では私の1番のアドバイザーである。

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