コルシア書店の仲間たち 「銀の夜」から・会いたい人達へ (本の旅 星③後編)
(本の旅 星③前編の続き後編です)
前編はこちら↓
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「銀の夜」のコルシア書店の仲間は、ダヴィデさん。詩人で司祭。
戦時中末期ナチスが占領したミラノで地下組織活動をおこし、戦後、コルシア書店を親友カミッロと立ち上げた人。
戦争を身を挺して戦った人達から少し遅れて生まれた1950年代が青年の時代の人達にとって、コルシア書店は、ファシズムから希望へと変化する「小さな灯台、小さな奇跡だった」と書かれています。
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「小さな灯台、小さな奇跡」
ダヴィデはミラノで名の通った詩人で司祭だ。
有名人らしからぬ人柄でも、人々の期待を背負って押しつぶされそうになる時もあっただろう。
司祭としてもてはやされ、人々の先頭に立って歩き続けるのが辛い時があったろう。
そんなダヴィデを、少年のようなひたむきさで、慰められるのはピーノだけだった。
機を熟すように、ダヴィデはコルシカ書店を離れる時がきて、活動の拠点として羽根を休めるだけの所になっても、ピーノはただ黙って、ダヴィデの話を聞きいた。
私がスペインにいた時、美術学校が秋から始まるその前に、まずはスペイン語をやらなくては?!?!と外国人のためのスペイン語語学校に行った。その時の先生の話がとても印象的だった。
「良い友達として、一番の条件はなんでしょう?」
『なんだろう?』
そして答えは、
「話を聞くことです。」
その時の私は、『?!?なんで?』
と思った。そして
『スペイン人は、よっぽどおしゃべり好きが多いのだな。』と思った。
だけど今、スペイン語の先生のあの時の言葉を思い出す。
「話しを聞いてくれる人」
本当の意味で、話しをいきてくれる人。
ピーノが突然の病気で亡くなり、ダヴィデはピーノの眠る墓地の教会を最後の自分の場所にした。
もし本当の意味で、ちゃんと話を聞いてくれる人に出会えたら、その人は幸せ者だ。そしてそれは会えなくなった時、初めて実感する。
会えなくなって初めて、その人の暖かさを噛み締める。何度も思い出し、反復して、会えなくなったことを実感する。
亡くなった人は、何万光年も遠い星にはならない。
月よりももっともっと近く、私達の心に何度も訪ねて来る。
そして今の話しも、未来の話しも、いつか聞いてくれる気がする。
「あれからどうだった?」と。
ダヴィデの詩、
「復活祭の前夜」。
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明るい静かな日々、銀の夜。
小川は、森と畑と縫う真珠のくさり。
もう土はパンと血に匂っている。
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こんな詩のような所で、私もいつか会えなくなった人と愛犬に、
また会いたいと思うのでした。