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コレクションの話 イギリス航空隊のポストカード

1912~1918年の間にだけ存在したイギリス陸軍航空隊(Royal Flying Corps)。第一次大戦中の1918年4月に海軍航空隊と合体し、現在の英国空軍になった。


古い切手とかカードとか、つい集めたくなる

航空隊時代のイギリス軍用機が描かれた古いポストカードをいくつか持っている。
上の画像に写っているのもそのうちの一枚。入手以来時々フレームに入れて飾っている。じっくり鑑賞してみたい。

※以下のアンティーク品に関する考察は個人的見解です。



宛名面
右上端にちょっとダメージ

表側。左上にRFCのマーク。未使用で切手も消印もなく、年代不明。全体的な変色具合に経年を感じる。

左端の細かい文字はメーカー名。
Gale&Poldenという会社は、1868年創業、1981年に売却されて今はないイギリスの印刷・出版会社だそう。Wikipediaより。
戦前~大戦中にミリタリーのポストカードのシリーズを作っていたらしい。
このカードもそのひとつだったのだろう。



イラスト面
こちらは状態良好

裏面。絵からカードの年代を絞り込めるだろうか。

基地での日常風景。イギリス国内か、フランスか。
水彩画と思われる筆致。やわらかな色遣いの中、ところどころに効かせた赤茶色のアクセントには、緊張感があるような、ないような。
こんな構図は当時の写真でよく見かける。写真をもとにして描かれたのかもしれない。
白い空は、明け方なのか、曇っているのか。
地面や背景には緑が多く、季節は少なくとも冬ではなさそう。

飛行機に乗り手がひとり、その周りに4人、遠景に小さく3人。
左下に文字。


一番気になるのは飛行機。
アンリ・ファルマンH.F.20。

推進式の複座偵察機で、機首に機銃を装備した観測員席、その後ろに操縦席がある。狭そう。
黒いかまぼこはたぶん燃料タンク、その下でエンジンが後ろ向きのプロペラを回す。

1913年に設計。15年夏頃まで戦線で使用され、その後練習機になった。
特別優れた機体ではなかったものの、それなりに活躍したとか。
RFCでは1914年開戦時には7個中隊に配備済みだった。


戦争が始まると、軍用機には敵味方を識別するためのマークが必要になった。この機体には国章がないので戦前~開戦前後頃では?



周りの人物も見てみる。

一番手前の人と機体の向こう側からこちらを見ている人、軍服の肩に青い模様が付いている。この絵では読めないが、青の土台布に白でRoyalFlyingCorpsの文字の刺繍。これが付いているのは下士官の隊員。
乗り手に指示している人には付いていない。ということは士官。司令官かも?

着陸直後か、これから飛ぶのか?
乗り手は観測員だけ、操縦席は空席。
当時の飛行服は、黒や茶色の革のロングコート。遠景の人も含めこの絵の中には飛行服を着たパイロットがいない。着陸直後にしては不自然。画面の外で準備中の飛行士を待っている場面なのでは。

観測員がかぶっている縁のついたヘルメットは、開戦前後頃使われていたタイプ。縁のせいでゴーグルが付けにくかったとか。大戦半ば頃から飛行帽に変わった。



左端にいるのは作業着を着た整備士。工具を持っている。
青いデニム生地の作業着が使われていたのは1912~1915年。

下の文字。Cruiserは巡洋艦。
「空の巡洋艦」…つまり偵察機。


ここで気付いた。
右上の士官の手、袖口にタブが付いている。
前の画像に戻って見ると、一番手前の人にも袖タブがある。

調べてみるとジャケットのスリーブタブは開戦直前頃になくなったらしい。その後、袖口には階級を表す装飾が付いた。
ということはこの絵に描かれているのは、1914年前半、開戦前のイギリス国内の基地か?

ただ、制服や装備品は、リリースされた直後にすべての隊員に行き渡るわけではない。ので、時期を厳密に絞り込むのは難しい。



今の自分にわかるのはこれくらい。
細かい部分は描き手によってアレンジされている可能性もあるけれど、全体の印象としては、1914年頃の様子を描いているように見える。ポストカードが作られ販売されたのは、アンリ・ファルマンが偵察機として活躍していた1914~15年頃ではないか。

1914年。開戦前なら平和な空だし、開戦後も上空で敵機と遭遇する機会はまだ少なかった。しかし戦闘なんか無くても、空を飛ぶ事自体が命がけの時代でもあった。
緊張感があるようでないような色遣いや曖昧な空の色は、そんな時代の空気を反映しているように見えなくもない…?




宛名面の左上に掲げられた、Royal Flying Corpsのマーク。
RFCの文字を月桂樹のリースで囲み、王家の冠を戴く。下にリボンが翻る。

月桂樹は勝利や栄光の象徴。
リボンに書かれている PER ARDUA AD ASTRA は航空隊のモットーで、現在の空軍にも受け継がれている。困難をくぐり抜けて栄光の星へ…というような意味。

意味を知れば一層親しみが湧く。

カラーコピーしたものを切り抜いて、写真を入れられるキーホルダーにセットしてみた。かっこいい。密かに、推し活。


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