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海原雄山アサーティブ|メイたん テイ子 ナン 旅好きOL トラベル・トラブル番外編
短編パロディ小説:メイたん テイ子 ナン-旅好きOL-トラベル・トラブル 概要:やたら殺人事件に遭遇する小学生が現存する一方、北海道札幌市にオフィスをかまえる地元旅行誌『powaro』でOLをしている3人娘が行く先々で殺人事件に遭遇して、偶然居合わせた探偵とかに事件を解決してもらうストーリーを以前、執筆しました。(https://note.com/shyr/n/n9b3c1c663935) これはその番外編です。 本編完全版はこちらからどうぞ↓ https://note.com/shyr/n/nb67ef3b92399?sub_rt=share_b === 北海道は札幌市にオフィスを構える地元紙『powaro』編集部。 そこには、老獪で優秀な編集長の他に、若い3人組の仲良しOLがいた。 他の男性編集者は、中途採用の油の乗った世代が多い。 それに対して仲良し3人組は二十代とまだ若い。 酸いも甘いも噛み分けると自負する編集者でさえもタジタジだった。 今回も、「末っ子メイたん」と、オフィスで愛のある陰口を言われている宮迷メイが、編集者に何か直談判している。 「編集者! 横浜ですよ! ヨ コ ハ マ!」 どうやら横浜中華街の取材の交渉のようである。 どこからもともなく、「末っ子のおねだりがはじまった」と、聞こえた。 「おねだりじゃないですよ! ちゃんと仕事の相談です。聞こえてますからね!」 もうお局さんじゃんと、心で思う男性編集者たちを尻目に、メイたんは話を続ける。 彼女の話を要約するとこうだ。 札幌には老舗の中華料理店「クラブチャイナ」がある。前回のシリーズ企画「温泉3本勝負」が好評だったpowaroの次の企画として、札幌の老舗レストランと、日本中の有名レストランや名物料理の対決を、メイたんは提案している。 ただし、これは単に経費で旅行に行きたいだけの、彼女なりの下心があるのが常だ。 まぁしかし、彼女が女子高生のときはポケベル世代であり、流行に敏感な彼女の企画は軒並み評判なのは確かだった。 あとは、単純にメイたんはかわいいのである。初老の40代以上なら確実に目に入れても痛くない、孫のような存在だ。 そして、OL3人組の横浜旅行は、半分だけを経費で落とすことで交渉成立。 メイたん、テイ子、ナンの3人は横浜中華街の地に今、足を踏み入れた。 結論から言おう。 この横浜中華街で旅好きOLの3人は、今回、どんな事件にも巻き込まれることはない。 ただし、海原雄山がやたらとゆく先々で、息子の山岡士郎に偶然出会うくらいの頻度で、彼女たちも海原雄山に遭遇する。 バブル崩壊で、世の中が一気に不景気となった1990年代後期の世紀末。海原雄山の美食倶楽部は、あっという間に潰れた。 失業者にあふれ、氷河期世代はどこにも就職できず、フリーターという言葉が生まれる程に、日本の経済は衰退するばかりだった。 美食やら飽食やら、そんな消費や贅沢よりも、人としての優しさや真心が、心の中心でしっかり根を張った人が求められる時代となりつつあった。 海原雄山も審美眼のある芸術家。 己のおごりに気づき「人は優しくあるべき」と気づくのに時間は掛からなかった。 「海原アサーティブ雄山」 美食倶楽部を畳んだ今の彼は、そんなミドルネームが相応しい人物へとなっていた。 「メイたん、今回はなんで横浜にしたの?」 「ふふーん♪ 東京の東西新聞のイベントで、『究極の冷やし中華』の試食会を、この横浜中華街のお店でやるんだなー」 「でた〜(笑)」 「メイたんはミーハーですもんね! 未だにティーン雑誌買って読んだり、流行のアンテナ張ってる貼ってる〜」 「ナン、あなたは私のパシリ役なのに最近の口調、なんか軽くない? まぁいいわ!私は寛大な3人組のリーダーだから!」 「さあ、着いたわよ!ここがイベント会場の大王飯店でーす!2人とも早く!いい席とるよー」 「メイたん待ちなさい。取材記者は、受け付けで名前を書くようよ」 「あ、あの席が良い!テイ子が代表で書いてよ!私先に確保しておく!」 「もうメイたんめ!」 「すみません、弊社の一人がはしゃいじゃって。」 「え? あ、記者の席って指定なんですか? テイ子さん、ってことみたいです。」 「まったく!私が雑誌社名と担当者の名前を書いておくから、ナンはメイを私たちの指定席に連れてって。」 「そういうわけですみません。powaroの席は、どこですか?」 「はい、ええ。 あ、テーブルに社名があるところですね? わかりました。」 「ナン、あそこみたいよ。よろしくね。」 「テイ子さん、私、メイたんとこ行きたくないんですけど・・・。黒スーツの柄の悪い人にめっちゃあの人怒られてる。。。」 「おいおい、勝手に席に座らないでくれ。取材する雑誌社には指定の席があるんだよ。それに今日は一般のお客さんも来て普通に営業してるんだ。まったく困った記者だな。どこから来たの?札幌?なんだ北海道の田舎娘か。確かあんたらは俺たち東西新聞の席のとなりだよ。あっちあっち。とっとと移動してくれ。」 「怒られた。。。」 「あ、powaroって書いてある。このテーブルか。」 「あんな言い方しなくていいじゃん。東京人なんてはっかくさ。」 「メイたん、大丈夫でした?」 「ナーン! 怒られたよー! 見てたでしょ? あんな言い方ないよね! はっかくさい! 私、究極のメニューって東西新聞の特集を読んでたから知ってるけど、あの人が山岡士郎記者だよ。 あんな人だと思わなかった! 繊細な味覚の持ち主だから、勝手に人柄も繊細だと思ってたー! ムカつくー!」 「よしよし、メイたんは悪くない悪くない。 これ、一応お仕事だから、とりあえず気持ち切り替えましょう。 本来、3人来る必要ないのに無理言って3人できてるのだから、そこはちゃんと仕事しましょう。」 「そうよメイたん。 私はカメラ担当、あなたはしっかり取材とメモ取りしなさいね。」 めいたんは、とんだ主催者からの洗礼に意気消沈した。 究極の冷やし中華試食会には、実はゲストで、” 中国人よりも中華料理に詳しい ” 日本の柏原先生が来ることになっていた。 なにを隠そう、それこそが海原雄山であった。 オファーをしたのは、東西新聞の女性記者の星村だったが、銀座の中華料理屋の主人を通しての間接的な依頼であった。 そのため、中国なまりの発音で彼女は「海原」を「柏原」と聞き間違えていた。 星村「山岡さん、海原先生が来ましたよ。 一緒にお出迎えをお願いします。」 山岡「ああ、わかった。 いま行く。 さぁ栗田くん、行くよ。」 大王飯店の扉が開き、和服姿の恰幅の良い男性が、連れの中川とともに入店した。 海原雄山「士郎さん。ああ、またお会いしましたね!」 山岡「くっ! 海原雄山! また貴様か! なぜ貴様がここに!」 海原雄山「はい、実はあなたに会いたくて、銀座の中華料理屋の主人に一芝居打ってもらい、『柏原』と名前を誤解させる策を取らせていただきました。 そうしないと、あなたに会えないと思ったから。。。」 山岡「なぜそこまでして俺に構う!」 海原雄山「だって、お父さんだもん。 息子に構うし、心配もします。 それに、” 究極の冷やし中華” と聞いては、黙っていられません。 私は、中華料理として認めていませんからね、冷やし中華を。」 山岡「それはずいぶんな権威主義だな。 バブル崩壊で丸くなったと聞いていたが、やっぱりお前は、ロクでもない傲慢なちんちくりんだ!」 海原雄山「私もそう思います。 士郎さん、あなたに私の時価総額にして数億円の美術作品を壊されたあの日から、私は自分の愚かさに気づきました。 そのことに気づかせてくれた私の息子が、究極の冷やし中華をというのであれば、また私に何か新たな発見があると期待したのです。 だから、どうしても今日は参加したく、オファーをくれた星村さんに、名前を誤解されるようなことまでしてアポを取ったのです。」 テイ子「え? 何あれ? 一般のお客さんもいるのにあの山岡って人、やばくない? なんであんなにキレててるの、メイたん?」 メイ「テイ子は、パソコン持ってるのに調べたことないの? 東西新聞の山岡士郎と、芸術家の海原雄山は親子なのよ。 あの2人は、やたらと行く先々で鉢合わせすることが多いことでも有名なの。 でも、まさか私がその場面に出くわすとは思わなかったわ。」 「くっ! 勝手にしろ! 席に戻るぞ栗田くん!」 こうしてイベントは幕を開け、究極の冷やし中華は、各テーブルに並んだ。 「さぁ皆さん、召し上がって下さい。 これが東西新聞社が過去に手掛けた『究極のメニューづくり』で培った経験を元に考案した、本物思考の冷やし中華です。 一般のお客様にも、先着50食限定でご用意してます。 今日しか食べられない特別メニューです。」 皆、口々に「うまい」「おいしい」という中、お付きの中川に促され、海原雄山も究極の冷やし中華を口にする、まずはその麺を一口。 「う~ん、麺が良い。ちゃんと小麦の風味が感じられるし、嫌な匂いもない。麺自体の香りと味がはっきりしている。出汁も良い。鶏だけで作ったのでしょうか?どう思います、中川さん。」 「はい、そのようですね。しかも調味料も使ってないですね、これは。本物の材料でなければ、ここまで軽やかな味にはならないでしょう。」 「焼き豚も上出来ですね。ちゃんと手間暇かけて育てられた黒豚を使っているし、農薬や除草剤も使っていないキュウリに卵も日本の上質な鶏の卵を使ったとわかりますね。」 「う〜ん、麺が良い。 ちゃんと小麦の風味が感じられるし、嫌な匂いもない。 麺自体の香りと味がはっきりしている。 出汁も良い。 鶏だけで作ったのでしょうか? どう思います、中川さん。」 「はい、そのようですね。 しかも、化学調味料も使ってないですね、これは。 天然のものを選んでなければ、ここまで軽やかな味にはならないでしょう。」 「焼き豚も上出来ですね。 ちゃんと手間暇かけて育てられた黒豚を使っているし、農薬や除草剤も使っていないキュウリに、卵も日本の上質な鶏の卵だとわかりますね。」 山岡士郎は、笑みを浮かべる。 山岡「さぁ、海原雄山! 感想を聞かせてもらうか!」 メイ「びっくりした! みんな『おいしい、おいしい』って食べるのに、あの人だけ殺気がすごいんですけど。」 テイ子「メイたん、見ちゃダメ。 あれは、あんまり関わっちゃいけない人の目。 取材に集中して。 それにすぐ隣だからこっちの声、聞こえる。」 楽しいイベントのはずだった『究極の冷やし中華試食会』は、一人の主催者のせいで時折、静まり返る。 そんな沈黙のあと、海原雄山は口を開いて山岡士郎に言った。 「士郎さん、たいへんおいしゅうございました。 しかし、感想を述べる前に恐縮ですが、私からひとつ、質問をしてもよろしいでしょうか?」 「なんだ!言ってみろ!負け惜しみでもなんでもな!!」 「ありがとうございます。 私の質問は、この冷やし中華の『基本的な概念は何ですか?』と、いうものです。」 「それは、本物であるかどうかだ! 本物の材料を使えば、冷やし中華も飛躍的に美味しくなる。 冷たい麺を冷たいスープで食べるのは、蒸し暑い日本においてはとても良い発想だ。」 「なるほど、何から何まで本物の材料を使った。 だから、これだけの冷やし中華が完成した。 『本物』の冷やし中華が。 たしかに、日本で食べる冷やし中華としては、これが最善でしょう。 充分においしかったです。 私は、すっかり自分の権威主義を痛感しました。 ありがとうございます、こんな方法もあるのだと私に教えてくれて。」 「しかし、一つだけ父として、人生の先輩として、あなたが許してくれるなら『苦言』をひとつ、伝えてもよろしいでしょうか? もちろん、言葉には十分に気をつけて、配慮ある伝え方をいたします。」 「苦言・・・だと? この冷やし中華のどこに文句をつけようってんだ!」 「いえいえ、文句などではありません。 ですが、『本物である』ことを基本的な概念とするなら、私はまだ100%これを本物の中華料理と認めるわけにはいきません。」 本物であることを基本的な概念として作ったのなら、これは本物の中華料理として、私はまだ100%認めることはできないかな、と思いました。 「どういうことだ? 回りくどい言い方をしないで、単刀直入に言ってみろ!」 「海原先生、私もそれはアサーティブコミュニケーションというより、息子に遠慮しすぎて、回りくどくなっているお父さんに見えます。 アサーションの基本は、相手も自分も『対等に』『大切に』です。」 「そうですね、中川さん。私はダメダメですね。うん、気を取り直して。。。」 「そうですね、中川さん。 私は、ダメダメですね。 うん、気を取り直して・・・。」 「士郎さん、この冷やし中華を『本物の中華料理』にするなら、すべての材料と調味料を” 中国産 ” にしてみてはいかがでしょうか。 この冷やし中華が、さらに深みを増すのがわかるはずです。」 「ですが、この日本で集められる物として、たしかにこれは最善で最適だという事はわかります。 ここまでの食材(もの)を集めるのにも、士郎さんや栗田さんの苦労は、さぞたいへんだったことと思います。 そんな苦労を顧みず、『材料が中国の物でないからダメだ』と、言ってしまうのは、敬意がない言葉と言えます。 ですが、士郎さんが『本物』を本当に求めるなら、私は、この” 苦言 ” を、伝えるべきと思いました。 ある意味これは、頭が固く、これまで冷やし中華を食べなかった私に、大きな気づきと可能性を教えてくれたあなたへの、我が息子への感謝の気持ちなのです。」 「なっ!! ぐっ・・・!」 「しかし、なるほど・・・。 日本の材料ではなく、中国の本物の材料を使う…。 くそ! どうしてそこに俺は気づかなかったんだ! クソっ! クソっ! クソっ!」 「キャッ! びっくりした! この人、イスを蹴飛ばした! もうこの席、イヤだ〜!」 「メイたん、大丈夫だった!」 「ちょっとさすがに頭おかし過ぎでしょ、東西新聞! テイ子さん、もう店を出ましょうよ! こんなの倍賞ものですよ! 私、ホテルに帰って編集長に電話します!」 ナンのこの発言は、さすがに海原雄山の耳にも聞こえた。 「中川さん、申し訳ありませんが、いったん士郎さんをお願いしてもいいですか? 私はこの場の雰囲気をどうにかします。」 「その方がよろしいですね。」 「さぁ坊ちゃん、少し外で落ち着きましょう。」 「(いつもすまないね、中川さん・・・)」 「やぁお嬢さん方、こんにちは。 いやはや、お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありせんでした。 メディア関係者のようですが、どちらからお越しですか? ほう、北海道から取材でこちらに。 私は、利尻昆布が特に好きですよ。」 海原雄山のこの穏やかな口調と、豊富な知識、おもしろい体験談などで、すっかり大王飯店の雰囲気はよくなった。 そして海原雄山は、雑誌社『powaro』の独占取材を受けることを承諾し、冷やし中華について語る記事が掲載される事となった。 「冷やし中華も、中華料理の新たな形として受け入れられる可能性がある。 しかし、ただの冷やし中華ではなく、本物の中華としての地位を確立するには、それ相応の努力と心遣いが必要だ。」 取材用のレコーダーから海原雄山が語る声が流れる。 それを聞きながら記事を書くのは札幌に戻ったテイ子だ。 「冷やし中華のように新しい料理も、作り方次第で立派な中華料理として認められるのです。」 記事の締めくくりとして、そう原稿に書いたところで、テイ子はペンを置き、イスに座ったまま大きく伸びをした。 「うーーーーーん! おわったー!」 「あとは昭和最後の料理対決『究極メニューVS 至高のメニュー』10年目の真実の記事ね!」 テイ子の言う『真実』とは、海原雄山が彼女たちだけに話した山岡士郎との秘密の話だった。 しかし、その記事を書く前に、彼女たち3人は、山岡士郎と海原雄山が鉢合わせとなる場に、またしても偶然、遭遇することになる。
フリーBGM・音楽素材【GarageBand作成曲】|23時のサイケデリック|
iPadアプリ『GarageBand』で グランジ・オルタナティブ系の インストゥルメンタルBGM 作りました。 今回の曲はコンサータです。 作成時期:2024年7月 この調子で次もガンバリます!! 【お約束】 ・ご利用と著作権について 無料のフリー素材としてダウンロードは 自由にしていただいて結構ですが、 著作権は全て私、おにき君に帰属します。 オリジナル作品としてCDやデータを 再配布したり販売するのは禁止します。 個人的な鑑賞目的でダウンロードデータを CDやスマホなどに入れることは問題ありません。 ・著作権表記のお願い 作品やサイトなどでおにき君作品を 利用される際は、おにき君の名前を クレジット表記してください。 *ただし作品的にこれらの表記が 難しければこの限りではありません。 ・任意事項 コメントでご利用の報告をいただけると おにき君はとても喜びますので、 出来ればお願いします。 おにき君のnoteのリンクを紹介して いただけますと狂喜乱舞するほど喜びます。 ・その他 おにき君作品の利用に際し、いかなる トラブルが発生しても、おにき君は 一切の責任を負いません。 こちらの投稿作品に関しては、予告無しに 変更・削除されることがあります。 ============ The gentle melody collapses into a psychedelic distortion of twin guitars. 穏やかなメロディーがサイケデリックに崩壊する歪んだツインギター。 ADHD medication doesn’t work. Sleepless nights. ADHDの薬は効果がない。眠れない夜。 The noise resonating within me is despair and anger. 私の中で鳴り響く雑音は絶望と怒り。 Influenced by Nirvana and inspired by the beautiful sound of Screaming Trees, ニルヴァーナに影響を受け、 スクリーミング・ツリーの美しいサウンドをヒントにした曲。 the song is titled “Psychedelic at 11 PM.” 曲名は「23時のサイケデリック」だ。 Both the synthesizer and guitar riffs are the madness of my brain. シンセサイザーもギターリフもイカれた私の脳みそ。 Silence transforms into chaos. 静寂は混沌へと変貌する。 Enjoy “Psychedelic at 11 PM.” 23時のサイケデリックを楽しんでくれ。 【 soundcloudで聴く 】 https://soundcloud.com/5cjkibbjxu1e/psychedelic-at-2300?si=80b8be89f9754f29987ea0fbbc3f55e5&utm_source=clipboard&utm_medium=text&utm_campaign=social_sharing ============ YEAH! YEAH! 私はADHDの治療薬「コンサータ」を服用して、太りました。 体重が4kgも増えたのです。 医者から「あなたおかしいね」と言われました。 「おかしいのを治すのが医者じゃないのか?」 そう思いませんか? コンサータを服用してから頭の騒音はより激しくなりました。 不眠症でしたが、コンサータを服用してより眠れなくなりました。 そんな怒りに震える23時にiPadを手に取り、 完成した曲が、この「23時のサイケデリック」です。 シンセサイザーと電子ピアノで私の頭の中の ノイズを表現しました。 ぜひ聴いてください。
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【第4話|音声読上げ】メイたん テイ子 ナン -旅好きOL- トラベルトラブル【熊本阿蘇編】
*‐‐‐*概要*‐‐‐* [短編コメディ小説] やたら殺人事件に遭遇する小学生が現存する一方 北海道札幌市にオフィスをかまえる地元旅行誌 『powaro』でOLをしている3人娘が行く先々で 殺人事件に遭遇して、偶然居合わせた探偵とかに 事件を解決してもらうストーリー。 >>このページは高速音声聞流しです<< *‐‐‐*‐‐‐*‐‐‐* ▼本編はコチラ https://note.com/shyr/n/nb523af82d69d *‐‐‐*‐‐‐*‐‐‐* あ、こんにちは。 私は金田一奈々(きんだいち なな)です。 私立探偵・金田一 耕助の『金田一』に、奈良県の『奈』で奈々です。 今度、ロッテから出たザッカルをたくさん買い込んで、旅行先の温泉宿で食べるつもりでしたが、皆さんお察しの通り、殺人事件に私は巻き込まれています。 いったい何度目?って感じなんですが、STV(札幌テレビ放送)で、ジブリ映画の『風の谷のナウシカ』を再放送したのは、私の記憶だと6回くらいのはず。 昨年も、もののけ姫がたいへん話題になって、それを記念して『ナウシカ』が金曜ロードショーで放送されたばかり・・・。 「何度目だナウシカ」って、再放送たびに思ったものだけど、私が殺人事件に巻き込まれるのも何度目なのよ? わずか4~5か月の間に2回目も泊まった宿泊先で殺人事件が起きているんですよ。 「3回じゃないの」って思ったでしょ? 3回目じゃないですよ。 福島県で遭遇したのは、悪質なドッキリ。 誰も死んでいません。 だから、今回の殺人事件で私が巻き込まれたのは、2回目です。 そして、磯山先生のドッキリの生贄にされた私たちは、半ば強引に編集長から、熊本県の温泉取材と、それに便乗した温泉旅行を勝ち取ったの。 こうして私たちは今、熊本県阿蘇市の温泉宿に宿泊しており、とある殺人事件に巻き込まれているんです。 温泉宿のロビーには、宿のご主人の福岡さんによって泊り客が集められている。 福岡さんに宿泊客を全員集めるように依頼したのは、偶然この宿に泊まっていた警視庁捜査一課の刑事、橘薫子(たちばな かおるこ)さんだ。 実際には、甥っ子の橘左近(たちばな さこん)さんが事件の謎が解けたからということらしいけど、この橘左近さんはとても奇妙な人だ。 常に文楽人形を持ち歩いていて、その人形と会話しながら普段も過ごしている。 私からすると少し不気味である。 「左近、そろそろ教えてくれよ。 おまえ、いったい何を掴んでいるんでぇい!」 しびれを切らしたかのようにそう言ったのは、左近さんが操る右近くんだった。 なんかややこしいなぁ。 結局は、左近さんが話しているのよね? 「そうだね右近、ちょうどいま考えがまとまったところだ。 薫子さん、皆さんを集めてくれてありがとう。 さて・・・。」 さっきまで目を閉じていた左近さんが、そっと目を開くと、集まった私達の方に顔を向けた。 「床に落ちてた白い粉を右近が舐めたときにわかったんです。 あれは幻覚剤でした。」 唐突に左近さんは幻覚剤という一般人には馴染のない単語を発した。 しかし、これに対して「ありえない」と答えたのは、宿のご主人の依頼で来ていた金田一ハジメさんだった。 「俺を甘く見てんじゃねぇか? 名探偵のボーヤ。 君がどういった人物かは薫子さんから聞いたが、こっちも探偵・金田一耕助の孫っていう自負がある。 その俺を差し置いて勇気があるねぇ。」 「ハジメさん、僕は常々あなたの噂を聞いていました。 剣持さんと薫子姉さんは同じ警視庁捜査一課の刑事ですから。 ハジメさんのことは密かに尊敬していますし、決してハジメさんたちを差し置いて何かするつもりはありません。 そんな敵意をどうか向けないでください。」 「別に敵意を向けてるわけじゃない。 ただ、なんで人形のそいつが白い粉を舐めて、それが幻覚剤だとわかるんだと疑問を投げかけてるだけだ。 そんなのありえないだろ。」 これを「天才2人による頭脳戦」と言っていいのだろうか? たぶん、この場にいる全員が、「いやそれ人形!」って心で突っ込んだと思うよ。 改めて私は、今の状況を頭の中でおさらいした。 まず、左近さん・薫子さんが到着して間もなく、宿の外で男性の焼死体が発見された。 すぐに110番通報がなされ、駐在所からお巡りさんが一人この宿に来た。 その後、犯人がわかったと薫子さんが皆をロビーに集つめた。 ロビーにいるのは、札幌のタウン誌「powaro」の企画で取材に来た私とテイ子さんとメイたんの3人。 私たちは、左近さんと薫子さんのすぐ隣に立っている。 次に、左近さんたちと対面する形で立っているのは、この宿のご主人の福岡さんと従業員の佐賀さん、長崎さんの3人。 駆けつけたお巡りさんは熊本さんで、宿のご主人たちのすぐ横に立ってる。 そして、私たちと向かい合って立っているのが、福岡さんからの依頼で呼ばれた金田一ハジメさんとその助手の七瀬美雪さん。 さらに薫子さん同様、警視庁の刑事である剣持勇さんがハジメさんたちに同行している。 この温泉宿にいるのはこれで全員だ。 もともと、宿泊客が消えるという怪奇現象が起きていたことから、お客さんの制限をしていたそうで、純粋な観光で来ているのは左近さんと薫子さんだけだった。 年末年始に薫子さんは事件の捜査をしていて、遅い冬休みだそう。宿の方は3月になり客足も減っていたタイミングでハジメさんや剣持さんに来てもらったとか。 いやいや、偶然がさく裂し過ぎでしょ。 STV(札幌テレビ放送)でやってる「名探偵コナン」って、私たちのニックネームと瓜二つなんだよね。 これが事件を引き寄せてない? メイたんは、「私たちの名前がパクられた!」って、テンション上がってたっけ? まぁたしかに、「メイタン テイコ ナン」は、テンション上がるのわかるけど、私の「powaro」入職が3年前なんだから、それはありえねぇーよ、メイたん。 「ありえない」といえば、右近くんが舐めたという白い粉だ。 ハジメさんと左近さんはこのまま敵対するのかしら? 「ハジメさん、右近には不可思議な力が宿っているんです。 推理の精度に関わるデリケートでセンシティブな理由ゆえ、詳しい話は割愛しますが、人智を超えた出来事って実際にあると思いませんか?」 「確かにそれはある。 俺も学園で怪奇現象によく遭遇する。 この宿の主人が俺に依頼したのも、そんな噂を聞いたからだろう。 ただ、最初は断ろうとした。 ここ阿蘇市は、火山によって作られた窪地にあるカルデラの街だ。 周辺は崖に囲まれていて孤立しやすいと言える。 俺や七瀬は、外と連絡ができない閉ざされた場所で事件に巻き込まれる事が多かったからね。 だけど、話を聞いた剣持警部の立っての希望で、俺たちは今ここにいる。 いいだろう、左近くん。 じっちゃんの名にかけて、右近についてはこれ以上は何も言わないよ。」 どうやら2人の天才は手を組むことにしたようね。 「それで左近君、君は白い粉が幻覚剤というが、それと外の焼死体はどう関係しているというんだい?」 ハジメさんが、改めて左近さんの最初の発言に話を戻した。 「その前に、剣持警部に聞きたい事があります。 剣持警部は今、江東区で起きているカルト教団の住民トラブルや失踪および死亡事件を追っていると思います。 そんなあなたが、どうして熊本県にいるのでしょうか? おそらく教団の土地をめぐる不正事件と関係があるのではないですか?」 ハジメさんの横で聞いていた剣持さんが驚いた表情をしている。 どうしてそれがわかったんだと言ったような顔だ。 「カルト教団『ニルバーナ元気主義』。 まさか左近くんが知っていたとはね。剣持さん、俺が話すよ。」 刑事の立場から開示できることとできないことがあるのだろう、口を開けずにいた剣持さんに変わってハジメさんが説明を始めた。 「朝まで生テレビに教祖が出演したり、いろんなメディアで引っ張りだこの新興宗教、それがニルバーナだ。 ツッコミどころ満載の教祖の言動からテレビ出演は多いものの、近隣住民とのトラブルがやたらと多く、関係者が亡くなったり失踪したりしている噂もある。 というか、事実だ。 剣持さんは殺人の線で教団の捜査をしている。 そして、左近君の言う通り、ニルバーナは熊本県の土地を不正入手したことで熊本県警の強制捜査が入ったんだ。 ところが、事前に警察の動きを掴んだ教団は、重要な証拠を握る男性幹部たちを逃がし今も逃亡中だ。 俺達はそいつ等がこの宿に泊まったと推理している。」 「なるほど、するってぇと、薫子がこの宿の予約をしようとした時に、客払いをしていると宿の主人に言われたのは、凶悪な教団の幹部が潜んでいるかもしれないからだったのか。」 「そうだね右近。 ですが、薫子姉さんも警視庁捜査一課の警部補です。 何かの役に立てると僕らもここに来たんです。」 「薫子の手柄は、ほとんどが俺っちと左近の推理で解決した事件ばかりだけどな!」 右近くんが得意げにそう云うと、薫子さんはややヒステリックに右近くんに怒った。 そういえば、剣持さんも薫子さんも東京の刑事だった。 警視庁っていうのが正直よくわからないけど、北海道でいう県警なのだろう。 なぜ都警と言わない?。 剣持さんは、いかにも叩き上げの刑事といった感じで、以前お会いした警部補の古畑さんよりも役職は上で警部だという。 宿泊客が消えたことで依頼を受けたそうだが、ニルバーナの逃げた幹部たちの関与・・・、彼らがここに来たのには、そんな裏の事情もあったのね。 薫子さんは、完全なオフで温泉旅行に来たってことだったけど、やはり刑事として何かできると、こちらも裏の目的があった。 ところが、左近さんと薫子さんが到着してから間もなく、焼死体が見つかった。 そこから左近さんが推理を働かせて、床に落ちていた白い粉から何かを掴んだ。 左近さんの話は、その白い粉の話に戻った。 「剣持さん、教団の住民トラブルは異臭騒ぎが発端だったと聞きます。 それは教団が幻覚剤を密かに開発していたとは考えられませんか? ニルバーナの出版物によれば、教祖は自身を超能力の始祖と語り、信者たちも彼の超能力によって幻視体験をしています。 この神秘的な体験は、幻覚剤の投与で起きていた可能性はないですか?」 その問に答えたのは、ハジメさんだった。 「左近くん、どこまで君は情報を掴んでいる? それともすべては推理なのか? 先般の強制捜査で、たしかに教団施設から幻覚剤と思わしき白い粉が見つかっている。 教団は海外から仕入れた風邪薬と言っているがね。 どちらにせよ、この宿にあった幻覚剤の成分が教団のモノと一致すれば、間違いなくこの宿に教団の関係者が出入りしていたことになる!」 ハジメさんがそう云うと剣持さんは「ハッ!」とした顔で、駐在所から来た熊本さんに「この粉を鑑識に回してくれ」と言った。 それを聞いたハジメさんは、強い語気で剣持さんを制止する。 「剣持さん! それはやめた方がいい。 少なくとも熊本さんにそれを渡しちゃダメだ。 だって、宿泊した幹部たちが消えたように見せかけ、焼死体で捜査をかく乱しようとしたのは、ほかでもない熊本さんなんだからね!」 教祖が薬物を信者に使用していたショッキングな話から、それをさらに上回る衝撃の事実をハジメさんは口にした。 なんと、お巡りさんである熊本さんが、焼死体や教団幹部の逃走に関与しているというのだ。 「え? 僕がですか? う~ん、それってもちろん冗談だよね?」 そう言ったのは熊本さんだ。 まったく動揺している様子もなく冷静そのものだ。 左近さんも、控えめに続ける。 「たしかに、熊本さんを犯人とする証拠はありません。 だけど一つだけ気になる事がありました。」 「あぁ、俺もそこに引っかかってたぜ。 俺達が通報してからアンタはここに来たが、ずいぶん早かったよな?」 「言われてみれば、不自然なくらい来るの早かったな! 左近も気になるとこってそこか!」 「ええ右近。 ハジメさんの仰る通り熊本さんの到着は、まるで焼死体を放置して、その場で待機していたかのようにすら思えるほど早かったです。」 「ここは、阿蘇市の中でも特に孤立しやすい立地にある。 ミステリー好きなら知っているだろうが、こういう場所は、クローズド・サークルの舞台に使われる。 つまり、孤立した状況になりやすいんだよ。 なのにアンタは焼死体が発見され、通報がされてから数分でここに来た。」 そう2人の天才から指摘されても、まったく余裕の表情を崩さない熊本さんは、本当にわけがわからないといった口調で答えた。 「あ、そっかそっか。 早く着いたからってことを、君たちは言いたいのか。 たしかに、早かったよね。 ちょうど自転車でパトロールしてたからね。 あと、あれかな? お客さん払いしてたから、交通量も少なかったよ。 なんかごめんね、変な勘違いさせちゃって。 でも、本当に僕は関係ないから、 たぶん逮捕されても裁判で無関係が証明されちゃうし、気が済むならぜんぜん今、逮捕してもいいよ。 大人が出来る事なんて、若い子たちの過ちを許すことだけだと思うしね。 2人ともなんかごめんね。 ここまで無関係な僕を指さしてくれたのに。 気の毒すぎて本当ごめんね。」 えっと・・・。 流石に悪いけど、ここまで一切の動揺を見せないって、熊本さんは本当に無関係だと思う。 これまで私は、プロの事件解決を2回見てきた。 毛利さんや古畑さんに比べると、2人の推理はまだ若いなって思う。 それでもハジメさんと左近さんは食い下がる。 「熊本さん、あなたは自転車で来たと言いましたよね?」 「だな左近。 なのに交通量が少なかったという理由を挙げた。 交通量って言葉は車が混んでるかどうかの時にたいてい人は使う言葉だ。」 「僕なら自転車の時は「人が少なかった」って言うでしょう。」 「ああ、左近。 熊本さんはどうやら動揺を隠しているようで内心はきっと焦っているようだぜ。」 言われてみれば確かに「交通量」と言った時に違和感があった。 だけど、それでも決め手にしては薄いと思う。 まだまだ熊本さんは余裕の表情だ。 「自転車も車両に分類されるんだよ。 まぁ、でも、たしかに人が少なかったって言った方が良かったね。 熊本県警は、強制捜査で阿蘇市のX村に集まっているけど、幹部のヤヤカワさんやムムイさんがその場から逃げるなら、車で一気に県外に出ると思うよ。 わざわざ市内の宿に泊まるとは思えない。 白い粉のLSDも、右近君が舐めたって時点で荒唐無稽だ。 裏庭の信者の遺体は捜査かく乱とも言ってたね? いくら教団内で信者死亡事故があったとはいえ、捜査かく乱のためにここまで運ばないよ。 焼却用電子レンジの特許申請を教祖はしているから、焼死体とこじつけたくなったのかな? 熊本県警に信者がいたから、事前に教団は警察の動きを察知して、女性幹部を囮に、ロシアから自動小銃を仕入れているヤヤカワさんや、すべての犯罪活動に関わっているNo.2のムムイさんを事前に車で逃走させ、途中で女装した上で電車で東北に逃げる計画だなんて、そんな話はアニメかマンガか、浄瑠璃か能だよ。 もしくは『ねじりはちまき角刈り奮闘記かな。 まぁ、それくらいの想像力があるのは高校生らしいって気もするけどね。」 「おい左近、コイツ何を言ってるんだ? 途中からまったく話に出ていなかったことまで話していたぞ!?」 「ええ右近、正直、僕も驚いてます。 LSDと言った時はしっぽを出したと思いましたが、僕でも知らない情報が語られて困惑してます。」 「なぁ、アンタ、その話をどこで聞いた? いや、まずは話の整理だ。 左近が幻覚剤と言った粉をアンタは『 LSD 』だと知っていた。 焼死体が見つかったのが裏庭であることも、強制捜査の教団施設が、X村にあることも、逃走中の幹部の名前も、ピンポイントに言い当てている。 だが、それは警察だからとも言える。 でもな、警察ですら知らないことをアンタは話したんだよ。 教団が武装化してた? ロシアから銃を仕入れている? 信者の死亡事故? そんなこと教団内部の人間しか知り得ない情報だ! 熊本県警に信者がいたって、それはおそらくアンタ自身ことだ!」 熊本さんの顔がみるみる青ざめていく。 この人、内心は動揺しまくっていたんだ。 それで、予想のはるか斜め上を突き抜ける口の滑らせ方をしてしまった。 犯人しか知りえない情報のデパートだ。 そんな彼の表情はやがて鬼のような形相となっていた。 青鬼・・・?! いや、違う!! あれは人間の悪意を形にした悪魔の笑みだっ!! 「教団を舐めるなよ、ありんこ。 お前らなど教祖さまと比べれば虫けら同然。 教団を舐めるなよ、教祖様の底すらない悪意を!」 そのセリフと同時に、彼は自らの心臓を中指で貫いた。 その瞬間、施設を中心とした半径100mが吹き飛んだ。 ミニチュアローズ(産屋敷の薔薇) 教団が開発した非常に安価で作れる爆薬だ。 その爆炎はまるで薔薇のように咲き誇る。 大正時代に大富豪だった産屋敷邸が、何者かによって爆破された事件をもじり、「産屋敷の薔薇」と名づけられたこの爆薬は、無慈悲にも・・・・・・ 「ナン、ここのベタ塗りってこんな感じでどうかしら?」 Gペンで筆入れをしている私に、そう声をかけてきたのはテイ子さんだ。 カラフルなブラウン管パソコンの「iMac」を持っているテイ子さんに、私の同人マンガの制作を手伝ってもらっていた。 「テイ子さん、さすが飲み込み早い。バッチリです」 机に向かう私とテイ子さんの後ろから声が聞こえた。 「ナン、ザッカルもっとない?」 おやつのおかわりをしてきたのはメイたんだ。 同人マンガの手伝いをしてくれるわけでもないのに、私がテイ子さんの家に行くと知ったらついてきた。 この人は基本寂しがり屋だ。 まぁ、でも、旅行に出かければ事件に巻き込まれる体験を繰り返せば、そうもなるか。 熊本県阿蘇市から札幌に戻った私たちは、参考人として事情聴取を聞かれたり裁判への証言を求められたり、日常に戻るまで数ヶ月がかかった。 カルト教団ニルバーナは、国家転覆を狙ったテロ計画を進めていたが、左近さんとハジメさんの二人のおかげ、というか熊本被告のうっかり発言で阻止できた。 教団内の修行中の事故で数名の信者が亡くなったそうだが、それ以外に被害者でなかった。もしテロが実行されていたら数百人規模の犠牲者が出ただろうと剣持さんが言っていた。 今、こうして日常を楽しめているのもあの場で2人の天才によって事件が解決したからだ。 そして、日常に戻った私は久しぶりに同人マンガを描きたくなり、夏に東京で行われるコミケに向けて、テイ子さんの家でマンガを描いている。 内容はミステリー・ダーク・ファンタジー。 青い彼岸薔薇によって超能力を得た教祖が、推理によって追い詰められるストーリーだ。 血みどろの展開もあるけど、締めくくりの言葉はもう決まっている。 「推理で犯人を追いつめて、みすみす自殺させちまうような探偵は、 殺人者と変わらねぇよ」 名探偵コナンのオマージュだ。
【第3話|音声読上げ】メイたん テイ子 ナン -旅好きOL- トラベルトラブル【福島県/後編】
*‐‐‐*概要*‐‐‐* [短編コメディ小説] やたら殺人事件に遭遇する小学生が現存する一方 北海道札幌市にオフィスをかまえる地元旅行誌 『powaro』でOLをしている3人娘が行く先々で 殺人事件に遭遇して、偶然居合わせた探偵とかに 事件を解決してもらうストーリー。 >>このページは高速音声聞流しです<< *‐‐‐*‐‐‐*‐‐‐* ▼本編はコチラ https://note.com/shyr/n/ncb8fbb9f2af4?sub_rt=share_h ▼福島県/前編はコチラ https://note.com/shyr/n/n74d0f0405168?sub_rt=share_h *‐‐‐*‐‐‐*‐‐‐* 磯山さんは、遺体は外を歩いていたとイメージしている。 だけど私はこの談話室を歩いていたとイメージした。この違和感は、なんなのかしら? 今泉さんの話を聞いた磯山さんは続けて話す。 「君の話は全く理路整然としていない。構成力が皆無だよ。どういう状況で、何を見たのか掴みにくい内容だったが、要は菅笠(スゲガサ)を被った3人の地元民がこの民宿の外を歩いていた。 それがもし犯人だったとして、すでに外に出ているなら、とっくに逃げてるだろうよ。 なにせ、1階のテラス付きの3つの特別室のうち、103号室は角部屋だ。 より外からの出入りも容易いはずだ。 この談話室に残っている人たちが、犯人である可能性は低い。 なにより私は、温泉に入るため以外に、部屋から出ていない。 ここの民宿は、段差地に建てられており、2階が玄関口なのは古畑さんもわかっていると思うが、建物の構造上、2階の泊り客が1階に降りれば、談話室から必ず見える。 ドアを閉めても、窓ガラスから必ず見える。 そして、談話室を横切らない限り特別室には行けない。 メイさん、あなたたち3人は、ずっと談話室にいたと思うが、私を一度でも見かけたかね? 今泉さん、学生さんたち、そしてメイさんたちが談話室で、オーナー自慢のアップルパイを食べている時も、私はずっと部屋にいた。 アリバイがあるのだから、事件に関与している可能性が低いことは、プロならわかるでしょ、古畑さん。 私が帰ることで私が困るという主張は、今泉さんの話を聞いても、理解できないが、私は無関係なのは明白だ。 もう帰らせてもらうよ。 あぁ、あとは部屋番号か。 それは怯えて今泉さんが幻覚でも見ただけだろ。 それに見たところ、あの手の部屋番号はプレートを入れ替えやすいから、犯人が撹乱するためにやったとも考えられる。 そうすると今泉さんが恐怖で混乱している様を見る限り、犯人たちの作戦は成功してるな、うん。 犯人は、もうとっくに逃げているで間違いないだろう。 では、諸君これで。」 磯山さんは、まるでスピーチに呼ばれたゲストのように、止めどなく推理と見解、そして自分の主張を語ったあと、談話室から立ち去ろうとした。 ところがそれを不適な笑みを浮かべる古畑さんが止めた。 「磯山先生! あなた、談話室のドアを左手で開けようとしましたね? 右利きのあなたが、その配置のドアノブを握るのは左手では不自然です。 先生のその右手には、部屋番号の書かれたプレートでもあるんじゃないですか?」 古畑さんがそう言うと、怪訝な表情を浮かべた磯山さんは、数秒 黙ってこちらを見つめ、「ふっ」と鼻で笑ったあと、私たちに右手を見せてくれた。 その右手にはべっとりと血液がついているように見えたわ。 「さっきまで部屋で絵を描いていたんだ。 私の作品は、血みどろの絵が多くてね。 変な誤解を避けるため隠していたが、描いているところは私の部屋を訪ねてきた学生さんたちも見ている。 お望みなら今から私の部屋に来ればいい。 ふふふ、とんだ妄想だったね古畑さん。」 「んふー、ふっふー。 ずいぶんと学生さんたちは、先生の部屋に出入りしていたようですね。 そこのOLさんたちは、サインをもらうため先生の部屋に行ったが、『断られてしまった』と言ってました。 この差はなんなのでしょうか? ズバリ、磯山先生! 今回の事件の首謀者はあなたですね?」 古畑さんは笑みを浮かべたまま、獲物を捉えた獅子のように磯山さんを見据えている。 今帰ったら困るのは磯山さんだと、さっき古畑さんは言ったけど、今度は「首謀者」と言った。 つまりそれは磯山さんがオーナー殺害に関与しており、この事件は複数の人によるグループの犯行であることを示唆しているってことよね。 「首謀者」って言葉の意味は、悪さをするグループの中心人物を指す言葉。 「犯人」ではなく「首謀者」と言った古畑さんはどんな推理をして、どこで磯山さんの嘘を見破ったのか? 私たちは古畑さんの言葉に集中する。 「あなたが先ほど、スピーチのように話した内容は、犯人しか知りえない情報のデパートでしたよ。 そのことにお気づきですか? 磯山先生。」 「な、なんだそれは。 なんだというんだ。 言ってみろ」 「んふー、ふっふっふー。 それじゃまず、磯山先生 あなたは東京出身と聞いてます。 雪国出身の人ならまだしも、なぜあなたは、(スゲガサ)なんて笠地蔵に出てくる笠の名前をご存知なのですか?」 「むむ、そ、それは、私は漫画家だ。 取材に基づいて作品をかいているし、雪国の田舎を舞台にした漫画をかく予定もあった。」 「では磯山先生、なぜあなたは、今泉君はオーナーさんの死体は『1体ではなかった』と言ったのに、あなたはそれが3体だったと断言したのですか?」 そうだ、確かに今泉さんは「1体ではなかった」と表現していた。 それに対して磯山さんは「3体」と言っていた。 私もメイたんに、犯人が死体を運んだ可能性について話す時に、「複数の遺体」って言い方をしていたわ。 それは、あの今泉さんの言い方では、正確な数がわからないからよ。 でも違う。 さっき私が感じた違和感はそこじゃない。菅笠(スゲガサ)を被った人を見たと言われれば当然、雪降る外を歩いていたとイメージするけど、今泉さんの話なら談話室をイメージするはずなのよ。 古畑さんは、ちょうどその点についての見解を話はじめたわ。 「今泉くんが103号室に向かう遺体を見たと聞き、磯山先生は外からテラス方向に向かう地元民や逃亡する犯人の可能性を示唆しました。 だけど、今泉くんが窓から見たというのは、そこの談話室のドアの窓ガラス越しに見たという意味だったんです! 金田一さんたちが談話室でアップルパイを食べている時に、ドア窓を今泉くんが『覗き窓』と表現したことで笑われたそうです。 この時期はドアを閉めないと寒いですが、談話室のドアはコミュニケーションを大事にするオーナーさんらしく、様子を確認できる透明のガラス窓がついてます。 デザインもオシャレで、あのドアが談話室をエレガントに演出していると思いませんか? そんなドア窓を、いかがわしいお店に行ってそうな今泉くんが「覗き窓」と表現して笑いが起き、その場にいた人は覗き窓といえば、談話室のドア窓と共通の認識を持っていました。 だから、今泉くんが覗き窓から遺体が歩いているのを見たと言ったとき、遺体は談話室を歩いていたと、その場にいた人たちはわかったはずです。 ですが磯山先生は、今泉くんが2階の廊下の窓から外を見たと勘違いしたんじゃないですか? ただ、このこと自体は磯山先生のアリバイを証明するものです。 本当に部屋にこもっていたからこそこの発言なのですから。 私だって部屋にこもっていたので磯山先生と同じように考えました。 しかし、だからこそ磯山先生の話には大きな矛盾があるのです! ずっと部屋に居た磯山先生は、1階の特別室のテラスの様子や部屋番号のプレートのことを知っているのはおかしいのです! もとより、いま挨拶を交わしたばかりの金田一さんたちの下の名前をあなたは知っていた。 こちらの3人のお嬢さん、さきほど名字しか名乗っていません。 だけど私もお二人が「メイ」って名前だと知っています。 今泉くんから聞きました。 3人の内2人が名前にメイが付くため、メイたんと呼ばれているカワイイ子ちゃんがいると、今泉くんが浮かれてましたよ。 人の名前は意識していないと忘れるものです。 電話でももう一度お名前よろしいですかと聞かれることが多いですが、意外と下の名前は記憶に残りやすいものです。 しかも、「メイたん」のエピソードは特徴的で、名字が出てこなかった磯山先生は「メイさん」とお呼びになったんじゃありませんか? ちなみに、私は談話室でアップルパイをみんなで食べていたことは知りませんでした。 今泉くんは食い気より色気だったようです。 だけど、磯山先生はアップルパイのことも知っていました。 学生さんたちがあなたのファンだから部屋に入れた、にしては、あまりにもあなたは色々と部屋の外の様子を知っている。 あなたの先程の発言の数々は、あなたにアリバイがあるからこそ “ 大きな矛盾 ” となっているのです。 そしてその矛盾は、あなたが学生さんたちを動かし、裏で糸を引いていると考えれば辻褄があうのです!」 私が感じた違和感の正体はこれだ。 談話室に出入りしていた宿泊客とそうじゃない人とで、認識に大きなズレがあったんだわ。 私がこの民宿を穴場と思ったのは、こういう所では珍しくスイートルームがあるところだった。 段差地に建てられた温泉宿のこの民宿は、磯山さんの言ったとおり、2階が表玄関になっており、1階の部屋は川辺に面したテラス付きの特別室で、松竹梅のランク別になっている。 これがこの民宿の目玉であり、ホテルでいうところのスイートルームってことよね。 2階で宿泊している我々には、1階の様子を知るすべは本来はないわ。 ただ、談話室に足を運べば話は別。 私たちは取材も兼ねているから特別室もオーナーさんから見せてもらっている。 ドアのプレートも実際に目にしたけど、談話室のドアの窓ガラス越しに覗いただけじゃ、その先の間取りや動線を知ることはできないわ。 なのに磯山さんは、部屋番号のプレートのことまでスラスラと話していた。ずっと部屋にこもっていたという磯山さんのアリバイは、この民宿の様子を知り尽くしているという事実によって、首謀者であるという容疑を強める結果になったんだわ。 てか、もう犯人は磯山先生で間違いないでしょ! でも、一つだけ疑問が残る。 古畑さんはあくまで磯山先生は「首謀者だ」と言っていたわ。 つまりほかにも仲間がいる。 古畑さんは口元は緩やかな微笑みに見える一方、鋭い眼光で磯山さんを睨んでいる。 「磯山先生! あなたほどの人が特別室ではなく、2階の部屋を予約している時点で私は最初からあなたを疑っていました。 温泉が気分転換の目的ではなく、ほかの目的があるのだろうと。 大学生たちの出入りに比べ、サインを求めるOLさんたちとは交流を避けていることから、その大学生たちは、本当はあなたのアシスタントなのではないですか? 彼らから進捗を聞き次の指示を出していたのではないですか? 部屋番号はプレートで取り外しができるというのは、オーナーさんから聞いたか、何度もこの宿の特別室に泊まってるから知っているんじゃないんですか? 磯山先生、いかがですか? まだ、今すぐ帰えりたいですか?」 なんとも情報量が多い。 まるでドッキリカメラにひっかかったタレントのように私は目が点になっている。 メイが古畑さん、磯山さんと交互に見つめ、最終的に天井に顔を向ける。 その目はワケワカメといった焦点のあっていない目をしていた。 正直、私もワケワカメで、メイたんと同じ気持ちよ。 ナンはナンで、「アチャー」と言いたげな表情で、左手を自分のおでこに押し当て、ため息交じりの言葉を漏らす。 「古畑さん、犯人を見つけるなんて一言もいってない。勝手に私がそう思い込んでいただけだわ。」 古畑さんと磯山先生はお互いニヤニヤしている。 「次郎君、オーナーさんを呼んでくれる?」 そう言ったのは磯山さんだ。 って、笠田次郎さんと磯山先生って、そんな仲だったのね。 それじゃやっぱり彼はアシスタントだったのね。 「あははは、了解でぇーす」 笠田さんも思わず失笑して、談話室にある電話からどこかに電話している。 他の女の子たちも落ち着いたものだ。 逆にメイたんは天井に顔を向けたまま、すっかり目をつむって考え事か、もしくは現実逃避をしている。 反応があんまりない。 私とナンは、もうすべてを理解した。 今回の殺人事件は、でっち上げである。 もっと言えば質の悪いイタズラよ。 首謀者は磯山先生で、マンガ研究会は真っ赤なウソ。 古畑さんは、本当にたまたまここの民宿に来ただけなんでしょうが、こんなすごい推理ができちゃう刑事さんが偶然来るとか、まるでフジテレビのドラマよ。 そもそも、編集長が今回の民宿を指定してきた。 最初にメイが経費について交渉したときも、「ダメ」って言ってたのに、「この民宿なら経費で落としていい」って、話が変わったのよ。 取材はたいてい1人か2人、3人で旅行を兼ねるなら、最低1人は自費ってのがうちのルール。 これって、私たちがドッキリの生贄にされたってことよね? 今は北海道の旅行雑誌の編集長に落ち着いているけど、この業界は長い彼の事だから、磯山先生と知り合いだったという事は考えられる。 これは、磯山先生の完全プライベートのドッキリだったのだ。 「いやはや申し訳ございませんでした。 漫画界の大御所と言われている私でも、奇抜なアイディアを出し続けるのはなかなかどうして難しいものです。 若い漫画家の新しい発想力には及ばないと感じることも最近は増えました。 「んふー、ふふー。それであなたは、幽霊宿のドッキリを計画し、遺体が消えたり部屋が変わったりすることで驚く人を見てみたかったということですね? 磯山さん、あなた噂通りの性格の悪さだ。」 「あぁ、それは『新弟子の巨星』の実写映画化で、敢えて無茶振りで脚本を変更し、意図的に映画を大コケさせた時の話ですかな? 確かに、古畑さんの仰るとおり私は性格が悪いが、人々が求めているのは悪い人間なんですよ。 Mr.ビーンのローワン・アトキンソンも同じことを言っています。 だけど、まさか刑事さんが泊まりに来るとは思いませんでした。 オーナーから電話連絡が来た時は戸惑いましたよ。 でも、毒を食らわば皿までと、オーナーに刑事さんの宿泊を許可しました。」 「んふー、ふっふっふ~。 磯山先生、あなたのしたことはそもそも倫理的にも間違ってます。 あなたは自身について経済的損失という表現を使われた。 それはあなたの傲慢さです。 秩序は皆が少しずつ負を請け負うことで保たれます。 傲慢さはその秩序を破壊しうるものです。私ではなく、まずはそちらのお嬢さん方に謝るのが筋です。 あなたはまだ、彼女らに挨拶すらしていない。」 古畑さんは、私たちに謝るよう磯山先生に右手で促すと、「確かに」と言った表情で、磯山先生は私たちの方を向いて深々と謝罪をし、来年の2月から本誌にて「北海グルメ美味しんdo!」の掲載を約束してくれたのでした。 「良いじゃないか! やはり伊貞くんだな。 うまくまとめて着地点もなかなかいいよ。 それじゃこれを来週号に間に合うように手配しておいてね。」 「はぁ・・・」 「ん? どうしたの、気のない返事して。」 「いや、編集長にも正直、謝ってほしいんですよ。」 「あぁ・・・、それね。 うん、ごめんごめん、本当にごめん。 磯山先生に昔のよしみで頼まれちゃって。 メイたんなら磯山先生、気にいるなって思って依頼を受けちゃったんだ。」 「おかしいと思ったんですよ。 馴染の広告主といえども、急にカンパとか宿泊費出すとか。 磯山先生の漫画掲載あっての事、つまり私たちって生け贄だったんですよね。 ワタクシ正直「powaro」に不信感しかありませんわ。」 「で、ですよねぇ~。」 「編集長! 3本勝負の最後は、九州に行こうと思いますけど・・・、よろしいですよね? 宿泊費も3人分経費でお願いしますよ!」 「えっ、いやそれはちょっと(汗) 北海道から九州はさすがに・・・!」 これくらいの償いはあって当然よと言わんばかりに、私は編集長をひと睨みして席に戻った。 その直後に、メイたんからクシャクシャの手紙が渡ってきた。 あなた、ここは中学校じゃないのよ。 そう思いながらも手紙を広げ、書いてある内容を読むと、そこにはこう書かれていた。 「NEXT570 906010」 はいはい、熊本に行きたいのね。 地獄耳のメイたん。